doctorの裏面
S美はオカルト都市伝説、陰謀論も大好物な厨二病だったが、とある洋書を読むのも好きだった。コージーミステリという女性向けのライトミステリジャンルで、主に英米で読者が多い。日本では日常の謎解きものと混合されがちだが、殺人事件共にご近所の人間関係や細かい日常が描かれ、女性達のアミューズメントパークのようなジャンルだ。楽しい恋愛模様も描かれている作品も多い。
日本では翻訳されている作品はごく一部。S美は洋書を買い、AIに翻訳して貰いながら読むのを趣味としてが、たまには自身で訳しながら読むのも趣きがある。辞書を引きながら、ちまちま読んでいた。一人称作品だったら高校英語の文法でもギリギリ読める。もっとも語彙に関しては英検一級レベルもゴロゴロとあるので、なかなか進まない。
そんな時、doctorを動詞として使っている文がある事に気づく。名詞では医者という意味だが。どうやら動詞系では、改竄や毒を盛るという意味があるようで、S美は調べながら顔が青くなっていた。
というのも、陰謀論界隈であの注射も毒入りとされている。あの注射だけでなく、さまざまな薬や治療の闇が噂され、医者は死神扱いされていた。もちろん緊急医療や怪我、火傷などちゃんと完治させる医者は立派だが。
動詞doctorの意味。そのままではないか。空恐ろしい。名詞なら医者という意味なのに、動詞だとこんなに変わるものか。ちなみに語源は、普通に医者という意味らしいが、誰かの手により「状態が変わる事」が転じて改竄という意味になったという説もある。
S美の祖父母もアンチ医者だった。もしかしたら、昔の人の潜在意識下での医者への嫌悪から、こんな言葉が生まれたのかもしれない。
言葉の語源は100%断言も出来ないから、こんな妄想をしても面白いものだ。S美はニヤニヤ笑いながら、洋書や辞書をめくっていた。




