この村の天狗隠し
A美は幼い頃、祖母からこんな話を聞かされた。夜騒いだり、出歩くと天狗に攫われて食べられてしまうと。
A美の住む田舎の村では、そんな都市伝説があった。当時は子供を大人しくさせる為の詭弁だと思っていた。いくら子供でもそんな都市伝説を鵜呑みにはできない。A美はサンタクロースも信じない子供だった。科学で全部説明できると思っていた。
しかし、中学に上がった頃、同級生が失踪した。美人でファンクラブも出来るほどの娘だった。失踪する理由がなく、山で天狗が攫ったと祖母が騒いでいたが。
それから数年たち、再び村で子供が消えた。また可愛い子ばかり。さすがにM美もおかしいと思っていたところ、事件は急展開。この村には人身売買を目的とした外国人が来ていて、可愛い娘を攫っては海外に売り飛ばしていたらしい。娘らは利用された後は殺され、一人も戻ってこなかったが……。
「ほうら、私が言った通りじゃろ。都市伝説も現実だったのさ」
祖母は鼻高だが、後味の悪い事件で嬉しくない。ただ、老人が言う事は例え馬鹿馬鹿しくも耳を傾けても良い気がした。
今年の大晦日も年越し蕎麦を家族みんなで食べる。年越し蕎麦の効果も科学的には説明できないだろう。それでも家族みんなで美味しい蕎麦を食べながら、不思議な都市伝説も存在して良いとも思う。
どうせこの世の全ては科学で証明できない。それは神に対抗するようなものかもしれない。だったら、科学で説明がつかない事も存在しても悪くない。
「M美、この村に伝わる童歌について教えてやろう」
「ばあちゃん、本当? 聞きたい!」
「大晦日だし、特別サービスじゃ」
M美は好奇心いっぱいの目を祖母に向けていた。




