第9話 氷神の巨人(アイス・ゴーレム)
涼香の脅威は止まる事なく、二十の支部を一人で倒したその事実は直ぐに大会参加者も把握する事になる。
涼香の水色の髪の毛は凍りつき、体の一部は凍りついていた。氷神の巨人の異能力者である涼香の体は不安定な状態で維持されていた。
氷神の巨人の異能だけでも十分な強さを誇るが、父である勉によって、魔造改造を施されており、いびつな異能へと変化していた。
「……体が愚痴る前に氷川氷を倒さなければ、私の存在意義が……証明しなければ、私が、最高の娘だと言う事を」
涼香は全身から大量の魔力を放出させる。
そんな涼香を見て、観戦している者達は異常な光景に、あるものは疑いを、あるものは心配を、あるものは大会運営員に報告を、しかし、観戦している者達が何をしても手遅れな状況になっていた。
出入口は凍りつき、大会運営員が手出し出来ない状況となり、涼香の周りには氷で造られた様々な形のゴーレムを造り出す。
異能を極限まで高めた魔力で強化させ続ける改造を施された涼香の体はいつ、壊れても可笑しくない程のギリギリな状況で保たれていた。
「氷川氷……どこ?」
氷を探し続ける涼香の目の前に無数の氷竜が出現するとその氷竜は統率の取れた動きで、涼香の周囲を網の様に配置される。
「暴滅包囲網」
氷の情報を全て頭に叩き込まれた涼香は網の様に配置された氷竜を見て、直ぐに氷の技を見て、直ぐに理解した。
「大暴れだな。三川涼香」
「……氷川氷!パパを私を裏切って、青森支部を捨てて、東京本家に何故行った?」
「……体を弄くられただけでなく、頭もだいぶやられたな。口調もだいぶ変わったな」
「全てはお前を倒す為、私は自ら改造を望んだ。勝負しろ、氷」
「それは強くなったとは言わねぇぞ」
「強さなんてどうでも良い。お前を殺せれば」
「……大会のルールも忘れたか?」
「関係無いよ。青森支部は氷川氷ならびに佐倉紫音のどちらかの殺害を目標に動いている」
「その割には、岸谷風は逃げていたぞ」
「関係無いよ。一回戦目は私がやるって決めていたから」
「……氷神の巨人昔と違ってゴツいな手の平サイズのウサギのほうが可愛げがあったぞ」
「もう子供じゃない」
我を忘れた涼香は氷で造られたゴーレムの様な姿したものを氷ひょうへと襲わせる。
二人の因縁は五年前に遡る。
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「パパ、どこ行くの?」
五年前、五歳の涼香は父に手を引かれ青森支部のとある屋敷に訪れていた。
「氷川家だよ」
「氷川家?」
「……三川家は俺と涼香の二人だけだ。氷川家と上手くやっていかないとな」