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鬼束ハクの怖い話。〜獄卒Vtuberの集めた恐怖体験〜  作者: 鬼束ハク


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15/17

野菜泥棒



最近、畑の野菜が盗まれている。


最初は一軒だけだった。


だが気付けば町のあちこちで被害が出ていた。


大根。


白菜。


ネギ。


キャベツ。


盗まれるのは決まって野菜だけ。


近所では犯人探しが始まっていた。


そして誰かが言った。


「駅前のアパートの外国人たちじゃないか」


根拠はなかった。


ただ、噂は広がった。


誰もがそれらしい理由を後付けし始める。


俺も少しだけ信じていた。


そんなある日。


仕事帰りに変なステッカーを見つけた。


白地に黒い文字。


見たことのない言語だった。


その下に野菜の絵が並んでいる。


大根。


白菜。


ネギ。


人参。


図鑑のように整然としていた。


気味が悪かった。


翌日、別の場所でも見つけた。


数日後には駅前にも増えていた。


誰も気にしていない。


だが一度気になると、どこにでもあるように見えてくる。


ある夜。


駅前のアパートの前を通った。


玄関から外国人の男が出てきた。


男は電柱のステッカーを見るなり立ち止まった。


そして顔色を変えた。


何かを呟いている。


聞き取れない。


だが怯えているように見えた。


男は周囲を見回し、急ぐように立ち去った。


翌週。


その部屋は空になっていた。


しばらくして別の外国人も引っ越した。


さらに一人。


また一人。


理由は分からない。


だが、皆いなくなった。


野菜泥棒の噂だけが残った。


気になった俺はステッカーを剥がそうとした。


爪を立てる。


端が少しめくれる。


だが紙ではなかった。


妙に柔らかい。


思わず手を離した。


裏を見る前に気味が悪くなった。


その夜。


スマホで文字を撮影し、翻訳アプリにかけた。


結果は出なかった。


別の翻訳サイト。


別のアプリ。


どれも反応しない。


文字ですらないようだった。


数日後。


被害を受けた畑の近くにあったステッカーを見に行った。


そこで初めて変化に気付く。


野菜の絵の一つに傷が付いていた。


印刷ではない。


誰かが爪で引っ掻いたような傷。


翌朝。


その野菜が盗まれた。


偶然だと思った。


だが次の週も同じだった。


傷が増える。


野菜が消える。


順番まで一致していた。


俺は写真を撮り続けた。


そして気付く。


傷は野菜だけについているわけではなかった。


一番下。


ほとんど見えない場所に、小さな人の絵があった。


最初は気付かなかった。


野菜の並びに紛れていた。


棒人間のような絵。


その時は傷はなかった。


数日後。


その人の絵に細い線が一本増えた。


嫌な予感がした。


その夜だった。


午前三時。


窓の外から音が聞こえた。


ざり。


ざり。


何かが地面を擦る音。


カーテンを開ける。


誰もいない。


だが街灯の下に泥だけが残っていた。


長く一本の線。


何かを引きずった跡のようだった。


翌朝。


俺は例のステッカーを見に行った。


人の絵に二本目の傷が付いていた。


その日の夜。


アパートのポストに新しいステッカーが入っていた。


同じ文字。


同じ野菜。


そして一番下。


人の絵の横に数字がある。


俺の部屋番号だった。


警察へ行こうか迷った。


だが説明できない。


結局、引っ越すことにした。


町を出た。


知り合いにも行き先を教えなかった。


半年後。


新しい生活にも慣れた頃だった。


仕事帰り。


マンションのエレベーターを待っていると、掲示板に白い紙が貼られていた。


見覚えのある文字。


心臓が止まりそうになった。


近付く。


あのステッカーだった。


野菜の絵が並んでいる。


傷だらけだった。


そして一番下。


人の絵がある。


俺は息を止めた。


だがその顔は俺ではなかった。


知らない男だった。


安心しかける。


その時。


絵の下にある数字が目に入った。


俺の部屋番号だった。


その瞬間、エレベーターが開いた。


中には誰もいない。


奥の壁一面に、


同じステッカーが貼られていた。


全ての人の顔が違う。


だが、


数字だけは全部、


俺の部屋番号だった。


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