仙人、『魔』に憑依された時の事を聞く、組織の力を得る
将人は今日もギルドマスターの執務室に来ていた。昨日と違うのはファテマとパウラがいる事、そしてエドガルドが深々と頭を下げている事だった。
「すまなかった、本当にすまなかった!!」
「そうだよ、ハイドおじさん。マサト君にはようく頭を下げて謝らないと駄目だよ。私たちの事になるとおじさん少しおかしいよ。私たちはもう大人なんだから少しは信じてよ、悪い男には引っかからないから」
「私が凄んだくらいで寄り付かなくなる男なんて信用ならん」
「おじさん、ギルドマスターでしょ。そんな人に凄まれたら普通近寄ってこないって」
二人の言い争いを将人は呆れ顔で見ていた。
(何だろう。俺ファンタジー世界にいるはずなのにこのホームドラマみたいな展開は………)
パウラはというとこういう言い争いは割かししょっちゅうなのだろう。平然とお茶をすすり菓子をほおばっている。二人を止めようという気はないらしい。自分が何とかするしかないかと将人は溜め息をつく。
「あのう………お二人ともいいですか?」
そっと手を上げて二人の言い争いに割り込む将人。二人に睨まれ引いてしまうが、それでは話が進まないと気力を振り絞って言葉を続ける。
「今日は、ファテマさんとパウラちゃんに、お聞きしたい事がですね、ありまして、その、もうそろそろよろしいでしょうか」
しどろもどろに話す将人の言葉に二人は矛を下ろす。緊張で額に浮いた汗をぬぐいながら将人は言葉を続ける。
「今日はファテマさんとパウラちゃんが受けた討伐依頼について聞きたいと思いまして………誰からの依頼でどういうモンスターを倒したのか? そのモンスターは他のモンスターと違う特徴がなかったか? そういった細かい所を教えてほしいと思いまして」
「そうか、マサト君は独自に『魔』について調べていたんだね。私の勘違いだった、すまなかった。その件ならこっちでも調べていたからちょうどいい、これから報告するよ」
そういってエドガルドは前日から減っていない書類の山をあさり一枚の書類を取り出し読み上げる。
「依頼人はレジェス・マクナイト。ラクレール村の領主だ。討伐対象モンスターはエレメントハウンドという二又の尾をもつ狼型のモンスターで殺傷能力もさる事ながら魔法も使ってくる厄介なモンスターだ。それが二匹もいて人を襲い、十数名の死傷者が出ている為、討伐対象となった。ファテマ、パウラ、他数名の冒険者で合同でパーティーを組み討伐する事となった」
「ハイドおじさん、そこからは実際に討伐した私たちが」
エドガルドに次いでファテマが話を続ける。
「ラクレール村から馬で二時間ほど移動したところに岩山があってそこに出来た洞窟がエレメントハウンドの巣になってた。エレメンタルハウンドは夜行性の為、朝を待って攻撃を仕掛けた。その攻撃で二匹のエレメンタルハウンドを倒す事が出来たけど問題はその後だったの」
ファテマはここでお茶を飲み、一息ついてから話を続ける。
「洞窟の奥を調査したしたらそこにエレメントハウンドの子供がいたわ。ほおっておけばいずれ人に害をなう存在になる野間間違いない。だからその場で殺した。そして外に出た時、倒した筈のエレメントハウンドの一匹が起き上がっていて私たちを襲ってきた。魔法の他にもあの黒い触手の様なものを体から出して攻撃してきた。あの時、パウラは魔法や職種の攻撃を一身に受けてくれたから私たちは攻撃に専念する事が出来た。それでエレメントハウンドを倒す事が出来た。それで終わったと思ったら後はマサト君と出会った時のあの状況になってた。………マサト君、何度も言うけどあの時は本当にありがとう。マサト君のお陰でパウラは助かった。あのエレメントハウンドみたいにパウラを殺す事になるかと思ったら………」
ファテマの目の端に涙が浮かぶ
「お姉ちゃん………」
パウラがファテマを優しく抱き締めていた。二人は声を押し殺して泣いていた。
「マサト君、私はもう一度君に頭を下げないといけないようだ。ファテマとパウラを助けてくれて本当にありがとう。君がいなかったら二人はこうしていなかっただろうからな」
「いいですから、もう十分お礼は言われたので。それより俺、そのラクレール村に行ってみようと思います」
「それは何故だい?」
「そのエレメントハウンドがどこで『魔』に憑依されてのか気になります。『魔』の発生源があるのならそれをどうにかしないと大変な事になります」
(対処できるのが俺だけだとすると、この先この街を離れる事が出来なくなるからな………)
エドガルドが腕を組んで考え込む。
「よし、分かった。ギルドから君に依頼を出す。『魔』に関する調査及び討伐を。この件に関してギルドマスターエドガルド・ハイドの名に懸けて協力する事を約束する。取り合えず、ラクレール村までの移動手段、費用、人員すべてこちらで出そう。他に必要な物があったら言いたまえ」
「そこまで大げさにしなくても」
「こういう事は組織の力を利用した方がいい。個人の力では限界があるからな、利用できるものは遠慮なく利用しておきたまえ」
そう言ってエドガルドは茶目っ気たっぷりに笑った。




