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痛みの音色  作者: 蛇口
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act.3

2


幻想郷を長く見守り続けてきた種族、天狗。大天狗を筆頭に、とてつもなく長い間、ここ幻想郷の出来事を観測してきた。

我々天狗ほど、この幻想郷を見てきた者はいないし、また同様に詳しい者もいないのだろう。その中で、私は一つの選択を行った。

そう、傍観からの脱出を。

これから先も幻想郷を見守り続けるだろう天狗達の中で、私に行えることは何か。ただ俯瞰し、傍観し、諦観するだけの存在から、別の何かへ。


そうして、真実の観測者として。

私は、ペンを取ることを決断したのだ。

私がーー射命丸文が、烏天狗であることを、私であることを、でき得ることを。

決して剣に勝てなくてもいい。

幾度の敗戦を越えてなお。

それでも、私は、ペンを選ぶ。


そんな、思いも虚しく。

今、目の前で繰り広げられる『戦闘』を、私は知らない。

普通の魔法使いの殺意を。

人形遣いの、狂気を。

二人の。

真意さえも。


普通の魔法使いこと、霧雨魔理沙は知る由もない魔法陣で新性質での魔力射撃を。

人形遣いこと、アリス・マーガトロイドは人形を手足の如く操りながらも、その人形にこれまでには見せなかった武装を持たせ、魔力射撃を切り抜けている。

こんな戦闘の様を私はかつて見たこともなかった。

いや、見ることになるとさえ、思ってはいなかった。

ここ、幻想郷にはれっきとした決闘方法が確立されており、それを行うことで、決着としてきたのだ。

しかし。

どう足掻いても。

どうもがいても。

この『戦闘』を『弾幕ごっこ』として認識することは不可能で。

相手を殺すほどの思いで、『弾幕ごっこ』を選ばずに現在に至るということならば、それはどのような経緯を辿り、何故にこの現実を引き起こしたのか。

私は知らねばならない。

天狗族の一員として。

新聞記者として。

何より、射命丸文として。


ふと、目を凝らして戦場とその相対者たちの動作を伺う。

そこにいるのは、紅い眼をした人形遣い。

彼女は普段、透き通るように澄んだ碧眼の持ち主であるのにも関わらず、今は血に狂う獣のように飢えた瞳をしていた。

その事実が示すこと。

そうーー覚悟の瞳だ。

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