神がいるなら
真穂は少女小説家だった。主に冒険もののファンタジーや姫とか嫁ものも書いている。今は異世界風のファンタジーを書いていたが、ちょうどヒロインが試練にあっているシーンに取り組んでいた。猛獣と戦ったり、ライバルの攻防に負けずに剣のスキルを高める。
そんな時、夢を見た。夢にはちょうど今描いている作品のヒロインが出てきた。ヒロインとしては真穂は「神」だった。最初は「神」と対面し、緊張していたヒロインだったが、次第に文句を言い始めた。真穂としては作中のヒロインと対話するのは、変な気分だが、次第に慣れてきた。
「神様! 今のシーンの試練は辛すぎる! もういじめないで、勘弁してください! 神様がいるなら、もう少し甘くして欲しいと願います!」
ヒロインの訴えを聞きながら、なかなか甘いなと思う。
真穂が書きたいのは、ヒロインの成長物語。だったら、ヒロインが一番したくない事(試練)を与えないとどうしようもない。それにこのヒロイン、実は怠惰で怠け者の設定があるので、甘い展開にするとすぐダメ人間になる。そんな事情で厳しいと思いつつも鬼展開にしていた。
「酷いです! 愛の神様じゃないんですか?」
ヒロインは相変わらず怒っていたが無視した。この展開を変える計画はない。だってもうハッピーエンドって決めてる。天国のような場所に住めるハッピーエンドを決めているんだから、どうか今の試練も耐えて欲しいものだ。
それに真穂は、悪人も試練もない「優しい世界」の物語なんて作りたくないのだ。そうすると、どうしても最後のハッピーエンドもぼやけてしまうから。
「ま、大丈夫、大丈夫。『神様』を信じてこの試練も耐えてね。超えられないものは与えないし」
「酷いです! ドSです!」
ヒロインの訴えを聞きながら、もっと鞭展開にしても良い気がしてきた。明日目覚めたら、試練シーンもハードにしても悪くない。
大丈夫。どうせ最後はハッピーエンドなのだから。