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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第一章 仙人、異世界にて冒険者となる
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仙人VS試験官、決着

ロバートは中段の構え、将人は形意拳の『三体式』の構えで対峙する。

お互いの放つ闘気が絡み合い、混ざり合い、膨れ上がっていく。マサリアとエミリアは魔力とは違う不思議な力が二人を中心に広がっていくのを肌で感じ身震いしていた。止めるべきか声をかけようとするがうまく声が出なかった。


「あなたは剣を使わないのですか? 使うのなら待ってるから取ってきなさい」とロバート。


「俺は武器は使わない無手の技を修練しているのでお構いなく」


「そうですか。では、試験を始めましょう。まずはそちらから攻撃して下さい」


「そうですか………では」


将人は一直線に動き間合いを詰め、右足で踏み込むと同時に縦拳で突く。『五行拳』の一つ『崩拳』であった。ロバートは木剣の刀身で防ぐ。ミシリッと嫌な感触を感じおられる前に後方へ逃れる。将人は逃さじと攻撃を畳み掛ける。『劈拳』、『鑽拳』、『炮拳』、『横拳』―――『五行拳』を使い攻撃を畳み掛けるが全ていなされ防がれる。

将人は距離を取り再び三体式の構えを取り呼吸を整えながら考える。


(ロバートさん、『形意拳』初見の筈だよな。こっちの攻撃どうして全部防げるんだ。上級冒険者とはいえおかしくないか? もしかして『形意拳』の使い手と戦ったことがあるのか………いや違うだろう。とすると何らかの魔法か?)


一方ロバートは「あなたの技術はとても素晴らしい。東の大陸で似たような体術を使う相手と戦った事がありますが、そこでもあなたほどの使い手はいませんでした。魔力による身体強化もせず技術だけで元とはいえ上級冒険者と戦えるなんて称賛に値します!!」と褒め称えていた。


「褒めていただき恐悦至極。しかしそうなると油断を誘えなくなるな。厄介な敵がもっと厄介になってしまう。どうする?」


「あなたの体術、見事ですがそれと試験の結果は別問題です。遠慮なく負けてください」


ロバートはすごくいい笑顔でそんな事をのたまう。そして今度はロバートが動いた。3メートルほどあった距離を僅か一歩で縮めてきた。足元に魔力を集中、解き放つ事により突進力を得ているようだ。驚きつつも将人の体は反射的に動く左足を左斜めに一歩踏み込み突進を避ける。両手をクロスさせ両腕を円を描くように回転させロバートの背中を打とうとするが打撃を与える事が出来なかった。将人の頭部に木剣の打撃が来て動きが止まってしまったのだ。さらに体当たりを食らい体制を崩す。


打撃により眩暈を起こしつつも何で打撃を食らったのかを確認するとロバートは冗談の構えを取っていた。あの構えなら木剣は後方に来る。木剣を振り上げる事により後方に攻撃するなんて普通は考えない、戦闘の経験値が違いすぎると将人は舌を巻いた。


「さあ、どうします。ここでやめる事も出来ますが………」


「もう少し挑戦させて下さい」


頭を振りながら立ち上がり『三体式』の構えを取る将人。ロバートは再び距離を取り足元に魔力を集中、解き放ち突進。”手負いの相手が一番怖い”、経験上その事を悟っているロバートは油断せず得意な魔法で勝負をつけに来た。

ロバートの突進に対し将人は左足を一歩踏み出す。それによりロバートは将人との距離を見誤ってしまう。反応が遅れ、木剣を腕の力だけで振ってしまい、力も早さも全く籠っていなかった。将人は両拳を突き上げるようにしてロバートの胸を打ち、更に両拳を翻しつつ掌にし両掌で突きながら右足を半歩踏み出す。ロバートは後方へ吹っ飛び地面に倒れ伏す。

ロバートの突進力、将人の一歩前進、両拳での突き、更に右足の半歩踏み込み、両掌での突き。それらの力が融合した打撃はロバートを行動不能にするには十分だった。


「アチャー、やり過ぎたロバートさん大丈夫?」


咳ごみながらもゆっくりと上半身を起こすロバート。それを見て驚く将人。『形意拳』の『十二形拳』の一つ『虎形拳』を食らってもう動けるのかと。

ロバートが呪文を唱えると全身が淡い光に包まれる。光が消えると深呼吸をし始め、呼吸を整える立ち上がった。今のはどうやら治癒魔法だったらしい。


「大丈夫です。しかし参りました。私の魔法剣術に対して逃げずに前進するなんて。普通は避けるか魔法で発動を阻止するかのどちらかですから予想外でした」


「『虎形拳』を食らってすぐに起き上がる事が出来るロバートさんの方が予想外ですよ。それよりこれで試験は終了ですよね?」


「モチロン、文句なしの合格です。おめでとうございます」


「ありがとうございました」


将人はロバートに一礼する。


―――日下部将人、下級冒険者3級合格。








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