表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/28

二年目 六月

 1日


 そこで破綻するカップルもいるのだからしっかりしなくてはいけないと複数人から脅されていたが、忙しいながらも上手くいっているのではないかと思う。もちろん生まれ育った国が違うこともあって意見が分かれることはあるが、きちんと話し合いさえすれば、お互いに納得できる落としどころは見つけられる。

 今までのこともこれからのことも、リーニは疑問があれば私に聞いてくれるし、私も彼女のことを知りたいと思う。


 しかし、未だに彼女の方から触れられるのには慣れない。今更そんなことも言っていられないのだが……



 3日


 ルッテラがリーニの妹君たちと仲良くなったと嬉しそうに報告しに来た。年が近いリーネと一番仲良くなったと言っていたが、リーネとリーフは双子なので正直見わけがつかない。

 忘れないようにメモしておこう。

 長女がリーニでしっかりした印象の次女がリース、ややおとなしいのが三女のリーナ。四女のリーネと五女のリーフは双子。六女のリーズは確か羊様の毛で織った布に興味を持っていた。まだ幼いが礼儀正しいのが七女のリーシャ。

 以上だったはずだ。忘れないように時折このページを見返すことにする。



 4日


 ルーイが妙ににやにやしていた。理由は不明だが、とりあえず殴りたい。



 6日


 伯爵がルーイに掛け合ってオーヴィス王国へ羊様を雌雄五頭ずつ連れて行く運びとなった。世話係として数年間ムートンを派遣する。オーヴィス王国の風土が気に入ったと言っていたし、あちらで羊様を育てられるかどうかも試してみたいと話していたから、彼にとっても渡りに船だろう。


 それから、リーニの妹君、リース殿が姫君のお世話係としてこちらに残ることになった。本人はここへ来る以前からそうなっても良いというつもりでいたらしい。一応姫君のお輿入れの時とは事情が違うので形式的に面談したが、当初の印象通りリーニとはまた違ったタイプのしっかり者のようだ。どこかおっとりとしたリーニと違って、はきはきと最低限のことを話す。

 その後ジオに城内の案内を頼んだが、さっそく衝突した模様。まあ、先輩風を吹かせようとして失敗したジオが一方的に目の敵にしているようにしか見えないが。


 本日からは私の両親、姉夫婦とルッテラも城に滞在する。昨年国賓を多数迎えた時程ではないが、賑やかになってきたように思う。



 12日


 できる限り事務手続等はこちらで進めるようにしているのだが、女性にはまた別の忙しさがあるらしい。リース殿が仕事を手伝ってくれるようになったので助かると言いつつ、リーニは毎日駆けずり回っている。

 姫君からたまには返してくれと苦情を賜ったが、私だって彼女とのんびり話せるのは夕刻羊様を牧場へ送り返しているときだけだ。

 まあ、でもリーニの話によれば姫君は侍女としての仕事は後回しで良いとおっしゃっていたとのことなので、あれは冗談なのだろう。

 ちょっとした牽制でもあるのかもしれないが。



 18日


 独身のうちに一回くらいデートしてみたいというリーニの希望もあり、今日は二人で示し合わせて休暇をもらった。

 オーヴィス王国であちこち出かけたのもこういったことを意識する前に乗羊牧場へ案内したのも私はデートというものに入ると思うのだが……まあいいか。共に過ごせるのであれば、そんなのは些細なことだ。


 メリーさんと共に牧場へ行き、二人でぼんやりしていただけだが、楽しかった。いや、楽しかったというよりは幸せだったという方が正確だろうか。


 明日は忙しくなる。早めに寝ておこう。



 19日


 様々なアクシデントはあったが(主に羊様がらみで)、無事式を終了することが出来た。これから親族と陛下、そしてルーイの祝福を受ければ、一区切りつくことになる。


 緊張するかと思ったが、またしても羊様の鳴き声で緊張を吹き飛ばされてしまった。なんとなくだが、あれは彼らなりの祝福なのではないかと思える。

 昨年羊様が城への侵入に情熱を燃やしていたのも、もしかしたらルーイと姫君の婚姻を祝福するためだったのかもしれない。


 その後の宴も、出席者皆で盛り上げてくれたこともあってとても楽しい雰囲気のものとなった。リーニの家族も皆愉快な人々ばかりだ。年に一度くらいは彼女の里帰りも兼ねて訪れても良いのではないかと思う。


 昨年の今頃は自分が結婚することなど考えもしなかったが、何がどう転ぶのかはわからないものだ。

 リーニと出会えたことは私にとって大きな幸運であったと思う。ルーイにもいろいろ言いたいことはあるが、姫君がリーニと共にこの国へやってくることになったことについては感謝したい。


 これからについては変わることも変わらないこともあるだろう。感慨深いものはあるが、明日は今日の続きだ。

 それでも彼女と共になら、どんな困難でも乗り越えていける気がする。

 常に思っていることではあるが、言葉として記しておこう。


 必ず、共に幸せになるとここに誓う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ