変身〜自己肯定感〜
朝、目覚めたら美女に変身していた。おかしい。美穂は発達障害もちで転職を繰り返していたブスだったのに。「理解ある彼くん」すら現れないような不細工だった。子供の頃のあだ名は「幽霊」や「貞子」。陰気でオカルトっぽい雰囲気があり、障害の特性も重なって嫌われていたのだが。
鏡に映る美穂は、美女。陰気な雰囲気は払拭され、光り輝く美女になっていた。目はいつもの三倍以上大きく、肌もマシュマロみたい。歯並びも綺麗で噛み合わせも完璧。鼻も高く横顔も綺麗だった。
背も小柄になったが、全体的に身体が軽い。何もしていないのに、うっすらと花の匂いの体臭がするような。相変わらず頭はバグっているようで、読み書きが出来ず、空気も読めない発言もしてしまったが「天然」とか「癒し系」「守っててあげたいドジっ子」という評価に変わっていた。
前までは「ウザい」と「消えろ」と「ハッタショ」としか言われなかったのに、何この差は?
理解あるくんもあっさりと現れ、婚約まであっという間に進んでしまった。向こうの両親も一部の天才の発達障害の有名人の名前を出され、妙に好意的。この差は一体?
こういった発達障害や精神障害など目に見えない疾患は、ブス・無能・貧乏という弱者特性を医学的にふんわりとレッテルを貼っただけのものか。あからさまに差別や排除は出来ないから、病人のレッテルを貼り、一見綺麗な社会を装っているのか。そんな事が書いてある陰謀論サイトも見てしまい、美穂の自己肯定感は一気に減ってきた。
こんな綺麗に変身したのに、社会の闇がくっきり見える。ブスバージョンの美穂だったら、婚約者や向こうの両親に優しくされるじ事はなかったと思うと、身がすくむ。
今は周りの友達も美女ばかり。こんな美女に囲まれると、二重幅やエラの高さも気になり、全く嬉しくない。婚約者のスペックも友達の彼氏と比べて低いので、全然楽しくない。もっといい人がいたんじゃないかとも思う。世間的には幸せになったはずなのに、自己肯定感はゼロ。毎日死にたいぐらいだった。
それでもブスだった時には戻りたくない。この地位は手放したくない。
「私は私を愛してます」
鏡に向かって思っても無い事を呟いていた。そうしていれば、自己肯定感も上がるような気がしていた。




