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24 薫衣草ー8

「叔父様はどうしてわたくしに良くしてくださるのでしょうか」

「そうですわね、旦那様はそれこそ運命かもしれないとおっしゃいましたが、叔父と姪、ましてや年齢も離れているとあってはどうしようもありませんわね」


 その言葉にゾクっと背筋に悪寒が走る。

 あんなヤンデレと運命で繋がっているなど冗談じゃない。

 お母様の言葉に顔が引きつりそうになるが、必死に微笑みを維持する。


「運命だなんて、叔父様と本当に結ばれるべき方に申し訳ありませんわ」

「そうですわね。リゼンもいいかげん身を固めたらよいのに、一向にその気配もなく困ったものですわ」


 わたくし(ベアトリーチェ)を監禁する機会を狙っているというのは思わないだろうな。

 うーん、ゲームのわたくし(ベアトリーチェ)であれば不自由ない生活を送ることも重要なのだろうが、それは監禁されての物じゃないはずだ。

 それに今のわたくしは監禁だのなんだのされて自由に動けない生活をしたいなんて絶対に思わない。


「お母様たちが叔父様に女性を紹介することはないのですか?」

「何度もしておりますけれども、ご縁がないとかで断られてしまいますの」

「残念ですわね」


 うん、本当に残念だ。

 婚姻してくれれば監禁なんていう未来は潰えたかもしれ……いや、別邸を買ってそこに監禁という可能性もあるのか。

 お母様がこういうのだから、紹介した女性は何十人もいそうで怖い。

 兄夫婦の間に子供が生まれていなかった時は、継承権問題で予備が必要になる可能性があるので余計に婚姻して子供を残して欲しいところだっただろうが、わたくしや弟が生まれた時点でその理由は弱くなる。

 それもあってお母様たちは叔父に女性を紹介しても、成果はなかったという事か。


「マスター、今回の仮縫いと打ち合わせは以上で終了となりますが、他に何かございますでしょうか?」


 わたくしとお母様の話を切るようにマダム・スカーレットが声をかけてくる。


「今のところありませんわ」

「それでしたら持ち帰って縫製いたしますので脱いでいただいてもよろしいでしょうか」

「わかりましたわ」


 そういうとお針子たちがわたくしを傷つけないように、尚且つ補正した部分がずれないように慎重に脱がしていく。

 脱ぎ終わるとアンナたちが元のドレスに着替えさせてくれ、髪も結いなおしてくれた。


「ジョセフ様はきっと一番にベアトリーチェと踊りますわね」

「そうだと思いますわ、気が重いですが仕方がありませんわね」


 ゲオルグ殿下の成人祝いの舞踏会でもわたくしと真っ先に踊ったし、ある意味諦めがついている。

 幸いなのはティオル殿下とアルバート様の成人祝いの舞踏会はわたくしが成人に達していなかったため不参加で、ダンスを踊ることはなかったことだろう。

 それでも、ゲオルグ殿下の成人祝いの舞踏会では、ゲオルグ殿下の次にティオル殿下とダンスをしたし、そのあとはアルバート様とダンスを踊った。

 ……もしかしたらジョセフ様の成人祝いの舞踏会にはティオル殿下とゲオルグ殿下が王家代表として参加するかもしれない。

 そうなると最低4人と踊るのか。

 順番に関しては年功序列なのか血筋を優先させるのかはわからないが、向こうで決めてくれるだろう。


「ベアトリーチェが嫌なら、本当に無理に婚約などしなくてよいのですよ。何度も言いますが我が家は安泰なのですもの」

「そう言っていただけるのはありがたいですわ。事業のほうも順調ですし、国外とのやりとりも滞りなく進んでおりますので、わたくし自身婚約や婚姻についてあまりしたいと思っておりませんの」

「そう……けれどもベアトリーチェの花嫁姿は見てみたいですわね」

「まったく、お母様ったら言っていることがコロコロと変わりすぎですわよ」


 わたくしは拗ねたようにそう言ってお母様を見ると、お母様は「孫は見たいものですわ」と当たり前のように言った。


「グレビールに期待してくださいまし」

「もちろん、ベアトリーチェがこの家を継がないと言っている以上、あの子にはこの家を継いで子供を残していただきますけれども、娘の産んだ子供も見てみたいと思うのが母親の欲というものですわ」

「そういうものですの」


 前世でも喪女寄りだったわたくしにはわからない感覚だ。

 そんな話をしていると片付けの終わったマダム・スカーレットが退室をして行ったので、お母様と対面のソファーに座って出されたお茶を飲む。

 一息ついて、わたくしはお母様に今朝から気になっていたことの一つを訪ねてみることにした。


「お母様は本日お父様が朝議に呼び出された理由をご存じでして?」

「あら、わかりませんの?」

「はい」

「簡単ですわよ」


 まるで出来の悪い生徒を諭すように言うお母様にわたくしは首をかしげてしまう。


「ジョセフ様が成人なさったら本格的に王太子の選抜が始まりますもの。その準備だと思いますわ」

「陛下にはまだ成人していらっしゃらないお子様が2人も残っているではありませんか」

「残っているのは12歳と10歳でいらっしゃいますし、現時点で優秀ではありますが特出した才能は認められておりませんわ。お2人の成人を待つよりも先に王太子を決めてしまおうという事なのでしょう。第一王女のゾフィ様はもう19歳になっていらっしゃいますしね。王太子にするしない、どちらにせよ早めに決めて婚姻を結ばせるつもりなのでしょう」

「なるほど」


 確かに王族の婚姻適齢期の事を考えると、あと5年待って結婚というわけにはいかないか。

 それに相手の家の継承権の問題も絡んでくるから、厄介ごとは早めに片付けておいた方がいいだろう。


「けれどもそれでどうしてお父様が呼ばれますの?」

「何を言っているのです。王太子候補6人のうち4人が貴女の婚約者候補ですのよ。その父親として呼ばれるのは当然ですわ」

「ああ、そういうことですのね」


 改めて言われて納得してしまう。

 確かに王太子の婚約者になる可能性が高いわたくしの親なのだから、わたくしの気持ちを改めて確認は大事なのかもしれない。

 はあ、お父様なら大丈夫だとは思うが、頼むから変な事は言わないで欲しいものだ。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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