幸福強迫性障害
精神疾患の定義はユルユルでいい加減という陰謀論も囁かれていたが、最近になって新しい病名がみつかった。
その名も幸福強迫性障害。キラキラしたSNSやセレブの生活を見過ぎて、「自分も幸せにならないといけない」と思い込む精神疾患だった。地位、収入、美容など目に見える俗っぽい幸福に依存しやすい特徴がある。
T子もその一人だった。SNSを見ては、俗っぽい幸福を手に入れなければならないと思い込んでいた。それがあれば全部幸せになれる。病気や貧困などはもっての他。若いうちに婚活して医者と結婚するのが一番だと決めつけていた。
そんなT子の思惑は成功し、大学時代に婚活アプリで知り合った医者と結婚。相手は不細工だったが、性格は良かった。収入や地位も申し分がない。周囲からは祝福されて結婚した。そう、自分は幸せ。SNSにいるセレブやインフレエンサーのように幸せ。そう思っていた。そう思い込むしかなかった。
相手の男は性格が良い故に仕事を押し付けられ、過労死寸前だった。鬱症状も出て何度も自殺未遂。夫婦仲もだんだんと冷え切った。
義母からはその責任を全部押し付けら、さっさと子供を産めという。義母も医者だった。医師免許は幸福へのパスポートだと信じて疑わないような人間だった。
毎日全く面白くない。ついにT子はアプリを使って不倫も始めてしまったがSNSでは相変わらず幸福で楽しい私生活を見せつけていた。
幸せにならなくちゃ。幸せにならなくちゃ、ダメだ。そう自分に言い聞かせて、張り付いたような笑顔をSNSにアップする。
今日もT子は幸福そうな誰かを演じていた。




