仙人夢の中でダンジョンコアの異常を見る、ボス部屋に入る
将人は一人でこのダンジョンを彷徨っていた。モンスターと遭遇するが全く無反応で戦う事なく進む事が出来た。しばらくすると巨大の鉄の門を見つける。その門に触ると鉄の硬質的な感触がない。手がスルリとすり抜け、さらに前進すると体がすり抜ける。門の先は高さは通路と同じ五メートルぐらい、縦、横十メートルの正方形の広い空間だった。その中央には全身鎧で身を固めたスケルトンがいた。上層で戦ったスケルトンとは違い上等な白銀の鎧、長方形の下部が尖った盾を装備しており腰に長剣を差していた。兜だけはつけておらず、頭蓋骨が露出していた。
(こいつがスケルトンソルジャーなのか? 元は騎士階級の人間だったのだろうか)
将人はそのスケルトンは近づくが全く反応がなかった。鎧に触ってみるがすり抜けてしまう。
(俺が幽霊みたいで怖いな………しかしこれはどういう状況なんだろう)
将人は辺りを見回すとスケルトンソルジャーの背後に別の鉄門があるのに気が付き、そちらに向かった。鉄門をスルリとすり抜ける。その部屋には白色に輝く球体が空中に浮いていた。将人は直感的にこれがダンジョンコアだと思った。将人はそれをマジマジと見つめているとほんの微かであるが黒いシミのようなものが見えた。
(これは何だろう?)
将人はダンジョンコアの黒いシミに手を伸ばす。その時上空から自分を呼ぶ声が聞こえた。その声に意識を傾けるとその声に体を引っ張られ、ダンジョンコアから引き離される。そして意識が暗転した。
「………マサト! マサト!」
「マサト殿! マサト殿!」
将人は自分を呼ばれる声で目を覚ました。
「マサト、やっと起きた」
「お疲れのようですね。、マサト殿」
マサリアとアベルドが心配そうに言う。
「ああ、すまなかった。ちょっと妙な夢を見てな」
将人は生あくびをして背伸びをする。節々からコキコキという音がする。ふと見るとエミリアは食事の準備をしていた。
「夢って?」
「ああ、その夢ってのが………」
将人は夢の事を思い出しながらマサリアとアベルドに話した。
「ダンジョンコアに黒いシミね。でもそれって本当の事なの?」
「そうだよな、夢の事だし」
「長い間ダンジョンに入っている事によるストレスなのかもしれませんね………今日中にダンジョン攻略しましょう。それが出来なかった場合は転移石で脱出しましょう。マサト殿が心配です」
「それがいいかも」
「イヤイヤ、夢の話だしそこまで深刻に捉えないでくれ。ぎりぎりまで攻略しようよ」
「ダメよ!」
「ダメです!」
将人は二人に不定される。
「ウーン………分かった。二人とも心配していってくれてるんだしな」
方針が決まった所で食事が出来たとエミリアに呼ばれ食事をとる。ダンジョンの中で温かい食事をとれるのは非常にありがたかった。魔法で火をおこしたり水を補給出来る故であった。
食事が終わり、仮眠用の毛布などを片付け、武器と防具を装備し直し、階段を降り下層の探索に入った。しばらくダンジョンを歩いていると将人は既視感に襲われた。眼前がT字路になっており右に行くか左に行くか迷っていると将人は右に行く事を提案する。
「何で?」
「また夢の話になるんだがその時は右に行ったんだ」
「夢で見た事を信じるというのは………」
「とりあえず進んでみてはどうでしょうか、リアお嬢様。どのように進んでも損はないと思います」
「それもそうね。私がマッピングしてるから迷う事もないし、気楽に行こうか。マサト、ドンドン言っていいわよ」
エミリアの提案で将人のナビで進む事になった。ここは右、ここは左、直進と進んで行くと大きな鉄の門が見つかった。ここまでわずか二十分、戦闘も一回しか発生しておらず、体力、魔力ともに十分余裕があった。
「自分で行っといて何だが本当についちゃたよ。ボスの部屋」
将人が呆然とした声で呟く。
「マサト殿の夢というのは凄いですね。本当は魔法が使えるんでは?」
「イヤイヤ、俺、魔法使えんって」
「マサト様の夢が本当の事だとするならここには全身鎧のスケルトンがいるのですよね?」
将人は頷く。
「長剣と長方形、下部が尖っている長い盾を装備していた」
「戦う相手の事が分かっているのはこちらにとって有利ね。マサトとアベルドは先行してスケルトンソルジャーを牽制して。私たちはその間に魔法を発動させるから」
マサリアの作戦に同意する。アベルドは鉄の門を開ける前に剣に強化魔法をかける。
「門を開けたら私が先に入ります。その次にマサト殿、エミリア殿、マサリア殿が入って下さい。では、行きますよ」
アベルドが鉄の門を引いて門を開く。そこには将人の夢で見た通りの全身鎧のスケルトンがいた。将人が右、アベルドが左に回り込み攻撃を仕掛ける。その時、将人たちの脳に言葉が響く。その声に驚き動きが止まってしまった。
(ここまで来るとは大したものだ、冒険者! 貴様らの肉を食らい血を啜り我が体の一部としてくれよう。光栄に思うがいい!!)
次の瞬間スケルトンソルジャーの姿が消え、将人の目の前にいた。
(間合いを詰められた!)
(死ネ!!)
スケルトンソルジャーの声が頭に響き長剣が振り下ろされる。将人は咄嗟に右拳を腹部から半円を描くように右上に打ち上げ剣の腹を叩き剣の軌道を逸らした。『横拳』だった。将人は慌てて後方に下がり距離を取る。
(ほう、初撃は凌いたか。それでいい、そう簡単に壊れてくれるな。もっと我を楽しませろ)
スケルトンソルジャーの哄笑が頭に響いた。
(よく剣の腹に拳を当てられたな。凄く怖かった………ここって初心者用のダンジョンじゃないのか! ボスが強すぎる! 作ったやつ出てこい……て後ろにいるか、絶対壊してやる!)
将人は動揺からか心の中で最終目標を変更していた。
スケルトンソルジャーとの死闘が今まさに始まろうとしていた。




