仙人、『小周天』を行う、思わぬ覚醒。
焚火が消えないよう乾いた薪を放り込む。パキリという音と同時に火の勢いが強くなる。周囲に音が全くないため焚火の気が爆ぜる音がとても響いた。
「何もする事がなくてツラい………」
将人は独り言ちる。ズボンのポケットをまさぐりスマーフォンを取り出す。電源を入れて時間を見ると午前8時49分。
「向こうだと朝か………姉さんどうしてるかなあ、師匠はまあ死んでも死なない人だからいいか。受電出来ないからスマホももう使えなくなるし時間を測る方法考えた方がいいなあ。異世界でもスマホ使えるようにならんかねえ」
マサリアとエミリアが眠ってから一度スマホを取り出して時間を確認しており、6時間立ったのを確認した。スマホをポケットに入れ、二人が眠っている所まで歩く。
「エミさん、エミさん………」
エミリアに小声で呼びかけながら肩を叩く。
エミリアは薄目を開けて何度か周囲を見渡し、しばらくボンヤリしてようやく目を覚ました。
「………おはようございます、マサトさま」とマサリアを起こさないよう小声で話すエミリア。
「おはようございます、エミさん。すみませんが交代してもらっていいですか?」
「はい、分かりました。リアお嬢さまも起きてください」
マサリアの頬を軽く叩いて起こす。
「マサリアは寝かせといていいんじゃないの」
「冒険者になるならそんな甘えた事は言ってられません。こういう事には早めになれた方がいいと思うので………」
マサリアは身を起こし背伸びをし、欠伸する。
「女の子が大口開けるなよせめて隠してくれ」
「何見てんのよ、マサトのエッチ」
「リアお嬢さま、サマトさまもお疲れですので少しは休まないと………」
「それもそうね、ゴメンね将人」
「私たちが交代しますので休んで下さい。私が使った毛布ですがお使いください」
手渡された毛布を受け取ると僅かに暖かくいい匂いがした。それをマサリアにみられてしまい
「マサトのスケベ、ヘンターイ」
「リアお嬢さま、行きますよ」
引っ張られていった。
(仲いいな、二人とも)
将人はその場に腰を下ろし靴と靴下を脱ぎ裸足になる。ズボンのベルトも緩め服を緩める。この方がその場で横になるより体が回復する為である。
右股の上に左足を乗っけて座り、毛布を被りマサリアとエミリアから自分がこれから何をやるのか見えない様にする。
仙道の修行法には『小周天』と呼ばれる修行法がある。これはへそから指三つ分下にある『丹田』で『氣』を生成し、任脈(体の前面の正中線)、督脈(体の背部の正中線)に『氣』を通し体を一周させる修行法である。ただ一蹴させるだけではなく『氣』を特定のポイント(仙道ではで竅、ヨガではチャクラ)で止め、意識をかける事で強めていくのである。
将人は体を休めると同時に『氣』を強めるトレーニングを行い、何が起こっても対処できるよう備えるつもりなのである。
将人は仙道の呼吸法を行い、『丹田』に『氣』を集中すると不思議な事にほんの数秒で『氣』を感じる事が出来た。将人はこの『小周天』が苦手で『丹田』で『氣』を生成するのに時間がかかってしまうのだがそれが数秒で出来てしまった。『丹田』の『氣』を督脈から任脈に通す。通す際特定のポイントで『氣』を止め意識を集中して『氣』を強めていく。一周させ『小周天』は終わるなのだが今回は不思議な事が起こる。強まった『氣』が体全身に広がり体から漏れ始めたのである。漏れ始めた『氣』は将人を中心に半径5メートル程まで広がった。この状態は精神的にも肉体的にも気持ちがいいので将人はこの状態に身を任せる。
マサリアとエミリアは周囲の空気が突然変わった事に驚いていた。真横からぶち抜く様な圧倒的な何かがあらゆるものを吹き飛ばし空間をクリアにされたように感じられたのだ。
「リアお嬢さま………」
「エミ………これ、何なの?」
「マサト様を起こしましょう」
「わ、私も行く」
マサリアとエミリアは将人のもとに向かう。
「マサト様、起きてください」
二人に揺さぶられ、集中が解けてると同時に『氣』の放出が止まり周囲の変化が納まった。
「………どうしました、二人とも」
「あれ、元に戻ってる?」
「すみません、マサト様。どういえばいいのか分からないのですが………」
二人がどう説明するべきが悩んでいると
「俺、寝てもいいですか?」と将人
「ゴメンね、お休み将人」
横になりながら自分に起こった現象について考える。
(あれって『小周天』の次のトレーニング『全身周天』てやつだよな。いきなりなんで出来るようになってるんだ。『小周天』苦手で『氣』を一周させる事も出来なかったのに)
異世界に来た事により身体に何らかの変化が起こっているのではないか。落ち着いたら調べてみるべきかと考えていると唐突に睡魔が襲ってきてそのまま眠りについた。




