仙人、ラクレール村へ向かう道中、VSコブリン
ラシェントの街の北門を一台のほろ馬車が出る。将人たちを乗せた馬車である。乗車人数は六人、将人、マサリア、エミリア、ファテマ、パウラ、アベルドの6人である。将人とアベルドは業者席、あとの四人は荷台車の方に乗っている。女性の中に男が一人というのは非常にいづらいものがあり将人は早々に御者席へ避難していた。将人は馬を操る事が出来ず御者席に来てもすることがなく、それとなくアベルトに話しかけていた。
「意外と揺れないもんだな」
「ラシェント周辺は道が舗装されていますから。ラシェントから離れれば揺れがひどくなりますよ。マサト殿は車酔いは大丈夫ですか?」
「体験してみない何とも………考えてみれば馬車に乗る事自体初体験だから」
「マサト殿はどこの出身ですか。こう言っては失礼ですが馬車に乗ったことがないというのは………凄い田舎とか」
「他国と交流がない小さな島国だから田舎といえば田舎かもな。この話は保留にして。ところでアベルド、どうして俺たちがラクレール村に行く事知ったの?」
「昨日、ファテマ殿とマサリア殿が話しているのを聞きました。二人は誘ったのにどうして私は誘ってくれなかったのですか!?」
アベルドが詰め寄ってくる。
「顔が近い、離れて!! でもって前見て!!、前!!」
その途端馬車が大きく揺れる。急な揺れに荷台者の方で悲鳴が上がる。道が舗装されているとはいえ完ぺきではないらしい。段差の上を通り過ぎた為の揺れだった。
「アベルド、俺も暇だし話しながら道中行くのはいいんだが前はちゃんと見てて、怖いから」
「気を付けます、マサト殿。で話の続きですがお二人の話が終わった後、ファテマ殿に頼み込んで許可を取りました」
アベルドはウィンクしてサムスアップする。歯がきらりと光る。
(異世界共通の表現なのか、サムズアップって?)
「それに私が加わったのはマサト殿にとってもプラスになるのですよ。女の中に男が一人というのは思ったより辛い状況なのですよ。私も昔そういう状況になって時があるのですが………」
話が長いため割愛となるが、アベルドの話が終わると将人は同情しきりで、自然とアベルトの肩を二回叩き「苦労したんだな………」と慰めていた。話を変え、戦闘談議に花を咲かせていると川のせせらぎが聞こえてくる。ラシェントの街をでて数時間は経っており、腹の減り具合から昼食の時間であると判断し休憩を取る事になった。馬を馬車から離し、首に縄をかけ近くの木に縛り逃げれないようにする。馬車からナベや食器、食材を出し女性陣が料理を始める。将人とアベルトは手伝おうとするが断られ、近くて訓練をして時間をつぶす事にした。
川から少し離れた所にある林の中で将人とアベルドは模擬戦闘をやろうと考えていた。だから将人は昨日購入したクロースアーマーとガントレットを装備、アベルトは愛用の長剣とスケイル・アーマー(鱗状鎧)を装備していた。これが功を奏したともいえる。林に入ると生き物の気配がし、様子をうかがうとファンタジーの代名詞とも言えるモンスター、コブリンがいた。数にして十匹。一匹一匹は大したこののない相手だが徒党を組み人を襲う。道具や武器を扱う知恵もあり、数が揃えば厄介な相手だった。
「しばらく様子を見よう」
小声でアベルトに喋るが聞こえていないのかアベルトが飛び出してしまう。まず、アベルトが飛び込みざまコブリンの首を刈り取る。これで残りは九匹。将人はアベルトの後ろに入りお互いの背後を守る。
「アベルド、俺は様子を見ろといったのにどうして突っ込む!!」
「大丈夫ですよ、マサト殿。こんな雑魚、二人でやれば楽勝です」
「アベルト、あとで説教だ!! そっちは何匹いる?」
「こっちは五匹です」
「こっちは四匹だ。お互い片付いたら援護に回るって事でいくよ」
「分かりました」
お互いの背後にコブリンが来ない事を信じ、将人は前方の敵に集中する。突進してきたコブリンは右手に錆びついた短刀を握っていた。それで突いてきた。将人は『三体式』の構えをとり、伸ばしていた左腕でコブリンの手を跳ね上げ、がら空きになった胴に右拳を叩きこむ。コブリンは物のように吹っ飛び後方にいたコブリンを一匹巻き込む。残り三匹のコブリンは警戒し、少しずつにじり寄ってくる。間合いに入ったと同時に二匹が飛び掛かり一匹が突進してきた。三匹の同時攻撃に対し将人がとった行動は思いもよらないものだった。将人は左前脚を前方に伸ばしそのまま体をしゃがむようにように低くしたのだ。右掌を前方下方へ叩きつけるように下ろし突進してきたゴブリンを迎撃した。うつぶせに倒れ動かなくなった。飛び掛かった二匹のコブリンの後方に回る形になった将人は『三体式』の構えから中段付き『崩拳』をコブリンの後頭部に放つ。手加減なしの『崩券』はコブリンを絶命させるのに十分な一撃だった。残り一匹自棄になったのか短剣を振り回しながら突進してくる。油断せず『崩拳』を放ち絶命させる。アベルドの方を見るとそちらも戦闘を終わらせていた。
「アベルト、大丈夫か?」
「こっちは大丈夫です。マサト殿は?」
「ああ、俺も大丈夫だ」
「しかし、マサト殿はお強い。武器も持たずにこの実力、頼りになります」
将人を称賛するアベルト。それに対する将人はアベルトの両頬を掴み左右に引っ張る。
「アベルト、君はどうしてなんにでも突っ掛かっていくんだ!! そういうのを猪突猛進というんだ。最初に俺と会った時もそうやって突っ掛かって負けたよな。状況判断が出来るようにならないと痛い目見るよ。今だってもしかしたら戦わなくてもよかったかもしれないんだからな、わかったか!?」
「分かりました、ゴメンナサイ、許してください」
アベルトの言葉を聞いて将人は手を離す。両頬をさするアベルドを見ながら将人は溜め息をつく。
「戻ろうか。もうそろそろ昼食が出来てるだろうから」
将人とアベルトは戻り、コブリンと戦闘したことを話すと今度はファテマたちに説教される。
「そういう時は二人で対処せず、私達を呼ぶように」




