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【されされ】〜超ポジ清純ヒロインな和栞さんにしれーっと、美少女に夢を見ない俺の青春が、癒されラブコメにされた件〜  作者: 懸垂(まな板)
第一章「出会いと二つの契り」

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第一話「一途な悪友と見つかった美少女(中編)」


「入学早々、浮かれ倒してやがるな。ここは不純異性交遊推奨の建屋じゃなくて勉学に励むところなんだよ。それにお前はそういうのは間にあってるだろ?」


「不純とはかけ離れた人間が目の前にいることを忘れないでほしいな?それに……間にあってるって……”彼女持ち”みたいに言うなよ」



 話の流れ的には司には彼女がいることになるが、華々しい高校生活を男女ともに連れ添いスタートするなんという虫の良い話は現実に転がっていない。



 大抵、義務教育で結び付いた学び舎カップルは進学と同時にそれぞれの進路に行く手を苛まれ、関係が自然消滅してしまうことも少なくない。



 だが、司はその例に別の意味で漏れていた。



「まあ、人の恋路を邪魔するような趣味はないけど、同じ学校になれたんだから、頑張ってみろよな? 千夏さんならすぐまわりに見つかって、お前のライバルも増えるぞ?」


「馬鹿野郎……こちとら既に三回フラれてるんだぞ? 簡単にホームラン打てるなら苦労はしてねえよ。野球ならチェンジだが、待つってことも悪くないと思ってるだけだ」


 小学校の頃からの付き合いである司は、これまた小中で幼なじみの千夏唯依(ちなつゆい)に対して小六、中二、中三と、バッターボックスに立ってはいるものの、残念ながら空振り三振に終わっている。


 伊織に対して千夏のことを「どこがどう好きだ」と伝えてくることもしばしばあったが、司は有り余った熱量を抑えられずに打席に立ち告白すると、千夏から軽くあしらわれるように断られ、玉砕して帰ってくるのだ。


 かといって難しいところが、お互いを意識し変な距離を取ることもなく、仲良い友人を二人は普通にやってきている。自分の考えの及ぶところに二人の関係性はない不思議な距離感のようで、司には(あわれ)みと労いを掛けるほかなかった。



「司はその性格に似合わず一途で女々しいよな~。お前が女子だったら何かが始まる予感がしてもおかしくない」

「これ、告白されてるのか?」


「残念だったな。野郎に惹かれる感性は生憎持ち合わせてない」

「今の時代、そんな考えじゃ古いぜ? 伊織さんよぅ……」


「とやかく言うつもりはないけど、俺の趣向も尊重されてしかるべきだとは思ってるんだが、まったく暮らしづらい世の中になってしまったもんだな……」


 伊織はため息を吐き、あきれ顔で窓の外へと視線を向け、恋煩いの友人へ同情の念を持つ。


 目と鼻の先で他の女子と笑顔で話している千夏の姿が青春とは残酷なものだといわんばかりに、司への同情を後押しした。 



 司はこちらの視線の変わった先に病の元凶がいることを悟ったらしい。

 前向きな表情でこちらを見てくる。


「気楽にやるよ。俺たちの高校生活は始まったばかりだぜ!」

「はいはい。冬川司先生の次回作にご期待ください。っと」


「縁起でもねえフラグ立ててるんじゃねえよ。全く……」

「二度あることは三度あるが、四回目はどうなるか……人生の教訓にさせてもらうから応援するよ」


 からっと笑って机に肘をついて、軽く拳を差し出す伊織。

 司は「こっちの気も知らないで」と言わん顔で、拳強めに同情への感謝をコツンと返した。



「本人からも、たまに聞かされるけど、千夏は白馬の王子様を待ってるんだよな、語弊なく言い表すなら、面食いって訳だ」

「それなら司も悪くないのにな?」


 

 容姿に関していうならば、司は整っていないわけではない。


 自頭のよさそうな落ち着いた雰囲気の顔立ちで「清潔感」を合言葉に、毎日寝ぐせ一つなく毛先は毎日徹底して遊ばせる趣向がある。


 口を開かなければ千夏が求める王子様にも遠からずではあるのだが……。

 爽やかと形容するには口数が多く、お調子者という言葉を欲しいままにしているので、外見からくる好意的なイメージのすべてを恋愛では台無しにしていた。


 だが性格に幸いしてかいつも明るく、中学時代は告白を受けることも多少なりともあったらしい。


 その度に感謝と謝罪の意をうら若き少女たちに向けてきたことを伊織は知っている。


 そのすべてを「好きな人がいるんだ」という素直で失礼のない返答に決めているようで、振られた後の彼女たちとも告白を機に、より一層の敬意をもって接するようにしているらしい。



 ただ一つ、同情してしまう事と言えば、月日が経つにつれ人懐っこい性格に対して、軽薄な印象を与えてしまうのか、意中の千夏に振り向いてもらえないことくらいだ。



「そりゃどうも。もっと真面目にコクるべきだったかもしれないけど……今じゃあいつの執事みたいな関係だ」

「執事ってなんだよ」


「相談程度の役回りで、関係は一向に変化しちゃいない」

「優良物件相手に、千夏さんも罪な少女だなぁ……」


「うは、(にじ)み出ちゃうか、優良物件感……!」

「そういうところだぞ?司ぁ……」


 褒められると顔を緩ませて直ぐに調子に乗るので、褒めたことを後悔するように、伊織はあきれ顔で頬杖をついた。


 たわいもない朝。


 挨拶程度の会話だったが、暇を潰すには丁度良い。

 校舎には朝礼の開始を告げるチャイムが鳴った。



◆◇◆◇




「で? 誰が一番かわいい?」


 鬱陶しいその顔は午前の授業を終え、(そば)にあった空席の机から椅子を寄せて近づいてくる――


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