3ページ「英才教育」
啓示の儀を受けてから三日が経った。
俺には魔術の才能と少しだけ剣術の才能があるらしい。
それを聞いた両親は翌日から俺に魔術と剣術を教えてくれる事になった。つまりお稽古だ。
1日ごとに、父が剣術、昼は母が魔術を交代ずつ教えてくれる。
そして本日、朝日が昇りきっていない家の庭で、俺は木剣を振っている。
素振りというやつだ。
ちなみに父は隣でこれ振れるのか?ってサイズの大剣を振っている。
「ヴァル、素振りの途中だが剣術の流派について素振りしながら教えてあげよう」
「お願いしま、、おっととと。ブレちゃうな」
俺も全力で木剣を振ってはいるが、如何せん筋力が足りない。揺れ揺れブレブレ剣術だ。
それもそうだよ、まだ4歳だよ、英才教育すぎない?
とも思ったが、一般的に4-6歳の間から自分の受けた才能の特訓が始まるらしい。
まぁ翔の世界とは違いすぎるし、当然か。
「剣を振る時は基本的に腕じゃなくて、腰と足を意識するといいぞ。ドンと構えて、ギュンと締める感じだ。」
パパは感覚型だと思う。説明が曖昧すぎるが、ただ理解できないほどではない。
腰と足か。そういえば翔の記憶にもこんな事あったな。
空手だ。空手習っている時、足に体重を乗せる方法があったけど、どんなだっけ。
確か一旦少し背伸びをし、その後かかとを落とす。みたいなやつだったかな。
剣術は踏み込む動作があるし、少しかかとに意識をおいてみるか。
「こうですか?パパ」
「おー、上手だな。さっきよりも良い振りだ。これは俺の血だな」
その後父は素振りをしながら流派について説明してくれた。
剣術の流派には5つある。
1つ目に、騎士に最も多い流派で防御重視の王剣流。
元々王族や貴族を護衛するために出来た剣術で、守ることに特化している。
相手の攻撃を受け止め、隙をついて反撃するカウンター技や自ら攻める技もある。
防御と攻撃のバランスが良く、扱いやすい剣術のため騎士の他にも多くの冒険者などにも普及している。
2つ目に五感と剣が一つになるような、獣の如き剣の獣牙流。
聴覚、嗅覚、視覚、触覚、味覚という五感を研ぎ澄まし、感じ取ったそれらを剣に乗せ、獣のように戦う。その特性から獣族に多く、感覚の優れた獣族の剣士が使えば、他の流派の剣士では対応が難しい。
3つ目に巨大な剣や斧を使い、パワーある技が多い剛剣流。
細かな技術や小細工よりも、一撃一撃の威力を重視している。
その攻撃は相手の防御ごと相手を吹き飛ばし、相手を吹き飛ばす技が多く存在する。
その性質上、全ての人が使用できる剣術ではなく、身体能力に秀でるものや体の大きい者に向いているため、人を選んでしまう。
4つ目に奇襲や暗殺を得意とし、短剣や特殊な武器が多く存在する幻影流。
相手の死角に入り込んだり、気配を消しながら戦うことに長けており、暗殺者などの使用者が多い。
剣術だけでなく、戦闘以外にも習得するべき技が多く一番技術に差が出る流派である。
武器も種類が多く、人それぞれ持つ武器が違うなどザラらしい。
5つ目に攻撃を重視し、捨て身も厭わない狂刃流。
防御することよりも、相手を先に倒すことを優先し、相手の攻撃を受けながらも無理やり間合いへ踏み込み、致命傷を与えるような荒々しい技が多い。まるでバーサーカーの流派で、その危険性から騎士などには好まれないが、傭兵や一部の戦闘バカが多いとか。
またこれらの剣術は、
初位、下位、中位、上位、高位、極位、神位と階級分けされており、魔術も同じ基準の階級分けが行われている。
パパは剛剣流の高位に属しているらしいが、同じ階級だからといって同じ強さだとは限らないと俺に教えてくれた。
まぁ実戦での経験値、手数の多さなどもあるだろうから、同じ階級でも大きな差があるのだろう。
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外は朝日は昇りきり、素振りが終わった。
「はぁはぁ。。疲れたー」
「よく頑張ったな。途中休んでたりしてたが、それでもその歳でこれだけ素振りができるのは凄いぞー」
正直疲れたが、やはり男たるもの剣を振るというのはワクワクしてしまう。疲れよりもアドレナリンが出て、そんなもの忘れてしまっていた。
「パパ。次は技をおしえてくれるんですか?」
「いや、技はパパは教えない。パパはあくまで剣術の基礎的部分だけをヴァルに教えるつもりなんだ。」
「えーなんでですか?やっぱり技とか型とか早く覚えたいよ」
「ヴァルは大事なことを忘れているな」
「大事なことですか?」
大事なことってなんだ。
剣術を学ぶ上での心構え的な話か?
「ヴァルはまずなんの流派を習いたいか決めないといけない。剛剣流ならパパが教えられるけど、やっぱり自分が習いたい流派を学ぶのが一番だよ。パパも自分の習いたい流派を自分で選んだからここまで来られたと思う。あと剛剣流は人を選んでしまうから」
そうだった。すっかり流派の説明に飲み込まれて、その説明をしてくれた意味を忘れていた。
基礎的部分は教えられても、型や技は流派によって違うから教えられない。
パパは一ヶ月以内になんとなく習いたい流派が決まったら、それに詳しい人を紹介してくれると言ってくれた。やはり騎士団の副団長の人脈は凄いな。親ガチャ成功って言葉が翔の記憶の中にあるが、これは大成功の部類に入るだろうな。
「まぁ気楽に考えると良いよ。パパはどの流派を選んでもヴァルなら出来ると思うよ。かっこいいとか、強そうとかそんな安直なもので良いんだ。自分のセンスを信じるといいよ。」
父はそう言うとそのまま大剣を後ろに背負い、仕事に出掛けてしまった。
素振り後、俺は母が作ってくれた美味しい朝食を食べた。
その後どの流派にするか外で木剣を握りながら考えていた。
戦ったことなどないのだから、どの流派にするべきかなどわかるわけがない。
でも剛剣流は筋力が必要だし、獣牙流は獣族のための流派という風にも聞こえた。
王道で言うと、王剣流になるのかな?
ただ個人的に王道というものは好きではない。
翔の人格が影響しているのか知らないが、特別というか邪道的なものがカッコよく感じる。
それでいうと幻影流や狂刃流は惹かれるものだが、自分に合うものかはわからない。
まぁ今決めることではないし、とりあえず空想の敵でも作って一人チャンバラごっこでもするかな。
夕方
初めての素振りやチャンバラで飛ばしすぎたんだろう、夕飯頃からの記憶がない。両親曰く食べながら寝てしまったらしい。翌日まで爆睡だったとか。
翌日、今日は母魔術を教えてくれる日だ。
「ヴァル、じゃ今日からママがヴァルに魔術を教えようと思います!」
「ママなんかテンション高いね」
「当然よー。久しぶりに魔術を教えるのよー、少し懐かしくてテンション上がるわよ」
母は隣の都市で魔術の先生をしていたらしい。だが先生と言っても魔術師であり、火魔術と治癒魔術の中位魔術師だったとか。
ちなみに料理をするときなど、火魔術を使ったりして、日常的に使用している。
「ではヴァル。今日からママが魔術を教えるわけだけど、最初に問題です。魔術には代表的な五大属性魔術があります。さてなんでしょう」
んー翔の記憶とかにある異世界アニメとかの知識だとこの場合、火、水、風、土、雷になるのだろうか。
「火、水、風、土、雷。ですか?」
「んー惜しい。火、水、風、土までは正解!ただ雷属性の魔術は水と風を混ぜた少し難しい魔術なの。基礎的な属性魔術は、火、水、風、土、光の5つよ。他の属性魔術はそれらを混ぜたり、派生したりする物が大半なの」
「じゃママ、僕質問があるんだけど」
「なーに」
「ギルバートさんに言われたんだけど、罠魔術とかどうかなって勧められたんだ。罠魔術って闇属性魔術でしょ。この場合、どの五大属性魔術の派生?」
「そうね、この場合だと闇魔術はどの五大属性魔術にも入らないの。一応他にも色んな属性の魔術があって、闇属性魔術とか獣属性魔術とか。でも使う人が少ないから代表的ではないわね。」
ほぉってことは、邪道系魔術というわけか。カッケェー。
「それにしてもヴァル難しいわよ、罠魔術。罠魔術は物や場所に魔術を込めるけど、物体に魔力を通して魔術を流し込むわけだから魔力操作がダントツに難しいの。それにママも罠魔術を深くは知らないんだけど、基本的に罠魔術は、他の魔術を設置して使うと思うの」
「他の魔術?」
「そう。火の魔術を設置なら、火属性魔術を。雷の魔術を設置したいなら水と風の2つの属性魔術を覚えないといけない。ということは覚える魔術が罠魔魔術+使いたい魔術で人よりも多いってことなの」
なるほど
少し難しくなってきたが、要は罠魔術はあくまで器で使われて、その中に設置したい魔術を仕込む必要があると。
「要はいっぱい覚えないといけないってことだね」
「そうなの、ヴァルは本当に賢いわね。でも覚えるのも大変なのよ」
ママは少し困ったように笑った。
「魔術ってね、結構難しいのよ」
「そうなの?ギルバートさんが言うには才能があるって言われたけど」
「才能があっても、大変なのは変わらないのよ。例えば中位魔術を一つ使えるようになるだけでも、普通の魔術師ならかなりの練習が必要なの。それを複数覚えたり、さらに別の魔術と組み合わせたりするとなると、一気に難易度が上がるわ」
へぇー
翔の記憶の異世界アニメ知識では、魔術なんて言葉に出したら簡単に出せるもの、
みたいな感じだったからな。
でも現実はそうはいかないか。
「それに、魔術には二つの使い方があるわ」
「二つ?」
「詠唱魔術と無詠唱魔術よ」
無詠唱ってあれか。チート系でよく出てたやつか、詠唱せずに魔術を出す。
「詠唱の場合は、言葉の通り詠唱して魔術を使うの。そしたら決められた手順に沿って魔力を込めるだけだから比較すると簡単ね、もちろんそれでも難しいわよ」
要は数学の公式みたいなものか。型があってそれを利用すれば簡単に使用が可能という。
じゃ無詠唱は何が難しいのだろうか。
「じゃ無詠唱の場合は?」
「無詠唱の場合は、魔力操作、魔力出力、他にも魔術によっては規模や、温度、生成手順などやることが多いのよ。出来ない人が大半だし、ママも無詠唱は多くの時間をかければ1つ出来るくらいよ」
つまり無詠唱を使える時点で、優秀な魔術師なのだろう。
「それに無詠唱魔術を実戦で使う人なんて、ママでも一人くらいしか知らないわ」
「なんでなの?」
「戦闘中は一瞬の判断が命取りだからよ」
母は持っている杖を振りながら説明を続ける。
「魔術師にとって敵と距離を取ることは大事なことなの。でも無詠唱を行なって、魔力操作に時間がかかったら?」
「一瞬で敵に詰められて斬られるか、詠唱魔術を打たれるってこと?」
「正解。だから詠唱魔術をみんな使うの。それも詠唱魔術の方が安定するしね」
魔術って奥が深いな。詠唱だけでもこんなに細かいことがあるなんて。
無詠唱=強いわけではないのか。とても翔の記憶の知識がThe アニメって感じなのがよくわかる。
「ヴァル、じゃ今日は基本中の基本からやってみましょう」
母は俺の前に立つ。
「最初は初位火属性魔術の”ファイア”よ」
「まんまだね。」
「さぁ手を前に出してごらん」
言われた通り、右手を前に出す。
「まずは魔力を感じてみるの。そして次に魔力を体で動かすの。方法がわからないと思うかもしれないけど、出来るわ。指を動かすように、勝手に頭の中で意識するの。」
意識と言われても、どんな感じで意識するんだろうか。
一旦目を閉じてみるか。感覚を体の内側に。
。。。
。。。
「あ。これかも」
「そう、なんとなくわかるでしょ。それが魔力よ」
そういうと母は嬉しそうに、
「じゃ次はその魔力を移動させてみるの。一旦その魔力を頭に持ってきて、それと同時に使いたい魔法をイメージするの。今回はファイアだから、小さい炎が手から出る感じよ。そのあと手に移動させるの。」
「わかった。」
体の魔力を脳に持っていく。
そこでファイアを思い浮かべて、
魔力を右手の手のひらに集める。
すると手のひらが少しずつ暖かくなってきた。
「今よ、詠唱してみなさい」
えっとなんだっけ。
「小さき火種の灯火よ、我が身体を糧として、燃え上がれ。我が手に宿し炎となれーーファイア」
その瞬間
ボォ。。
小さい炎が一瞬手から吹き出したが、すぐに消えてしまった。
ロウソクサイズの炎であったが、確かに一瞬出ていた。
「凄いわヴァル、初めてなのに一瞬だけど火が出てきたわ。」
「でもママ、僕失敗してしまいました」
「ううん、初めてでこんなに出来るのは凄いのよ。魔力を感じるのに時間がかかる子もいるんだから。
才能ある子でも大体習得まで1ヶ月から2ヶ月かかるのよ」
おぉ。と言うことは成功か。確かに実際魔力を操作するのは大変だった。
普通の子がこれを意識的にやるとなると大変だ。
俺は場合、翔の魂が混ざって既に複雑なマルチタスクが意識的にできる。
だが他の子がやるとなると頭が追いつかないはずだ。これは俺の半分の部分に感謝だな。
「ヴァル、今日から頑張っていきましょうね」
「ありがとうママ、僕頑張るよ」
そして俺がファイアを取得するのは、その約2週間後となる




