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「お客さん、お客さん、着きましたよ」

聞きなれない声に私ははっと目を覚ました。

どうやらすっかり眠っていたらしい。

「これはしまった」私は慌てて口元の涎を拭ってバスから降りた。

外はすっかり暗くなっていた。

私を乗せていたバスが行ってしまうと、辺りは真っ暗だった。

おかしい。

私はなにか良からぬものを感じた。頭がはっきりすると、周囲には何もない事が分かった。

何もないと言うのは人家や開墾された田畑やらがないというだけでなく、そもそもの私が降りるはずだったバス停もないのだ。

はっと思い至り、鞄の中を探るが無くなっているものはない。

月明りの中私は化かされたようにぽつんと山中に取り残されていた。

予定では今頃には森山宅で歓迎を受けているはずだ。それが今や立派な遭難者になり果てている。

停留所ぐらいあればそこで一夜を明かそうにも、その停留所がないのだからどうしようもない。

私は仕方なしに道を辿ってどこか宿を貸してくれるところはないか探すことにした。

しかしいくら歩いても人家はおろか人がいた形跡すらない。

確かに来た道を戻ってきた筈なのに、道はどんどん獣道に近づきつつある。

その内自分が登っているのか下っているのか分からなくなった。木々や腐葉土の匂いがきつくなり私は移動したことを後悔していた。

そんな時、耳が何かを捉えた。

それは確かに楽器の音だった。

こんな山奥で楽器だなんてそれこそ化生の類が宴会をしているやもしれぬが、変化を欲した私は演奏に誘われるまま斜面を滑り降りた。

驚く事にはそこに集落があったのだ。

集落の名は六ッ幡村。

今はもうそこには存在しない村だ。

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