仙人、シゲルイの驚愕、アイちゃん新生
「俺の作った盾が動き出して意志らしいものを持った件………」
シゲルイはアイアスを見てとして呟いた。
「何ですか、いきなりラノベの題名みたいな事言って」
「ラノベってのがよく分からんが、それより分からないのがコイツだ!」
シゲルイが目の前をフワリと浮いている盾、アイアスを指さして怒鳴った。
将人が冒険者進級試験に合格、手続きを終えた翌日、高熱により一部融解したアイアスの修理を頼む為シゲルイの工房に来ていた。そしてアイアスに呼び掛けフワリと浮いたアイアスを見てシゲルイは冒頭の言葉をいった。
「俺は魔法使いじゃねえんだ、どうやったらこんなビックリドッキリアイテムになるんだ!?」
「俺に言われましても………」
「マサト、やっぱり俺と組まないか!? ゼロ鉄製の商品を大量生産して動けるようにしたら………売れるぞこれは!!」
将人はシゲルイの提案に難色を示す。
「それは無理だと思います。大体どうしてアイちゃんが動き出すようになったのかよく分かってないんですよ」
「どんな状況で動き出したんだ、コイツは」
コイツ呼ばわりされたアイアスはシゲルイに体当たりする。シゲルイはアイアスの体当たりを踏ん張って耐える。
「グエッ! 何するんだコイツ!!」
「アイちゃん、人格的には女の子なんでコイツ呼ばわりされた事を怒ったんだと思います」
「そうなのか? ていうかマサトはコイツ…じゃなくてアイちゃんの考えてることが分かるのか?」
「何となくですが」
「そうか………そりゃ悪かった、許してくれ、アイちゃん」
アイアスはシゲルイから離れ、後ろにのけぞる。まるでわかればいいんだとふんぞり返っているようであった。
「で、改めて聞くんだがその………アイちゃんはどういう状況で動き出したんだ?」
「それはですね………」
将人の話を聞いてシゲルイは腕を組んで考え込む。
「仲間がピンチになった時か。そんな状況に何度も陥るんじゃ精神的に参るわな」
「ですからすみません」
「いいって、いいって。とりあえず修理は承った、毎度あり。今は他にも仕事を受け持っているから二日後くらいに来てくれるか」
「分かりました、よろしくお願いします」
マサトが工房を出ようとするとアイアスが入り口の前に浮かび、将人の行く手を阻む。将人がしゃがんで下から出ようとするとアイアスも下に下がり行く手を阻む。
「アイちゃん、どいてくれないと外に出れない」
将人がそういうとアイアスが将人をグイグイと押して将人を工房内に押し戻そうとする。
「あー、俺にも今アイちゃんが何言ってるのか分かった気がするわ……突貫で今日中に終わらせるからその分料金上乗せな」
「本当にすみません、シゲルイさん」
「いいって事よ、子供のわがままにゃ勝てんよ、大人は………」
そういって静かに笑うシエルイを見て将人は思った・
(シゲルイさん、結構いい歳だよな。子供はいないのかな)
夜も更け、月が天に昇った頃、ようやくアイアスの修復が終わった。
「………やっと終わったわ、ホレ、マサト」
シゲルイが修理を終えたアイアスを手渡す。
「溶解した部分に新たにゼロ鉄を付け足して成形してモンスターの革を貼りつけて完成だが、このモンスターの革、今回は特別製だ」
「特別製って何のモンスターの革を使ったんですか?」
将人はアイアスを持ち上げたり、別の角度から見てみたりしながら訪ねた。
「何と驚け、説明不要の最強モンスター、ドラゴンだ!!」
「ドラゴンっていいんですか? 超高級品じゃないんですか?」
将人はぎょっとしながらシゲルイを見た。
「まあ、そうなんだがセロ鉄製のものは俺の趣味も少し入ってるからな。趣味には力を入れたいってもんよ。まあ、趣味だから使い勝手が悪いかもしれんが。アイちゃんに呼び掛けてみろ。具合を知りたい」
「分かりました。アイちゃん、起きてくれ」
マサトの呼びかけにアイアスはびくりと反応しゆっくりと浮かび上がる。浮かび上がるがフラフラしていて危なっかしい。
「アイちゃん、起きてるか」
マサトの更なる呼びかけにびくりとしてクルリと一回転するとしゃんとしてフラフラしなくなり、空中で静止する。止まったかと思ったら左右に動きクルクルと回転しながら部屋中を動き回る。突如回転を止め空中で停止、シゲルイをロックオンし、シゲルイに飛びついた。いきなりだった為、シゲルイが避ける事が出来ず、アイアスに腹部を強打させる。
「ナ…ンデ…ダヨ………」
床に倒れるシゲルイの腹部にアイアスはくっつき体を擦り付ける。
「気に入らなかったのか?」
せき込みながら将人に尋ねる。将人はアイアスの感情の『氣』を読み取り納得する。
「そうじゃなくて……すごく喜んでるみたいです」
「アイちゃん、これからは普通に喜んでくれ。アイちゃんの場合、受け止めるのはキツ過ぎる………」
アイアスはシゲルイの腹部から飛び上がりそっぽを向いた。この反応はシゲルイにも分かった。
「………喜んだり怒ったりと大変だな、アイアスの嬢ちゃんは………俺の仕事はこれで終わりだ」
「ありがとうございました」
「いいってことよ。これからもシゲルイ・アカマ工房をヨロシク」
シゲルイはいかつい顔に人懐っこい笑みを浮かべた。




