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お客様は神様です?
お客様は神様。一体誰が言い始めた言葉なのか、T子は知らなかったが、死語になって欲しいものだと思っていた。
大学生のT子はパン屋でバイトしていたが、想像以上に変な客がいる。お金持ちそうな老人が延々とクレームを述べているので、社会の闇も感じてしまう。
バイトが終わると、「お客様は神様じゃないわ!」と愚痴を溢しながら、缶ビールを開ける。その姿は完全におじさん。とても大学生には見えない。
日本は色々な神様がいて、寛容だと思っていた。厄病神みたい客も神様の一種として崇めなきゃならないのか。これだったら、戦争ばっかりやってるが、一神教の方が理に叶ってないか。八百万の神にこんなマイナス点があるとは、知らなかった。八百万の神は寛容で良いと思っていた自分が恥ずかしくもなってきた。店員の立場からしたら、沢山の神が居て当たり前という文化は、本当に良いのかも分からなくなる。
「ああ、もうバ畜やだ! やめてやるんだから!」
T子は愚痴を吐きだすと、ビールを飲み干した。変な客達は神は神でも貧乏神や厄病神だと自覚しますように。そう願いながら、夜は更けていく。




