49 手毬草ー25
「ベアトリーチェ様、ティオル殿下とはどのようなお話をなさったのですか?」
「アルバート様がお1人で戻っていらして不思議に思っていたのですが、そう言う事でしたのね」
「ティオル殿下ってばずっとベアトリーチェ様とアルバート様の方を気にしていらしたのですよ。でもティオル殿下とお2人でいる時は色々なご子息が注目していましたわ」
一気に集まってきた令嬢たちに苦笑しそうな口元を扇子で隠しながら返事をしていく。
令嬢たちはどうやらわたくしとティオル殿下が一緒にいることを確認して、声は聞こえないもののずっと様子を伺っていたらしく、仲良さそうに話しているのを見て安心したらしい。
やはり彼女たちの本命というか、狙いはわたくしとティオル殿下が結ばれる事であり、自分たちはそのおこぼれにあずかる事なのかもしれない。
実際に、今日のお茶会でわたくしと親しくしていながらも、ティオル殿下たちにさして興味なさそうな令嬢はこういった会話にはあまり加わってこない。
なるほど、わたくしが今後より一層親しくしていくべきはこちらの令嬢たちのようだ。
「それにしても今日は色々なご子息と話せるいい機会ですのに、わたくしに付き合っていてよろしいのですか?」
「まあなにをおっしゃいますか、ベアトリーチェ様。私どもはベアトリーチェ様が誘ってくださったからこのお茶会に参加出来ているのですよ」
「そうですよ。それにベアトリーチェ様が皆様とデートをしている間に他のご子息とお話ししているのでご安心くださいませ」
「だったらよいのですが、皆様も自由に動いてくださってよろしいのですよ」
「お心遣いありがとうございます」
令嬢たちはそう言うとニコリと微笑んだがわたくしの近くを離れる様子はなさそうだ。
そんな時、背後から人が近づいてくる気配がして振り返ると、面白そうに微笑むジョセフ様が居た。
「随分と同性にモテるんですね、ベアトリーチェ嬢」
「あらっジョセフ様」
「話しかけようと機会を狙っていたのですが、あまりにも人気でなかなか話しかけられませんでした」
「それは申し訳ありません」
「かまいませんよ」
ニコリと笑うジョセフ様にわたくしもニコリと微笑みを返した。
「ゲオルグ兄さんとは桜の花を見たと聞きました。よければぼくと一緒に他の花を見に行きませんか」
「そうですわね……ぜひご一緒させていただきたいですわ」
「それはよかった。それでは美しいご令嬢方、しばらくの間ベアトリーチェ嬢をお借りしますね」
流れるようなジョセフ様の言葉に、わたくしの周囲にいた令嬢たちがポーっとほほを赤らめながら頷いた。
「ではいきましょうか、ベアトリーチェ嬢」
エスコートのため手を出されたのでその手に自分の手を重ねて歩き出す。
ゲオルグ様と歩いた道とは違う道を歩いて庭を散策していると、人が居なくなったところで不意にジョセフ様が足を止めた。
「手紙ではやり取りをしているけれど、こうして2人で会うのは舞踏会以来ですね、ベアトリーチェ嬢」
「そうですわね」
確かに2回目なのだが、手紙で頻繁にやり取りをしているせいか何度もあっているような不思議な感じがする。
前世の記憶を持っているという共通点がある事も、ジョセフ様への親近感を高めているのかもしれない。
「……手紙に書かれていた懸念しているバスキ伯爵家の事ですが、ぼくの方でも調べてみました」
「まあ、疑問を持たれませんでしたの?」
「蛇の道は蛇といいますか、神殿以外にも怪しい行動をする家を調査する方法はあるとだけ言っておきますね」
「そう、ですの……」
激しく気になるがジョセフ様は言いそうにないので聞くだけ無駄だろう。
「とにかく神殿とは別の方法を使って調べたところ、バスキ伯爵家はかなり黒に近いグレーと言ったところですね」
「ヒロイン……彼女を虐げているという事でしょうか?」
「いいえ、それはありません。むしろ黒いのはその彼女です」
「え?」
それは、もしかしてよくあるヒロインも転生者で、性格が歪んでしまっているとかそういうパターンなのだろうか。
「バスキ伯爵家は必死に隠していることなのですが……」
ジョセフ様はそこで言葉を切って周囲に人の気配がないことを確認して、改めて口を開いた。
「彼女は確かに子供のころは魔力が多かったようですが、今は普通の男爵令嬢並みに魔力が減っているようです」
「まあっそれではアレと内容が変わってしまいますわ」
『誘惑のサイケデリック』ではヒロインは膨大な魔力を持っているからこそ攻略対象たちと仲良くなれていくのだ。
そうでなければ出自が少々珍しいとはいえ、ないわけではない状況のヒロインに攻略対象者が近づくわけがない。
「だから、彼女は精霊を直接取り込むことで仮初めの魔力を作り出しているのではないかという疑惑があるのです」
「なっ……それこそ邪法ですわっ」
確かに魔力不足を精霊で補う魔術は存在しているが、それはそのまま犠牲になった精霊の消滅を意味しているため、邪法中の邪法とされている。
そして、その邪法はリスクがないわけではないのだ。
犠牲になった精霊の怨念が術者に跳ね返るため、術者は常に何かしらの呪いを受けている状態になる。
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