12 武器屋にて(2)
あらすじ
・長距離行軍の後なので武器のメンテナンスへ。
・アレンは剣の整備を依頼。
・アニータは弓弦の予備を購入がてら店内散策。
・魔石で作った新作弓弦発見。
・試し撃ち
NEW ・かなり良かったので記憶石の収録へ ←イマココ
空を流れていく雲の隙間から差し込む光が、柔らかく街道に降り注いでいる。
心地よい風が吹く街道を進むと、やがて見えてくるリアーネの街の門をくぐり3人の探索者が歩いていた。
「いやーしかし参った。別な群れがいるなんて・・・」
ロングソードとラウンドシールドを背負ってるのはフォグ。
PTの前衛でタンク兼サブアタッカーだ。
背負ったロングソードは途中から折れ曲がっていた。
「切り抜けられたからいいじゃない。みんな無事だったし。」
「フォグの剣曲がっちゃったのは誤算だったけどね。」
弓を背負っているのはミリアリア。
腰には大振りのダガーとショートソードを下げている。
メインアタッカーである。
「とりあえず剣をなんとかして、もう一つの群れも何とかしないとですね。」
と、少し背の低いエミルが言う。
エミルはバフ、回復、時々攻撃魔法も熟す純魔法職の何でも屋だ。
ちなみに運動神経はからっきしだ。
彼らのPT切り開く者達は山間部で出没が確認されていた【グリーンエイプの群れの駆除】のクエストを受けている。
グリーンエイプは通常、番とその子供で暮らしている。
子が伴侶と出会えば、新しい番として巣立っていく。
しかし異常繁殖などで一定の地域の番の数が飽和してしまうと群れとなり人を襲うようになる。
彼らはそんなグリーンエイプの群れを一つ、追い払うことには成功していた。
しかしながら前情報より規模が大きく、乱戦の中でエミルを守りながら半包囲を切り抜けたときに、エイプの一匹が投げつけてきた岩をとっさにロングソードで受けたら曲がってしまったのである。
仕方ないので剣で殴りつけ、盾で押しのけながらミリアリアの弓とエミルの広域火炎魔術で脅して敗走させた。討伐した数はわずかに5匹である。
無理矢理叩きつけたのでロングソードはますます曲がって、剣としては最早使い物にならなくなってしまった。
グリーンエイプを何とか押し返し、警戒しながら休憩を取っていたところ、まったく別の群れを見つけてしまった。規模は判らないが、少なくとも剣は直すなり新調するなりしないとどうにもならないので撤退してきた次第である。
「今日はもう宿に戻って一度仕切りなおそう。」
「先に武器屋いくか?」
フォグ達トレイルブレイザーは、今後の予定を話し合いながら探索者ギルド最寄りの武器屋マルクス武器店へ向かって歩いていった。
「いらっしゃい。」
俺はフォグ。武器屋の中へ入ると、いつものオヤジが出迎えてくれた。
「おやっさん、実は剣が曲がってしまって・・・」
少しバツが悪そうにフォグが背負っていた剣を差し出す。
「おや、これはまたずいぶんと派手にまがっちゃったね。」
驚いているオヤジに、
「これって修理とかできますかね?」
と、問いかけると、
「こんだけ曲がっちゃったら新調の方が安いかなぁ。」
「刃も大分潰れてるし、素材も普通の鉄なら同じようなのがそこそこの値段であるよ?」
と言う事だったので、新しいのを探すことになった。
「ミリー、エミル。あのな?」
「ちょっと今回思うところがあって。今の戦い方考えてみたら剣じゃなくてもいいのかなって思って。」
「俺の役割ってまずはとにかく敵を抱えて攻撃を防ぐことだろ?」
「そんで、防いだ後に一撃。また防御。ミリーみたいに連撃とかする機会めったにないし、それならメイスとか戦斧とかどうかな?と思ってな。そもそも盾持ってると斬るって感じにならないし。」
「そうかも?盾だと衝撃に備えて腰落としちゃうし、斧とかの方が有効打になりそう?」
「フォグなら重いのも平気っぽいし。」
と、ミリー。
「フォグくんが珍しくまともな事言ってる・・・」
エミル、珍しくは余計だ。俺を何だと思って・・・
まーアリってことだな?
とは言え、斬撃が必要な場面もあるかも知れない。
メイスとかよりは斧で探してみよう。
「おやっさん悪い、獲物を斧に変えようと思うんだけど、斧ってどういうのを選んだらいい?」
「その盾と斧かい?」
「そそ。基本は盾で受けた後、一撃。コイツがいるから受けて相手を崩すか、受けてから反撃。」
ミリアリアの肩を叩きながら聞くと、オヤジは少し考えてから
「刃のサイズと形・・・形は両刃とか片刃、ハルバードみたいなのとか戟とか。先端に突起とか槍ついてるのとか、自分の手札で選ぶといいよ。」
「あとは柄の長さ。重さ。取り回しとかだね。」
「どれを選んでも手数っていうよりは一撃の重さって感じになるねー」
「で、フォグ君の場合は盾と併用だから・・・片手なら刃は小さめ、片刃。柄は短めの方がいいよね?突きはどう?突く?・・・あ、突かない。・・・力はそこそこありそうだねぇ。」
「それじゃ、これなんかどう?」
一本の斧を持ってきた。
刃渡り30センテ。身の厚みは3センテくらいはある。
柄は70センテ無いくらいか?ずいぶんコンパクトなイメージの斧だ。
そして、柄が黒く染めてあり、赤い石突がついている。
刃の側面には模様が刻み込まれていて、柄にも古い文字のような物が彫り込まれていた。
こ、これは!?
ビビッときた。
「かっけぇ!」
「あ、石突は重量調整の飾りらしいからね、あんまり強度ないから使っちゃダメだよ?」
「浪漫って言うの?なんかそーゆー見た目にちょっと拘る人の作でね?」
「でも性能もそれなりだから安心してね?」
右手に黒い斧、左手にシールドを装備して構えてみる。
これはヤバい。強そうじゃね?俺。
ミリーどう?これ。
「はいはい強そう強そう。」
「剣よりよさそうですね。ありかも?」
ミリアリアもエルクも冷静である。
「なんでお前らこのカッコ良さが分かんねーんだよ!」
「ま、いいや。オヤジ!こいつにする!コイツに惚れた!」
「お前は今日から黒切丸だ!」
「・・・名前つけるんだ。」
「で、これおいくらなんです?」
やはり冷静なミリアリアとエルクである。
「18金貨だけど、すっごい気に入ってもらっちゃったみたいだからね。オマケして15金貨でいいよ。」
・・・結構高かった。
チラっと二人を見てみる。
ちらっ?
二人ともジト目である。
諦めるな俺!諦めたらそこで試合終了だ。
・・・チラッ?
「はー・・・仕方ないわね。どうせ武器は必要だし、性能はいいっぽいし。」
「でも試し斬りしてからだからね?」
勝った!
よし!さっそく試し斬りをしなければ!
「普通は試してから決める物ですよ?そーゆーのは。」
「物は良さそうですけど、合う合わないとかもありますよね?」
エルクもミリアリアも辛辣である。
でも仕方ないじゃないか。惚れちゃったんだもん。
それにこんなにカッコいいのに俺と合わない訳ないだろ!
俺の黒切丸は最高なんだぜ?
「あー、フォグが今何考えてるか分かっちゃうわ私。」
「奇遇ですね、僕も分かりますよソレ。」
何だお前ら、エスパーか?
「あ、ちょっと待って。今そっち魔石の収録で使ってるから。」
試し斬りのスペースには先客がいた。
男女の二人組で男は無手、女は何やら弓をびょんびょんやっている。
「ミリアリアちゃんだっけ?弓も使うの?」
「そしたらちょっと面白い物見れるかも知れないから、時間あるなら見てくといいよ。」
オヤジが手招きするのでミリアリアも近くにやってきた。
「収録って言ってましたっけ?何の収録なんです?」
ミリアリアがオヤジに話を振ると、
「最近開発された物なんだけど、こーゆーのがあってね?」
「マナを込めると縮む弓弦なんだけどね?」
「さっきアニータちゃんが見つけて試して・・・「「「!!!」」」
「アニータちゃんってワイルドイーターのアニータちゃんですかっっっ!?」
「ってことは隣にいるの、もしかしてアレンさんかっ!」
「ぼ、僕アニータさんのファンで・・・」
「ぎゃー!!!生アニータちゃんキターっっっ!!!」
やっべー本物まじカッケー。
テンション上がってきた!!!
お店の名前にもしてあるのに誰も名前なんて呼んでくれない。
それが武器屋店主マルクスである。




