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ディストピア2030〜信じるか信じないかはあなた次第〜  作者: 地野千塩


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幸福論

 W美はスーパーのレジ打ちの仕事をずっとやっていた。数年前に健康を害し、フルタイムも無理になった。実家暮らしでようやく生きてる。いわゆる子供部屋おばさん。


 といっても、何の不満もない。年収も低いが、ぐっすり眠れて自由な時間もある。健康も問題なし。再発もなかった。


 それに、今日は職場の事務所で万引き犯をみてしまった。Gメンに取り押さえられ、おめおめと泣いていた。


 犯人は自称・女医だった。確かにルックスだけは知的で賢そうな六十過ぎに女。泣いている姿は情けなかった。他にも元代議士や大手企業役員も万引きで捕まっているのを見た。おそらく定年退職後、ステータスを示すものが何も無くなったストレスで万引きなんてやっているのだろう。元ハイスペの老人達はクレーマーも多く、確かに面倒くさかった。


 中には貧困の万引き犯もいるが、いかのも汚い姿のホームレスは案外礼儀正しい。割引きシールが貼られている瞬間が一番目がキラキラしている。


 ここで働き始めてから、幸福って何だろうと考えるようになった。


 結局、死後は金も名誉も何も持っていけない。だとしたら、健康に生きている今は決して不幸ではない。例え、低年収で子供部屋で暮らしていたとしても。外側の条件で揺らぐようでは、本当の幸福ではないのかもしれない。


「お母さん、産んでくれてありがと」

「は!? あなた、何言ってるの!?」


 今夜はついつい母にお礼まで言ってしまったが、そんな気分だった。


 夕食は職場で買って来たコロッケやポテトサラダ。味噌汁も芋が入っていたので、失敗したかもと思ったが、こんな夕食も悪くない。生きているのなら、きっとW美も幸福なのだろう。


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