100年たったらみんな死んでる
ママ友達とのお茶が苦痛で仕方ない。
「うちの旦那は月収300万で〜」
ママ友の一人は、夫の給与明細を見せながらマウントを取ってきた。K美は思わず、顔が強張っていた。
「でも、私はそんな欲深い人じゃないし。お金が余って余って困ってるのよねぇ。昨日も子供食堂に100円寄付しちゃった☆」
ママ友のマウント合戦は続き、若者に間違えられたとか、部下の年下イケメンにモテたとか、子供が子役のオーディションに合格したとか、延々と続く。聞いているだけで、欲望の渦に飲み込まれそうだった。中には熱心なカルト信者のママ友もいて、高額な献金をしたから宝くじに当たったという斜め上のマウンティンもされた。
ここは猿山か。脳が原始人しかいないのか。K美は高学歴だったが、周囲の友達でそんな事を誇っている人は誰もいなかった。
結婚して田舎に越してきたのは失敗だったか。東京に帰りたくなったが、色々と事情があり、それも無理そう。ここのカフェのケーキはボリュームもあり、安くて美味しいが、別に何の救いにならない。
「でも、あなたたち。100年後は、みーんな墓の下よ。人生のゴールは死に向かって進んでいるわけだけど、そんな過程を誇って何になるわけ?」
ママ友の一人、F子は空気が全く読めないタイプだった。マウント合戦はF子のこの発言により、最悪な空気となった。
「どうせみんな死ぬよ。こんなの誇って楽しいか? つまらなくない? 私、とっても退屈なんだけど」
F子がママ友の間で無視され、ハブられるようになった事は言うまでもない。
それでもK美は、こんなF子は嫌いになれなかった。むしろ、この全く空気が読めない所が素晴らしくも見える。K美には無い性質だった。
「F子さん、今度わたしと二人でお茶しない?」
「えー、いいけど?」
「いいじゃない。どうせ100年後にはみんな死んでるんだから、美味しいケーキ食べて楽しむのも」
「そっか。それはそうね」
もう東京を恋しいとも思っていなかった。マウントママ友の事もどうでも良い。
どうせ100年後は、墓の下。だったら、今の「F子と親しくなりたい」という気持ちを大切にしたい。
「まあ、100年後はこの世界自体ないかも知れない」
「どういう事!? F子さん、その話詳しく教えて!」
二人の楽しげな声がカフェに響いていた。




