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ディストピア2030〜信じるか信じないかはあなた次第〜  作者: 地野千塩


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変身〜宝くじ高額当選者のように〜

 朝、目覚めたら信じられない事が起きていた。イケメンになっていた。おかしい。鏡を見ながら何度も自問自答するが、事実だった。


 こんな太史は普段が冴えない、モテない、派遣社員の男だった。顔もカワウソにそっくりと言われる事が多く、背も低い。太っていたし、肌は常にニキビが浮いていた。体臭もひどく、いつもは職場や電車で明らかに女性に避けられていた。


 それなのに今は、イケメンに変身していた。生まれ変わっていた。職場も大企業の営業マンで、国立大卒で語学力堪能なハイスペ男に変わっていた。


 昔は頭もぼんやりとし、うつ病とか発達障害グレーゾーンとも診断されていた。今は、頭もシャキっとし、頭の回転が明らかに早い。身体も軽く、今すぐにでも筋トレしたくなった。今まではポンコツの古いパソコンみたいだったが、今は最新技術のAIロボットになったようだ。


 目もすっと切れ長で魅力的。鼻も高く、歯並びの綺麗さに驚く。歯のあたりが軽い。モゴモゴしない。肌も毛穴が全くなく、ニキビも何もない。


 なぜ冴えない男からハイスペイケメンに変身したかは謎だ。カフカの「変身」とは全く違う展開。


 これは喜ぶしかない。宝くじの高額当選を当てたような気分だ。あぁ、嬉しい!


 その後、太史はこの世の春を楽しんだ。仕事をバリバリとこなし、女と遊びまくった。お金もたくさん使ったが、なぜか女が貢いでくれて貯金額も全く減らない。本当に宝くじに高額当選したみたい。


 それでも次第に調子乗れなくなってきた。仕事のノルマもきつく、同僚にも嫉妬されるようになった。上司にも好かれてなく、嫌われていたようだ。悪い噂も立てられるようになり、出世争いに負けそうな瀬戸際だった。


 プライベートではメンヘラ女がストーカー化し、勝手に婚姻届けを出された。逆上したメンヘラ女に刺されそうになった事もあり、どうも上手くいかない。


 昔はハイスペは親ガチャや遺伝子が成功してずるいと思っていたが、彼らは仕事でも恋愛でも細部に気を配り、敵を作らない配慮をしていた事に気づく。決して楽しているわけでもなかった。恵まれているのなら、その分責任も重いようだった。思ったよりハッピーではないようだ。


 宝くじも高額当選者はかえって不幸になると言われていた。大金を持つ器もないのに、宝くじなんて当ててしまったら、かえって不幸になるにかもしれない。今の太史も、宝くじに当たって不幸になってしまった事と似ていた。


「ああ、元に戻りたい。仕事も楽で、趣味も楽しめていた過去に戻りたい」


 太史は嘆くが、元に戻る方法は全くわからなかった。

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