変身〜芋娘になったとしても〜
「は?」
ある朝、目覚めたら真凛は別人に変身していた。自分は美人でハイスペだったはずだ。美人医師として活躍していたのに、鏡に映る女はブスだった。どう見ても芋娘だ。
目は糸みたい。鼻も潰れて、歯並びはガチャガチャ。全体的に陰気で憂鬱な雰囲気に変わってしまった。しかも頭の回転もおかしくなったみたいで、読み書きなどもできない。思考が色々おかしくなっているようで、いわゆる発達障害のような症状も出ていた。
仕方がない。それでも死ぬわけには、いかないのだ。目の前の事をコツコツ頑張ってみるしかない。
真凛は発達障害者が集う就労移行などに行き、障害者雇用を目指す事にした。不器用ながらも作業を頑張っていると、褒められる事も多くなった。最初は「ハッタショ」とか「死ね」とか暴言を吐くものもいたが、こうしてコツコツと頑張っていると認めてくれる人は一人ぐらいは居るようだった。
それに本当の自己肯定感があれば、不幸な時でも自分を認めて、楽しむ余裕さえあるものだ。真凛は元々自己肯定感も高かったので、こんな芋娘に変身しても、自分の事は不幸だとは1ミリも思わなかった。環境や状況に幸せの基準や自分の価値が変化していたら、きっとずっと不幸だろう。真凛はどんな時でもどんな環境でも幸せになれる自信があったのだ。
それに女は弱さも武器になる。いくら不細工な芋娘に変身しても、自分の弱さを適度にアピールしていたら、あっという間に彼氏もできてしまった。いわゆる理解ある彼くんという存在だったが、こんな現状もなかなか面白い。美女だった時には得られなかった幸福みたいのがある。
「神様、私今のままでもとっても幸せです」
真凛は今日も笑顔で、鏡の前で呟いていた。




