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第一章 6、目玉焼きのせパン

「ふわ……あ。おはよー……。」


「おう、おはよう。」


 この世界で迎える二回目の朝。

 山の上なので空気が澄み渡っていてとてもおいしい。肌寒いけどな。


「ん? なにしてるのイサル?」


 首を傾げたり伸びをしながらアイルが火の前に座る俺の方にやってくる。


「水筒にサラーフ茶入れて水分補給用に持っとこうと思って。ほい。」


「ありがとー。気が利くじゃない。」


 前の世界のような保冷機能のない木製の温かい水筒を渡してやるとアイルが寒そうにほおずりする。


「あったかーい……ぐう。」


「二度寝すんな。」


 軽くぽかりとやってやるとアイルは舌をだしてえへへとやる。


 おお、てへぺろ。


「ほい、朝ごはん。って言ってもただのパンと目玉焼きだけど。」


 寝ぼけ眼をこすりながらいそいそと隣に座るアイルに焼いていた目玉焼きを塩振ってパンにのせて渡してやる。


「わっなにこれ?」


「村で昨日の材料と合わせてもらってたパンと、卵を焼いた目玉焼き。」


「めだま?」


「まあいいから食べてみなされ。」


「うん……はむっ。」


 何の疑いも抱かずにアイルが目玉焼きをのせたパンをかじる。

 無警戒すぎてちょっと心配になるなあ。毒でも入ってたらどうするんだろう。


「わっ! 中からとろって……。」


「うまいだろ? 半熟に仕上げて塩コショウがやっぱ一番うまいよな。コショウはないけどさ。」


 そんなしょうゆやソース派を敵に回しそうな発言をしながら俺も自分のをかじる。


「おお。こっちの卵は濃厚だな……TKGがうまそうだ。」


「てぃーけーじー?」


 夢中で目玉焼きのせパンを頬張るアイルが耳ざとく聞きつけ質問をしてくる。

 ほんとにおいしそうに食べるなこいつ。


「たまごかけごはんって言って、俺の故郷のソウルフーズよ。」


 口の端についた黄身をぬぐってやりながら説明してやる。


「イサルの故郷ってどこなの?」


「あー……。」


 なんて説明したもんか。


「東……太陽の上る方にある島国かな。」


「へえー……。そこの人たちはみんなイサルみたいに料理ができるの?」


「まあ簡単なもんならできるんじゃないか?」


 それこそ目玉焼きとかな。


「いってみたいなあ。イサルの故郷……。」


 陽の光に目を細めながらアイルが東の空を見やる。


「ああ……いつか戻れたらいいな。」


 俺は果たして元の世界に戻ることはできるのだろうか。それともこの世界で生涯を終えるのだろうか。

 向こうの世界に心残りは多分ないけど、それだったら少し寂しいかもな。


「よしっごちそうさんっ。荷を畳んでいこうか。」


 立ち上がって腰を捻る。

 やっぱ地面が固いと腰がこるな。


「寒いからさっきの水筒を懐に入れとくといいんじゃないか?」


「それ、名案。あったかいー……。」


 アイルが袋の中から水筒を取り出し俺と同じように懐に入れる。


「イサル、ちゃんとチェストプレートはつけた?」


「おう、ばっちりよ! いてえ!!」


 どんと胸を叩いたらこぶしが割れるかと思った。痛い。


「いい? ウィンバーンが現れたらすぐにどこかに隠れること。もしイサルが襲われたら守り切れる自信ないから。」


 アイルが真剣な表情で注意事項を確認する。


「おう、まかせとけ。アイルに取っ組み合いでも勝てる気がしない俺は、すぐに隠れます。」


「いいんだけど、なんかかっこわるいなあ……。」


 アイルが苦笑して歩き出す。

 

 だってほんとに勝てる気しないんだもん。


「よし、じゃあ出発!!」


「おう!」



「とうちゃーーく!」


 十五分ほどで野営地から頂上に到着した。のはいいんだが……


「すっげえ……ここまで綺麗だと逆に気味が悪いな。」


 たどり着いた頂上は聞いていた通りまっ平らだった。

 ここからでは左右向こう側の端が見えない。とんでもなく広い平面の地。

 しゃがんでみても、岩や地面のごつごつや石などによる起伏は一切見えない。


「向こうにあるのが龍神を祀る神殿……かな? でもウィンバーンはどこに……。」


 アイルが爪先立ちで背伸びをしながら白い石でできた建造物を見る。

 竜神を祀っている神殿はギリシャなどにある柱が立ち並ぶものに似ている。


「とりあえずあっちに……。」


 神殿を近くで見てみようと一歩踏み出す。


「っ!! イサル伏せて!!」


「へ? わぶっ?!」


 アイルが後ろから覆いかぶさるようにして俺を地面に押し倒す。

 地面に思いっきり顎打って痛い……。


「いったい何が……。」


 そのとき。俺は身の毛がよだつようなプレッシャーに襲われた。

 生き物の本能、生き延びようとする意志が俺にここにいてはいけないと呼びかける。

 ウィンバーンが空の向こうから近づいてきたのだ。


「っ……アイル!!」


「静かにして!! まだ気づかれてないから。」


 アイルが俺の上に覆いかぶさったまま耳元でささやく。


「ウィンバーンは目じゃなくて音と匂いで獲物を探すの。だから静かにしていればとりあえずは大丈夫。」


「で、でもっ。」


 震えが止まらない。

頭の中で警鐘がなっている。

 地面に伏せていることによって自分の心臓の鼓動がうるさく聞こえる。


 自分は無力だ。

 野生の前になすすべもなく蹂躙される弱者なのだ。


「だめだ……逃げないと……。」


「イサル。」


「早く……あの神殿の中に走って駆け込めば……。」


「イサル。」


「よし、タイミングをうかがって……。」


「イサルっ!」


「っ?!」


 アイルに後ろから押し倒されたまま頭を抱えられて撫でられる。

 その手から俺に対する思いやりが、ぬくもりが、流れ込んでくるようだった。


「っ……ふう……。」


「落ち着いた?」


「……すまん。なんとか。」


 大きく深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


「今ウィンバーンが神殿の上を旋回してるのが見える?」


「っああ。」


 そして初めて俺は羽竜ウィンバーンを直視する。


 長い尾をなびかせるようにして飛ぶその姿は前足が退化した蜥蜴のようだった。

 下から確認できるのは大きな二本の角、そして上から噛み合わされている強靭なあぎと。

 赤い鱗に覆われた黒い地の肌はごつごつとしていて、撫でると手が傷だらけになるであろうことが察せられる。

 全長の半分を占める尾は空中での舵取りの役割も果たしているらしく、ウィンバーンの意思のままに自由に動くようだ。

 赤と黒に覆われたその威容は見るもの全てに食物連鎖の頂点としての貫録を見せつけてくる。


 頂点。王者。

 そんな言葉がふさわしい堂々とした姿に俺は一時、呼吸をするのも忘れた。


「……サル……イサル!」


 アイルに呼ばれていたことに気がつき少し首を捻る。


「っ……大丈夫、なんとか。で、どうする?」


「イサルがどこかに隠れてくれればあれはなんとかする。問題は隠れる場所なんだけど……。」


「ここまでまっさらだと隠れようがねえよな……。」


 人が隠れることのできる岩はおろか、石ころ一つすら転がっていないのだ。


「ねえ。今思ったんだけどさ。」


「ん?」


 アイルが何か重要なことに気がついたような声で話しかけてくる。


「イサルってさ、ここに来る意味なくない?」


「……。」


「……。」


「ほんとだよ?!」


 なんで非戦闘員の俺がここまで来たのだろう。


「私もさっきまで全然気がつかなかった。」


「いやでもこれは一応実戦力示試験だから、戦い自体は一緒に見届けないと……。」


「……うん、そうだね。」


 アイルが少し嬉しそうな声色になる。


「じゃあ、後ろに静かに這って行って隠れて。そこで、私たちの……ギルド結成の瞬間を見届けて。」


「わかった。悪いな、任せきりで。」


「いーの。イサルは私の帰りをご飯作って待っててくれれば。そのための四属魔法使い(テセラー)なんだから。」


 アイルはそう言って俺を抱く腕に少しだけ力を込め、覆いかぶさった状態からどいてくれる。


――とっさのことで気がついて無かったけど、今の割とすごい状況だったよな……。


 美少女に上から押し倒され抱きしめられ頭を撫でられる。

 元の世界では考えられなかったことだ。いや、こっちの世界でも羨ましがられるポジションであることはたぶん間違いないが。


 そろそろと匍匐前進の要領で登ってきた道に戻る。

 少しでも物音を立てたら気がつかれる。そう思うと心臓が張り裂けそうだった。


 なんとか元の道にたどり着き、岩陰に身を隠す。


「……頼むぞ、アイル。」


 俺が隠れたのを確認して、ゆっくりと立ち上がる後ろ姿にそう呼びかける。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!」


 天を裂くような咆哮があがる。

 ウィンバーンがアイルの存在に気がついたようだ。

 先ほどまで旋回していた神殿の上にゆっくり翼をはためかせて滞空している。


「一気にケリをつけるわよ。」


 アイルが身体を前に倒し、クラウチングスタートのような姿勢を取る。


「グワアアアアアア!!!」


 ウィンバーンがアイルの行動を見て、警戒心あらわに尻尾を振り回す。


「ふあっ!!」


 どこか気の抜ける掛け声とともにアイルが引き絞った足のばねを開放し、


「と、飛んだあ?!」


 左ひじを前に出し、右腕はこぶしを握った状態でアイルは一直線に滞空するウィンバーンに肉薄する。

 虚を突かれたのかウィンバーンはとっさに動けない。


「今のって……ジャンプの瞬間に後ろから風の魔法で身体を押し上げたってことなのか……?」


 元の世界で読んだ本などの知識から、想像を掻き立てる。

 飛ぶというより跳ぶが正しいかもしれない。


「ギュワアアアアアアアアアアアア!!!」


 ウィンバーンが硬直から復帰し、迫りくるアイルに向かいその強靭な牙が並ぶ口を開ける。


「まずいっ! ブレスが来るぞ!」


 俺の直観通り、ウィンバーンの前の大気が熱で揺らぐ。

 そして次の瞬間。


 紅蓮の炎がその口から吐き出された。


 風によって大きなジャンプをしただけのアイルにそれをかわす手段はない。


「アイルっ!!!」


「はっ!!」


 しかし次の瞬間、握っていた右のこぶしをアイルがそのブレスに向かって開く。

 

 その手の動きに応じて、水の壁がアイルの前に広がった。

 そしてブレスがその壁に接触する。

 ブレスはその壁に触れると、その熱で壁を水蒸気に変えていく。


「あっつ! ここまで熱が届いてくるぞ……。」


 ウィンバーンの吐いたブレスの高温をつたえるように、こちらまで熱が伝わってくる。

 こんな熱量を間近で受けて、アイルは無事なのだろうか。


 神殿の上空はまっ白い水蒸気に覆われ、中の様子をうかがい知ることはできない。


「ルアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ウィンバーンが視界を塞がれた不満を発散するように咆哮する。

 

 水蒸気の下が割れ、何かが煙を引いて地面に落ちていく。


「うおい! まじかよっ……!」


 アイルが頭を下に自由落下してくる。

 ウィンバーンと戦闘していたのはかなり上空。頭から落下して無事で済むとは考えにくい。


「くそっ……まにあえええええええええええ!!!!」


 隠れていた岩陰を飛び出し、アイルの落下地点に向かい走る。


「短距離走は苦手なんだよくそがあああああああああ!!!」


 小学、中学、高校と体育大会は全て長距離だった。

 自慢ではないが、同じペースで走り続けることならいくらでもできる。

 しかし今求められるのは瞬間的な加速。


 アイルはすでに地面と10メートルほどのところまで落ちてきている。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」


 右足を前にスライディングの要領で滑り込む。左ひざがズボン越しに地面に擦れ、すりむけるのがわかる。


 が、


「あ、これ届かねえ。」


 スライディングなど小学校のころの三角ベース以来だった俺は大きく目測を誤り、アイルの落下地点から5メートルほど離れたところに転がって止まってしまった。


「アイル起きろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「っ!」


 俺の呼び声にハッとしたようにアイルが顔をあげ、左手をまっすぐ地面に伸ばす。

 すると、アイルの下の地面から土ぼこりを巻き上げアイルに向かって風が吹きあがった。


 その風を利用して身体を半回転、無事に足から地面に降り立った。


「げほげほっ……大丈夫か?」


 しかしアイルは声をかける俺の方は見ずに未だ蒸気に包まれるウィンバーンに両手を向ける。そして、


火蜥蜴サラマンデルに連なる怠惰なる魔人ログメフアルラよ、我にその権能たる炎を与えたまえ! メフパイーロ(停滞の火炎)!!」


 初めて呪文を詠唱した。


 アイルの頭上、両手を掲げる空間が揺らぐ。


「うっ?!」


 途端、俺を刺すような寒さが襲う。

 しかしそれを感じるのは俺だけではないようだ。


 パリパリと音を立てて見えている世界が変化していく。空気中の微細な水滴がこの突然訪れた冷気によって凍っていくのだ。


「ダイアモンドダスト……。」


 陽の光をはね返し、光り輝く氷の宝石。その幻想的な光景は今目の前で手を掲げる少女によって作られている。その姿はまるで白いドレスをまとう妖精のようで。

 こんな状況にも関わらず、その美しさに心を奪われてしまう。


「ギュアア……ア……。」


「うおおっ?!」


 その感傷をぶち壊すように、全身を真っ白に凍らせたウィンバーンがその巨体を一切動かさずに、いや動かせずに落下してきた。

 平らな地面に亀裂が入るほどの勢いで大地に激突する。

 氷や、骨などが割れる轟音が響き渡った。


 白く凍った土煙が一瞬視界を覆う。


「やった……のか。」


 土煙が晴れた視界の先にはピクリとも動かなくなったウィンバーンが横たわっている。

 そしてその前には。


未だ天に手を掲げる少女がその身体を白く凍りつかせていた。


「っておい!! 術者まで凍ってどうすんだよ!!」


 今の戦闘を素人なりに理解しようとしてみると、アイルの作った水の壁にウィンバーンのブレスが衝突。当然水の壁は水蒸気となり、視界を覆う煙幕となりウィンバーンを濡らした。

 そして今のアイルの魔法、恐らくアイルの周りの温度を急激に下げるものだろう。

 それによりウィンバーンはその体を凍らされ、翼をはためかせるどころか身動き一つできずに落下、生死は不明だがとりあえず脅威は無くなった。

 しかしアイルの周りの温度を下げるということは、こちらも水蒸気に濡れている自分の身体をも巻き込む諸刃の刃である。

 多分そんなところだ。


「ふざけんな! こうなることくらい予測して魔法をつかえっつーんだよ!」


 アイルに近づくとその冷気が一層増した。体の芯までしみるような寒さに自分が凍りつきかけているのがわかる。


「ぐぎぎっ……動けよ俺の身体あ!!」


 凍りつきそうな身体を必死に動かし、懐からサラーフ茶を取り出す。かろうじてまだ湯気の立つそれを凍りついたアイルの首辺りからかけていく。


「おい! しっかりしろ!」


「う……いさ、る?」


 焦点の合っていなかった瞳が目の前で肩をゆするイサルを見る。


 瞬間凍てつくような寒さが消え、凍りついた世界が動き出した。


「うおっ?!」


 音を立てて溶けた氷の粒が霙となって降り注いでくる。


「つめてえ!! ふおおっ背中に入った!!」


 身をよじり必死に背中の霙を外に出そうとする。

 その様子をアイルはきょとんとして見ていたが、


「ふ、ふふ……。」


「ちょ! 笑ってないで何とかしてくれ! ぎゃっ!!」


「あははははははははっ!」


 服の中に入った霙を掻き出そうと悲鳴を上げる声と何かが外れたように笑う声は、テボール山の空に吸い込まれるように響いた。



「ふふふふっ。」


「あーもうわかったから。気は済んだだろ?」


「う、うん……ふふっ。」


 目じりから涙をぬぐいながらやっとアイルの笑いは収まった。


 ウィンバーンはすっかり動かなくなり、脅威はもうない。

 今は、アイルが魔法で発する熱で身体を温めている。


「まあ一応お疲れさん。戦い方に関してはいろいろ言いたいことがあるけどな。」


 そう言って肩をぽんぽんと叩くとアイルは舌を出した。


「いやあ、失敗しちゃった。あそこで気を失わなければちゃんと範囲を限定して余裕を持って倒せたんだけどね。」


「まったく……驚かせないでくれ。」


 やはりあの魔法は、落下からのとっさの復帰で調整を失敗していたらしい。


「ありがとね。」


「ん?」


「あのとき助けてくれて。イサルが一緒に凍っちゃう可能性だってあったのに。」


 アイルが目を伏せてお礼を言う。その声はなんだか泣き出しそうに聞こえて。


「うりゃっ。」


「ひゃっ!」


 うつむいているアイルをいきなり抱きしめる。


「今、こうしてあったかいアイルがいる。それだけでいいさ。」


「イサル……。」


 暖かい。生きている証だ。

 このぬくもりがあれば、凍えることはない。


「まあ、この熱は魔法のおかげなんだけどね。」


「お前雰囲気ぶちこわすな?!」


 そんな風に二人で身を寄せ合いお互いに意識を向けていたからだろう。


 後ろの空から迫りくる黒く大きな存在に気がつくことができなかった。


「グラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


「っ! ウィンバーン?! まさかもう一匹いたの……っ!」


「アイルっ!」


「きゃっ……!」


 アイルを力いっぱい突き飛ばす。予測していなかった衝撃にアイルは大きく吹き飛ぶが、これで彼女は不意打ちを避け、魔法を使うことができる。


 戦闘では戦力外、だからせめて……役に立たない俺が盾になる!


 バッギャリイイイイン!!!


「ぐふっ!!」


 身体がくの字に折れ曲がり、十メートル近く吹き飛ばされる。


「イサルっ!!」


 アイルが悲鳴のような声を上げる。


 羽竜ウィンバーンのしっぽによる一撃をまともに食らってしまった。着込んできた鉄製の鎧がひしゃげたのがわかる。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」


 ウィンバーンが勝ち誇ったように俺の真上へ飛んでくる、そしてその強靭な牙の生えた口から紅蓮のブレスを俺に向かい吐き出した。


「イサル―――――っ!!!」


 アイルがこちらに手を伸ばすのが見える。


――ああ……こんなところで死んじまうのかよ。せっかく新しい世界に生を受けたってのに……。


 衝撃により遠のく意識の中で真っ白に染まりゆく視界を俺はただただ見ていた。


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