act.2
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霧雨魔理沙は、幻想郷において、普通の魔法使いという立ち位置を与えられている――とはいうものの、この幻想郷において『普通』という定義は曖昧な概念としてあるだけで、そこに一切の確定をもたらす言葉ではない。
そもそもここ幻想郷では、いわゆる定義や固定された規定というもの自体が儚く、薄く、脆い存在であることから、どうにも所以しているところから問題なのではないか、とさえ疑ってしまうほど。
『普通』と『特別』の線引きが無く。
『人』と『妖』さえも平行線上。
それを幸福と呼んでいいものか、私には到底判定しかねることになるけれど、彼女――霧雨魔理沙は、普通を体現、あるいは表現されるにはあまりにも違和感がある。
種族的には人間であるのだが、常日頃から泥棒まがいの所業を重ねており、とある大図書館の管理者から目をつけられてしまうほどの行為――本人いわく借りているだけ、とのことだが、それが普通と称される行いであるのかはなはだ怪しいところだ。
彼女の悪行については諸々思うところはあるのだけれど、それを気にしていたらキリがないのでここでは泣く泣く省かせてもらうことになってしまう。
だが、まあ。
その努力する姿勢、というのもきっと普通ではないのだろう。
魔法に関しても貪欲さ、知識を欲し、認識を重ね、常識をも上回ろうとする。
魔法とは、元来そうあるべきものだ――常識、つまるところの世界の理を利用し、活用する。そこには徹底した正しい情報とそれを運用する知恵、ただ流れに逆らわず、組み換え、自身の魔法へと組み上げるシステムを作り上げることが、魔法、というとんでも技能の起点であり、本来の姿。
そこに至るための失敗にめげずに努力している姿はきっと――いや、確実に『普通』を遥かに上回っている。
普通なんて、ないのかもしれない、と思わせるくらいには。
そんなことを考えていると、
「アリス、今夜も試させてもらうぜ」
魔理沙は言う。
「あのねえ魔理沙、私もそこまで暇なわけじゃないのだけれど」
「悪い、遊びじゃないんだ」
「魔理沙……?」
いつもと大分様子が違う。
これまでも何度となく魔理沙は勝負を挑んで来ては、返り討ちにあっている。していた。けれど、そのたびにまた来るぜ! なんて快活な遠吠えを残しては満足したように帰っていた、あの魔理沙が。
今回だけ、違う形相を体していた。
「魔理沙、あなた一体――」
「一度だけでいいんだ。頼む、アリス」
「それは構わないけれど、魔理沙、あなた様子が変よ?」
「アリス、あの噂話聞いたか?」
魔理沙は続ける。
「影、が出るんだ」




