表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

序章   荒れる海

中世時代のシチリア王国を舞台にした、フィクション要素強めの大河ドラマ風歴史小説です。

登場人物は歴史上実在した人物ですが、エンタメとしてかなり脚色しており、史実とは一致しない部分が多々あります。

「ここ、史実と違ってる」的なツッコミはご容赦ください。物語はあくまでもファンタジーです。

 夜の海上は荒れていた。


 うねりを伴う高波が、大型帆船の側面へ叩きつけてくる。

 マストが軋むほどの突風が吹き、船体が大きく上下に揺れた。

 その直後、ひときわ強烈で激しい高波が打ち寄せた。ありえないほど急な角度で船が傾き、ゆっくりと元の位置に戻る。

 奇妙な浮遊感の後、強烈に下へ叩きつけられる衝撃がきた。

 私の腕を拘束していた海軍の兵士が、二人ともバランスを崩して倒れる。

 不意の横揺れには慣れているはずの熟練した水夫達まで、甲板上で立っていられずに横転していた。波飛沫が全身を濡らす。

 もちろん私も立ってはいられない。船縁を超えてくる激しい波と、斜めに吹きつける突風にさらされて気が遠くなりそうだ。


 その時、私から引き離され、水兵に捕らわれて縄で縛られかかっていた彼が、猛然と立ち上がった。悪天候に襲われて動転している水兵の隙を見て殴り倒すと、甲板の床に転がっている船員を身軽に飛び越え、立ちはだかってくる海兵を次々と押しのけ、一心不乱に私のところまで駆けてくる。

 私も彼も、降りしきる雨と波でびしょぬれだ。


「コンスタンティア!」


 差し伸べられた彼の手を、私は迷わず掴んでいた。

 力強く私の手首を引き寄せ、彼は船べりに向かって走り出した。

 彼は私を抱き寄せると、さっきの砲撃で被弾した船縁の横穴から、迷うことなく荒れ狂う海面に向かって頭から飛び込んだ。

 ごうごうと唸る風の音を感じながら、私は強く目を閉じた。彼の肩に顔を押しつけ、広い背中にぎゅっとしがみつく。


 ―この男と一緒なら、嵐の海に落ちるのだって怖くない。


 死への恐怖よりも、私はむしろ、彼のたくましい両腕に抱かれて、安堵感に包まれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ