序章
少年にめがけて放たれた無数の攻撃、それを掻い潜り『敵』の間合いに入る。
丹田に溜めた『氣』を右足の踏み込みで持ち上げ、左足の引き寄せその際に強く踏み込み、腰の回転で『氣』を肩まで打ち上げ、右腕を伸ばす事で『氣』を打ち出し縦拳で爆発させる。『氣』の衝撃は『敵』の中心部まで伝わり『核』を破壊する。
『敵』は悲鳴を上げた後、腐った木材のように変質し崩れ落ちる。崩壊を確認し構えを解きため息をついた。
「ここはどこなんだろうな………?」
途方に暮れた口調で調子で少年は空を見上げてみるが、空は鬱蒼と茂る森の木々に阻まれ僅かしか見通せない。それでも見た限りではこちらも空は青いことが確認できてほっとする。これが緑色だったりしたら精神的に参ってしまうだろう。
?
「いきなりあんな怪物が現れるこの状況、鏡の奴は無事なんだろうか………?」
腕を組み呻きながら周囲を見回すが友人の姿はない。
思い返せば友人———鏡翠明は目的地をイメージして転移魔術を行っている。目的地には着けているだろうと思う。自分に比べれば遥かにマシだろう。自分はここに来る予定ではなかったのだから。
「助太刀は無理っぽいな、物語の主人公はお前だ頑張れよ、鏡翠明」
苦笑いで僅かに見える空に向かってぼやいた。
こんな見知らぬ場所で独り言を呟く少年の名は日下部将人。
中国武術の形意拳の達人、仙道をやっており、あだ名は仙人、でも15才である。
異世界に帰った幼なじみを探しに行こうとする友人の見送りに来たら巻き込まれ、異世界転移してしまった物語の本筋からずれてしまった微妙な立場で首を突っ込んでしまった主人公である