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ディストピア2030〜信じるか信じないかはあなた次第〜  作者: 地野千塩


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蒼い空

 あのコロナ騒動からちょうど十年後、新しいパンデミックが始まっていた。今回は茶番ではない。原因不明に皮膚病と高熱が続き、死者も続出していた。暗黒病という厨二病ティストの名前がつけられていたが、ウィルスの正体も何もかも不明だった。


 陰謀論者達は、水道水に毒が混ぜられているんじゃないかと騒いでいたが、今回は本物のパンデミック。言論の自由もなくなり、逮捕者も出ていた。牢屋に入っても暗黒病で死ぬものは後をたたない。


 看護師のK子はこの状況に死にそうだ。なんとか感染は防いだいるが、同僚達は次々とやめ、仕事量はパンク寸前。


 そもそも医療従事者といっても人間。金目当てで資格をとるものも多い。家庭環境が悪いものや元ヤンキーも案外多い。もっともヤンキー気質は激務のこの仕事では、意外とマッチしていたものだが、聖職者じゃない。白衣の天使じゃない。


 激務で死にそうになっていたが、今日は昼休みが潰れた。政府がブルーインパルスを飛ばし、医療従事者へ感謝するらしい。病院の屋上に集まり、これをか見学しろという。マスコミの取材も来ているようで、断れない。


「くだらねぇ」


 K子は屋上に一応行ったが、心はやさぐれていた。こんな暇と金があるなら、現場の給料を上げろ、と思う。K子も元ヤンキーだったので、ついつい口が悪く呟いてしまうが。


 蒼い空にはブルーインパルス。綺麗な雲も見えるが、K子の心は真っ黒だ。このまま激務を続ければ死ぬかもしれないという不安もある。


 病院の目の前にある高校にも、「医療従事者に感謝!」という垂れ幕があったが、K子は何も嬉しくなかった。このキレイキレイな善意に塗れた世界から一刻も早く抜け出したかった。綺麗な空も偽物のようにしか見えなかった。

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