仙人、初級ダンジョン破壊に反対する、新たなの騒動の始まり
「大金が欲しい………」
将人は冒険者ギルドの掲示板の依頼書を見ながらため息をついた。将人がこんな世知辛い事を言い出したのには理由があった。冒険者進級試験直後の話である。
「初級者用ダンジョンの破壊が決定されたあ!?」
冒険者ギルドの掲示板には依頼書だけではなく連絡事項や決定事項も張り出される。下級冒険者二級が受けられる依頼はとりあえず置いといて、ギルドマスター、エドガルド・ハイドの執務室に向かい、反対したが受け入れられなかった。
「どうしてダンジョンの破壊を決定したんですか!?」
将人はエドガルドに詰め寄る。
「前回の暴走を見ただろ。君、実際にその騒動の渦中にいただろ。なら言わずとも理由が分かるはずだ」
「いやいや、分かりませんって。俺、スケソルさんとも協力してダンジョンコアの暴走止めたんです! 原因はもう取り除かれてます、。二度と暴走は起こりませんよ。それを壊すだなんて納得いきません!」
「スケソルって?」
「スケルトンソルジャーの略です!」
「ひどいなそれは、君が命名?」
「俺じゃなくて、マサリアです。それは置いといて、その決定は覆りませんか?」
チワワのように目を潤ませながら情に訴える。エドガルドはやや引きつりながら答える。
「そんな方法じゃ同情は誘えんよ………破壊せずに済む方法はあるが、君には無理だと思うよ」
「是非、その方法を教えて下さい!」
将人はエドガルドに提示された方法に絶望的な気分になった。
「世知辛い世の中だ………」
そして冒頭のセリフとなり、後から来たマサリアがそれを聞いて引いていた。
「………マサト。アンタ、何、欲望丸出しのセリフ言ってんのよ?」
「リアお嬢様、マサト様はそういう人ではないと思います。事情を聞かれた方がよいかと思います」
エミリアがすかさずフォローを入れてくれた。
「エミさん、よく分かってる」
「私も分かってるわよ。マサトが大金が欲しいなんて言うのは相当よ。で、何があったの?」
「立ち話もなんだし、休憩所で話そうか」
休憩所に行き、マサリアが席を取り、将人とエミリアが人数分のお茶を持ってエミリアのもとに向かう。エミリアは当然のようにマサリアの隣に座り、向かいに将人が座る。お茶を飲み落ち着いたところで、マサリアとエミリアにエドガルドの執務室での会話を話し、将人と同じように絶望的な気分になる。
「ダンジョンを買い取れって無理でしょ、それ。提示された金額、私たちが上級冒険者になって数年分依頼をこなしてようやく届くかもって金額じゃない!」
「しかも一か月以内に払われなければダンジョンの破壊が執行される。これは厳しいですね」
「でも、何とかしないとダンジョンコア壊されて、スケソルさんも死んでしまう」
「私たちも助けられたし、何とかしたいわね………」
将人たちは頭をひねって考えるもいい案が出るはずがなかった。三人寄れば文殊の知恵とはいかなかった。
「やあ、マサト君、マサリアちゃんにエミリアさんも三人で………深刻そうな顔をしてどうしたんだい?」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはファテマとパウラ、アベルトがいた。ファテマはパウラに気を利かせ、エミリアの隣に座る
「お兄ちゃん、何か辛そう………」
ファテマがすかさず将人の右隣に座り、右腕に手を回す。将人はパウラの胸の感触を感じながらもそれを喜べるような気分ではなかった。
「マサト殿、何かあったのですか? 悩み事ならば私たちに話してください。力になりますよ」
アベルドが将人の左隣に座り、右腕に手を回す。
「離せ、バカ! ふざけてる気分じゃないんだよ、こっちは! それよりも知恵を貸してもらえないか?」
将人はファテマたちにも事情を話す。すると、ファテマたちも難色を示す。
「それは難しいね。一ヵ月ってそんな金額用意できるはずがない。金貸しに借金するにしてもその金額じゃあ貸してくれないと思う。返せるかどうかの保証もないしね」
「どこかのダンジョンに潜って宝物を見つけるのはどうかな?」
いい案を出したとでもいうようにパウラが胸を張る。
「私達のレベルじゃ無理だし、一ヵ月以内に戻ってこれないと意味がない」
ファテマにすかさず不定され、パウラはショボーンとする。
「実家に頼んでも、その金額は貸してもらえないでしょうね………」
アベルドが腕を組んで考える。全員の目がアベルトに向く。射貫かれるような視線にアベルドは椅子からずり落ちそうになる。
「アベルドの実家って何かやってるの?」
将人が代表して聞いた。
「私はとある貴族の次男坊でして、お金はそこそこあるんですが、その金額を貸してくれとは言えないです」
三人ならぬ六人寄っても文殊の知恵とはいかないようであった。出てくるのは不定ばかりで、暗礁に乗り上げたような気分だった。
「だったら、そのお金、わらわが払ってもよいのじゃあ!!」
いきなりの大声にびくっとしながら後ろを向くとそこには、一人の少女が立っていた。年の頃は十一才位だろうか。銀色の腰まである長い髪、目端が少し吊り上がった気の強そうな青い瞳。あどけなさが残る顔つき。その少女が得意げな顔で胸を張る姿が子供っぽくて可愛かった。なんとなくホンワカしてしまう。
「お嬢さんに心配されてしまうとは俺も情けないな。でも有難う、気持ちだけいただくよ」
将人はお父さんになったような気分で、少女の頭に手を置き撫でる。少女の体がプルプルと震え始める。
「マサト殿………」
アベルトに肩を叩かれる。よく見ると顔色が悪い。この休憩所にいる全員の席から離れ、片膝をつき始めた。異様な光景に将人はオロオロする。
「何事!? アベルド、これどういう事!?」
「マサト殿、まずいです、早く膝をついてください!」
「? 何で?」
「この方は、この国の第二王女、マルテナ=ケヴィン=エリアリス様です!」
「その通りなのじゃ! 早く頭から手を離さんか、この、愚か者!!」
マルテナは頭の上に置かれた将人の手を叩き落とす。




