仙人VSダドリー、決着、エミリアの治療
ダドリーは『滅び』の力を凝縮した長剣を上段に構える。その長剣はあらゆるものを飲み込む無限の闇の顕現だった。それに対し将人は『三体式』の構えを取りながら『全身周天』を行い、『氣』を生成する。その姿はあらゆるものを無限に生み出す生命の顕現だった。この戦いは奇しくも創造と破壊、光と闇、静と動、相反するもの同士の戦いだった。
ダドリーが雄叫びを上げながら突進、将人の間合いに入り長剣を振り下ろす。ダドリーの長剣は将人の頭部に一直線に振り下ろされる。それに対し将人は回避行動はとらなかった、というか取れなかった。将人の行う『全身周天』には欠点がある。『全身周天』を行っている間は複雑な動きをする事が出来ない。やれば生成した『氣』が消えてしまう。『氣』が消失すれば『滅び』の力が凝縮した長剣を防ぐ事は出来ない。
この欠点をどう補うか?
将人はダドリーの長剣が迫る中思いもよらない行動をとった。一歩前進したのだ。剣にしろ拳にしろ最大の攻撃力を発揮する距離というものが存在する。それがずれてしまえば威力が半減する。次に両手を頭上でクロスし長剣を防ぐ。ガントレットが長剣を防御し『氣』が『滅び』の力を防御する。ダドリーは力を込め将人を押しつぶそうとする。押しつぶされようとした時不意に力が弱まる。この戦闘時においてダドリーが将人ではなく将人の後方を見ていた。そしてポツリとつぶやく。
「ユニス………」
ダドリーに何が起こったのか分からないが将人はこれをチャンスと見る。両拳を開きそのまま両腕を大きく外へ回して開く。両手に挟まれた長剣の刀身は『氣』と『滅び』の力の衝突により弱まっており容易に折る事が出来た。支えを無くし前につんのめるダドリー。将人の胸の高さにダドリーの頭が来る。将人の両掌が胸の前で両掌を揃え右足を踏み込みながら前方を打った。両掌の一撃がダドリーの頭部に直撃する。巨体が吹き飛んだ。。倒れたまま動かないダドリーに対し将人は再び『三体式』の構えを取り警戒する。勝ったと思た瞬間が一番危うい、これは将人の武術の師匠が口を酸っぱくして言われた言葉であり、将人は相手が倒れていたとしてもすぐに気を抜かないようにしていた。一分ほど警戒し、ようやく構えを解きその場にへたり込む。
「勝てたあ………」
疲労感が将人の全身を覆い意識をうまく保つ事が出来ない。眠ってしまいそうになるがまだそれは出来ない。『滅び』の力はダドリーが長剣の刀身にすべて集めており、それは『氣』の力で打ち消した。外のゾンビは活動不可能となっているだろうが村を覆っている魔法の壁はまだ消えていない。それを解かないと結局は外に出れないのだ。それにエミリアが依然危ない状態なのだ。気力を奮い立たせ、みんなのもとに向かおうとふらつく体を押して移動する。外ではファテマとマサリアがエミリアに治癒魔法を行っていた。だがエミリアの血が止まっていない。顔色も土気色になっているし息も絶え絶えだった。このままでは………。
「マサト君、大丈夫かい?」
将人に気が付いたファテマが駆け寄ろうとするが将人が手で止め歩み寄る。
「治癒魔法を続けてください。エミさんは大丈夫ですか?」
「マサト………どうしよう、魔法が効かない、血が止まらない。リア死んじゃうよ、イヤだよ、そんなのイヤだよ」
マサリアが将人の胸に飛び込み、声を殺して泣き始める。将人はマサリアの頭を優しくなでて引き離す。
「俺なら何とかできるかもしれない。少し任せてもらおうか」
治癒魔法を続けるファテマに将人が訪ねる。
「治癒魔法は効いていないんですか?」
「ああ、『滅び』の力に阻害されて魔法をはじかれてるみたいなんだ」
「だとすると『滅び』の力を消毒しないと駄目か」
将人は『氣』を全身に巡らせ『全身周天』を行う。ダドリーとの戦闘の影響が出ているのか『氣』の生成速度が遅い。いつもより時間はかかったが余剰の『氣』を生成しエミリアに流し込む。エミリアの傷口から黒いモヤのようなものが浮かびあがる。エミリアに残留していた『滅び』の力だ。将人は『氣』を込めた両手で『滅び』の力を挟み込みつぶした。
「これで魔法が効くと思います。やってみてください」
ファテマとエミリアが同時に治癒魔法を行う。エミリアの傷がみるみる塞がっていく。
「やった、傷が塞がった」
「エミ、助かったの、マサト?」
「魔法を行ったリアが一番わかるだろ?」
エミリアの呼吸は先ほどに比べれば落ち着いており顔色も目に見えて良くなっている。マサリアがエミリアの手を取ってほろほろと泣いていた。
「これで、一件落着?」
「残念ながらまだだね。まだ魔法の結界が解けてない」
ファテマのセリフに体の力が抜けうつぶせに倒れる将人。
「そうだった………もうダメ、指一本動かせん。このまま休ませてもらいます」
体に巡る疲労感に身を任し意識を手放した。




