異世界信用創造〜異世界で金貸しと利子でチート生活送ります〜
D作は実に口の上手い男だった。実際、結婚詐欺師として女達から巻き上げた金で生活していた。
「金庫ごと盗んできちゃった!」
今、カモにしている女は、貯金がつき、家の金庫ごと持ってきたという。
「はあ? 金庫?」
「うん。暗証番号は……」
ご丁寧に暗証番号まで教えてくれた。小さめな金庫だったが、ご苦労な事。
「たぶん、五百万ぐらい入ってる」
「ありがとう。愛してるよ。君は可愛いね」
D作は歯が浮くようなセリフを吐くが、もちろん本心では無い。頭の中は五百万の事しかない。嬉しすぎる。
女が帰ったら、すぐに金庫を開けた。
「わ、五百万どころか一千万円ある!」
降ってわいた幸運に、金庫を抱きしめたいた。このまま心中しても良いと思っているぐらいだったが、突然周囲は光で満たされ、気を失った。
気づくと、どこかの麦畑にいた。雰囲気的に日本ではない? 空の色も妙に濃い。
農家風の人物も英国人のような容姿だが、服装は縄文時代ぽかった。もしかしてこれは、異世界転移したっぽい?
D作の予想は当たった。身振り手振りで農民に事情を伝えてると、この村には異界から時々人がくるらしい。
困った。言葉も通じない。なぜか金庫と一緒に異世界転移してしまったが、ここでは日本円は紙切れではないか。
ただ、D作はタダでは起きない性格だ。上手く農民に取り入り、農家で暮らせる事になった。最低限の語学も習得し、この村の文化の知識も頭の中に入れておく。
ここは剣と魔法の異世界。この村はチャイルドロスという。ただ、この村は女神の加護が無く、魔法の恩恵が受けられず、農業で細々と生活しているという。結界も張られていて、村人は外の世界にも行けないらしい。故に磁場が不安定な部分もあり、異世界転移が出来るという事だった。村人は赤ちゃんから年寄りまで百名いるが、農業で生活している者がほとんど。土地はみんなのもので、特に地主のような存在もいない。その上、お金もなく、物物交換で暮らしていた。
貧しい田舎の村に異世界転移してしまった事を後悔した。村娘を引っ掛けて貢がせようかとも思ったが、大した利益にならないだろう。芋臭い村娘も好きになれない。縄文ファッションはどうにかして欲しい。
金があればなぁ。この日本円に価値をつけられないか?
そこでD作はあの金庫の中にある一千万円を活用する事にした。一人十万円ずつ貸し付け、利息で生活することを思いついたのだ。一応子供の分は親に貸し付けるルールは作った。
最初は日本円という未知な紙切れに不安がっていた村人だが、D作の口のうまさに騙された。
それに金は便利だった。物物交換で生じていたトラブルが解消し、D作は崇められた。土地神にもされそうだったので、それは辞退したが。
田舎者の村人だったが、元手十万円で着々と儲けるものもいた。お金を預ける所が欲しいとうので、あの金庫で預かってやった。一方、金儲け下手のものは、D作に再び借金を申し込んできたが、金庫からわざわざ出すのも面倒。「貸し付け証明書」という紙切れを発行し、必要な時だけ現金を渡すシステムにした。この村に流通する金だけでは、どうしても借金を返せないものが出てくるシステムだが、土地や建物を担保に貸し付けていたので、問題はなかった。
最初は平和だった異世界村だったが、お金の存在によっておかしな方向に進んで行った。土地の奪い合いが発生し、二手分かれて争いも起きていた。
D作は双方に金を貸し付けた。負けそうなチームにわざと支援し、戦争を長引かせた。こうすれば武器が売れた。D作は日本で手製の銃などを趣味で作っていたので、その知識を活用して武器屋も営んでいた。争いが長引くほど懐が潤う。
こんな事をしていると、借金を返せない者が多くていたが、どうせ「貸し付け証明書」という紙切れの信用創造。金庫にある現金は思ったより減らない。「期限まで返さないと許さない!」と脅し、土地や建物という現物を手に入れられた。村の争いで一番得をしたのはD作だった。紙切れが現物に化けたのだ。まさに魔法のような信用創造。金貸しや利子がこんなに儲かるとは知らなかった。ユダヤ人は同胞に利子をつけて金貸しする事を禁止していたが、その理由がよくわかってしまう。
ちなみにお金は自由に増やせた。王都に行けば、3Dプリンターとそっくりな魔法道具があり、日本円札もD作の匙加減で自由に増やし、村の流通する金をコントロールできた。
こんな異世界はチート。金貸しと利子でチート。前世や日本人としての知識を活かしてチートしている異世界転移者や転生者もいるかも知れないが、実はこれが楽して一番儲かる。そんな事は決して口に出来ないが、今あるチート生活は絶対に手放したくない。
今日も村人を言いくるめ、金を貸し付け、何の価値も無い紙切れを発行する。
楽して儲けられるが、何も生み出さない虚業。虚しくなってくるが、どうしても甘い蜜からは逃げられなかった。




