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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第二章 仙人『滅び』と邂逅する
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仙人、マサリアの才能を知る、欠点の指摘と解決

ファテマ、パウラ、アベルトと別れ、宿に戻ってきた将人とマサリア、エミリア。宿が提携している公衆浴場でひと汗流しさっぱりしてから部屋に戻る。しばらくするとドアがノックされる。


「マサト、まだ起きてる?」


ドアを開けるとそこにはマサリア一人だけしかいなかった。いつもエミリアと一緒にいるイメージがあった為珍しいと思った。


「エミさんは?」


「今日はマサトに相談したかったから部屋で待ってもらっている」


部屋の明かりはランプ一つで取っている為マサリアの表情はあまりはっきり見えないが雰囲気を読み取る限りかなり思い悩んでいるようだった。


(いったいどうしたんだ、マサリア。昨日まではそんな感じはなかった………とすると今日の訓練で何かあったのか? 異世界とはいえ女の子の相談に答える事が出来るのか? そんなに人生経験豊富というわけでもないんだが………流れに身を任せてみるか。『捨己従人しゃきじゅうじん』ってな)


『捨己従人』とは太極拳の真骨頂とも言える『化勁』の要領を表した言葉で己を捨てて敵の攻撃に逆らわず、流れに任せながら勝利を掴むという意味である。今は自分の意見を挟ます、言いたいことを言わせ流れに身を任せて解決に導こうという腹つもりだった。


マサリアを部屋に招き入れドアを閉めようした時視界の隅にエミリアの姿があった。こちらを無表情に見つめていると思ったら右手で何かを握りつぶす動作をする。思わず小さな悲鳴を上げる。


(エミリアさん、いい加減に信用しようよ。変な事しないってば!!)


「マサト、どうしたの?」


「何でもない何でもない、何かあったのはリアの方じゃないか。今日はどうした?」


エミリアは逡巡して俯いてしまう。


「ゆっくり落ち着いて話せばいいから、深呼吸でもしてみるか?」


「ウウン、いい。話す前にマサトの………ケイイケンの技何か見せてくれない」


将人はそういわれ頭の中に?マークを浮かべながらも『三体式』の構えを取りそこから『五行拳』を行う。


「これでいいか?」


「うん、アリガトウ。じゃあ見ててね」


マサリアがそういうと『三体式』の構えを取り『五行拳』を行ったのだ。『形意拳』の基本技である『五行拳』はそれほど難しい動作はない。だが、一回見ただけで出来てしまうほど簡単でもない。それに………。

驚愕の表情を浮かべる将人にマサリアは聞いてきた。


「どう、マサト、ケイイケンの技間違ってない」


「間違ってないけど何かおかしかった………芯が籠ってないというか一つ一つの動作がフニャフニャしてた。動きをまねしただけというか………」


「本物が見ると分かっちゃうか」


マサリアは溜め息を付きとつとつと話し始める。マサリアは一度見た事は完璧に覚え、再現する事が出来るらしい。だが、それは本物には遠く及ばない偽物でしかなかった。

今日の訓練中にちょっとした諍いがありマサリアがアベルドと試合をする事になる。アベルドの剣術を模倣しかなり粘る事が出来たのだが、アベルドには人の技術をかすめ取る盗人のように見えてしまい、かなり手厳しい事を言われたらしい。アベルドはすぐに謝りマサリアも気にしてないと言ったが頭から離れず悩んでいるとの事だった。


「私、魔力も体力も人並みだし、一度見た事覚えられてもそれだけだし、冒険者としてやっていけるのかな。冒険者がダメだったら私これからどうすれば………」


将人は腕を組んで考える。マサリアがかなり悩んでいる事がうかがえる。言葉を選ばないとマサリアを傷つける事になりかねない。


「………頭に体が追い付いてない」


頭が真っ白になってるのにスルッと言葉が出てきた。何故そんな言葉が浮かんだのか驚きつつもそれがきっかけでどんどん言葉が出てくる。


「リアは今こういう状態になってるんだよ」


将人は両足をそろえ、上半身を前に傾ける。当然バランスを崩し前に倒れるが腕立て伏せの体勢になって床への衝突を防ぐ。立ち上がるとマサリアに向き直り説明する。


「リアは頭だけが先に進んで体が追い付いてないからバランス崩してるんだよ。体が追い付くまで待った方がいいと思う。俺が学んだ武術には『一胆二力三功夫いちたんにりきさんくんふう』という言葉がある。胆は精神力、度胸、力は技術を行使するのに必要な体力、この二つがあって始めて功夫、要するに技術を学ぶ事が出来る。マサリアはこの一と二を抜かしていきなり三をやってるからおかしくなってるんだと思う。しばらくは訓練重視で一と二を鍛えればバランスが取れるようになると思う。一と二が出来るようになれば模倣できる能力というのはかなり恐ろしい能力になると思うぞ」


とここまで言ってマサリアを見ると様子がおかしい。俯いて体が小刻みに震えていたかと思うと突然抱き着いてきた。


「………スゴイ、スゴイよ!! マサト!! 私の悩んでた事、すぐに解決してくれた!!」


(嬉しいのは分かるが抱き着いてくるのは女の子としてどうよ。俺、男として見られてないんじゃないか? 抱き着いているのはオオカミだという事を分からせてやる)


将人は覚悟を決めてマサリアを抱き締めようとするが脳裏にエミリアが浮かびある所をもぐ姿が見えてしまい一気にクールダウンし、マサリアを引きはがす。


「悩みが解決したところでお休みになられてはどうですか、お嬢さま」


「うん、そうするよ、本当にアリガトウ、マサト!! また悩みがあったら相談するね、じゃあお休み」


「まずはエミさんに相談しなよ。今回はともかく女の子の相談何てそうそう答えられんよ。今日は色々ありすぎ、最後の最後でこうこられてもうヘトヘトや。寝る、絶対寝る」


唯一の光源であるランプを消すと部屋の中は真っ暗になる。こうなると寝る以外する事が無くなってしまう。さて、明日も何かの依頼を受けるかどうするかと考えているうちに睡魔に襲われ深い眠りについた。








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