04 散歩と図書館
執筆がギリギリ……。
むぅ。
王都グーベラッハ。
外周は平民区画であり、人も多く賑わっている。主に北西部が冒険者向けに、南東部が商人向けの店が多い。
食べ物に装備品、魔術道具に宿屋と、基本的な店は一通り揃っていて、王都に無い店はないといった感じだ。
「やっぱワーズヴェシンよりも、店の数も多いし、品揃えも豊富だなぁ」
現在は王都の散策中である。
宿屋は期待よりも立派な部屋だった。フローリングの床にベッドが二つ、ちょっとしたクローゼットもあり、銀貨一枚(一万円)で泊まっていいのかっていうレベルだった。
あまり経験はないが、日本のホテルであのレベルなら、もっとお金は取られるだろう。
食事も美味しかった。
さすがにフレンチフルコースとかではなかったが、スープにサラダに肉にパンと、ボリュームも内容も味も十分だった。
……あれ、品目はこれまでと似てるような……?
でも、あの雰囲気というか、さすがにそれは今までと違ったし、味も良かった。
今までのは、家族でやってる小料理屋とか牛丼とのファストフードって感じだった。
だが、あのホテルの料理は違う。落ち着いたファミレスか? 例えが難しいな。だってそういういい雰囲気の店に行った事はないんだから、仕方ない。まだ高校卒業したばかりの未成年だからな。
「そうね。武器に防具に服に食料……。お店も多いわね」
「この辺りは冒険者向けの服が多いのかな」
まずは宿付近から散歩をして、冒険者ギルドの方まで足を伸ばしていた。宿屋に来るときに通った区画だが、別の道を通ったり、じっくり見て回ることで、さっき見れなかった店も多く発見出来た。
そういえば装備は新調したほうがいいのだろうか。新しい街に来たら、装備を買い換えるのはRPGでよくあることだ。新しい街は、いい装備が売っている事が多い。その分値段も高いけど、その辺は考えて買い換えたり、我慢したりというのがRPGだ。
だが実際はどうだろうか。新しい街イコールいい装備という訳ではない。もちろんここは王都なんだし、数も質も良い。
なんでゲームって、辺境の村とかに、店売り最強の装備とかがあるんだろう……。
……さて。装備を買い換えるか否かだったな。まぁ必須ではないし、その辺は追々考えよう。今は散歩というか、王都を見て回るのが目的だしな。
「この辺になると、店の雰囲気が変わるわね」
「そうだな。少し上品な感じか?」
そのまま散策を続け、南門付近に来た所で、店の様子が変わっていくのが見て取れた。
西門付近は、冒険者向けで、実用性だったり装備品の店が多かったが、この辺りは、少し上品だったり見た目重視な服や装飾品といった店が増えているように思える。
商人とか、住民向けの店が多いのかもしれない。あまり冒険者らしき人も見かけないし。
それにしても、街が綺麗なのは驚きだ。ゴミが落ちている時もあるけど、基本綺麗だし、汚れもない。誰かが掃除でもしているんだろうか。日本でも、一応は綺麗だけど、ちょっと良く見るとゴミがよく落ちていたりした。それよりも綺麗な道だ。
さらに、ここまでだけど、所謂スラム街みたいなものがない。階級制度があって、さらにそれが激しそうな王都だというのに、そういう人達が見当たらない。
まぁ、俺みたいなのに簡単に見つかるような事でもないのかもしれないけど、立派な街だな。
……それにしても。こうしてマリアと二人で街を歩いていると、まるでデートみたいではないだろうか。
ワーズヴェシンでも一緒に歩いたことはあるけど、あの街は冒険者の街って感じだったしな。王都みたいに、落ち着いた雰囲気が強い街ではなかった。
だがここは王都だ。日本で言えば……東京か? 東京も広いから一概には言えないけど、デート向きな場所も多いだろう。
王都もデートコースとかあるのだろうか……。今歩いているコースは、そうなのかな?
「それにしても広いわね。……アキ? どうしたの、真剣な顔をして」
「ん、いや? なんでもないぞ?」
「そう? ほら、他も見ましょうよ」
「あぁ」
ふぅ。なんだか意識してしまった。マリアは俺の仲間だ。そりゃ、仲良くなれたら嬉しいけど、仲間なんだ。うん。
そんな感じで歩いていたら、さらに落ち着いた雰囲気の所に来てしまった。
えぇと、ここは……。さっき東門を過ぎたくらいか。南門付近よりも、さらに格が上がっているように見える。
おや、あれは……。
「あれが貴族区画への門か……」
警備をしている兵士と、大きな門が視界に入ってきた。
これまでなかったが、どうやら貴族区画へはここから行けるようだ。
無論、俺達は行くことが出来ない。見てみたいけど、入れないのでは仕方ない。
貴族区画はもっと豪華なんだろうな。渋谷とか新宿のような、栄えているけどごちゃごちゃしている感じではなく、きっと京都とか厳かな感じの作りなのだろう。
貴族区画への門があるから、この辺りは落ち着いた雰囲気なのだろうか。少し高級そうな店も見えるし、平民区画の中では高級エリアになるのだろう。
西側が冒険者向けで、南東が商人、北東がお金持ち向けのエリアという感じだろう。
外周をほぼ一周してきた訳だが、目の前に建物が見えてきた。普通の店ではないようだ。何より、店にしては大きいし、まるで冒険者ギルドのような建物だ。
その建物には看板があったので、何の建物か分かった。
「図書館?」
「そうみたいね。さすが王都ね」
本は高価な物だと思っていたし、実際、これまで買ったり見てきたのも高かった。
だから図書館という、いわば宝の山とも思える施設があることに驚いたと共に、興味があった。
俺は、この世界の事を何も知らない。王都の事すら、今日一日歩いた程度の情報しかない。王都にはダンジョンもあるし。何か情報を集めるのに、図書館は向いている。後で時間を作ってみてみよう。
今は、ほら。デートだしな? でも図書館デートというのも、学生らしいといえばらしいのか?
「入ってみる?」
図書館が気になっている俺に気付いたのか、マリアが提案をしてきたが、今日はもう疲れたし、時間もない。
ぐるっとじっくり回るのに、一日使ってしまった。
「今日は疲れたし、また今度にするよ。宿屋に戻ろうぜ」
「そう? じゃあそうしましょう。ワタシも疲れたわ」
昼はなんだかんだで歩き食いをしてしまったので、宿屋で落ち着いた食事を取って、満足の一日となった。
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