番外編 10:セリアとフラムの罰
午後。静かな空気。
にもかかわらず、二人は呼び出されていた。
「セリア、フラム」
ロゼリアが椅子に座ったまま言う。
姿勢はいつも通り。
でも、どこか“それっぽい”。
「はい」
「はい」
二人とも即答。
(逃げ場はない)
ノアが壁にもたれている。
マイケルは明らかに楽しそう。
「理由は分かる?」
ロゼリアが問う。
セリアが一歩前に出る。
「先日の件、でしょうか」
「そう」
キッチン。
あの完全な失敗。
「止められたはずよね?」
「……否定はできません」
フラムも続く。
「介入のタイミングは存在しました」
(冷静)
ロゼリアは小さく頷く。
「つまり」
軽く足を組む。
「責任はある」
沈黙。
セリアは目を閉じて受け入れる。
フラムは変わらず無表情。
「というわけで」
ロゼリアが手を叩く。
「罰」
ノアがぼそっと呟く。
「来たな」
マイケルは笑いをこらえている。
「セリア」
「はい」
「こっち」
ロゼリアがテーブルを指す。
そこには
綺麗に盛り付けられた料理。
香りがいい。
見た目も完璧。
(罰……?)
セリアの眉がわずかに動く。
「食べて」
「……はい?」
「罰」
「……承知しました」
一瞬の迷い。
でも、逆らわない。
フォークを取る。
一口。
止まる。
沈黙。
「どう?」
ロゼリアが聞く。
セリアは数秒黙る。
表情は崩さない。
崩さないけど
「……問題ありません」
「ほんと?」
「はい」
一呼吸。
「非常に……」
ほんのわずかに、言葉が詰まる。
「整った味です」
(それ褒めてる)
マイケルが肩を震わせる。
ノアは顔を逸らす。
セリアはもう一口食べる。
今度は少し早い。
(完全に好きじゃないそれ)
でも表情は変えない。
「罰だから」
ロゼリアが言う。
「全部」
「……承知しました」
(罰とは)
「フラム」
「はい」
「あなたはこっち」
今度は別の方向。
中庭。
なぜか、タイミングよく。
一人の青年が立っている。
(誰?)
マイケルが小さく笑う。
「準備いいな」
ロゼリアは気にしない。
「フラム、行って」
「了解しました」
迷いゼロ。
フラムは歩いていく。
青年が気づく。
「あ、あの――」
少し緊張している。
「あなた、その……とても..」
言いかける。
フラムは正面に立つ。
距離、適正。
「ご用件は何でしょうか」
直球。
青年が固まる。
「えっと、その……綺麗で」
「視覚的評価、受理しました」
(違う)
「いえ、そういう意味でなく」
「詳細を要求します」
「え?」
会話が噛み合わない。
マイケルが吹き出す。
ノアは額を押さえる。
ロゼリアは腕を組んで見ている。
「つまり、その……一目惚れで」
青年が言い切る。
沈黙。
フラムは少しだけ考える。
「それは任務ですか?」
「違います」
「では目的は?」
「え?」
完全に迷子。
「交際の意思表示です」
セリアが小さく補足する。
(いつの間に)
フラムは理解する。
一拍。
「非効率です」
「え?」
「事前情報が不足しています」
「いや、でも」
「継続的関係構築には再検討が必要です」
(完全に分析してる)
青年の顔が真っ白になる。
数秒後。
「す、すみませんでした!」
逃げた。
全力で。
沈黙。
フラムが戻ってくる。
「完了しました」
「早い」
「不要なプロセスを省略しました」
(それでいいのか)
戻る。
セリアはまだ食べている。
ペースは落ちていない。
「終わった?」
ロゼリアが聞く。
「はい」
フラムは頷く。
「問題はありません」
「そう」
ロゼリアは満足そうに頷く。
「罰、終了」
ノアが即言う。
「罰じゃないだろ」
「罰よ」
真顔。
マイケルが笑う。
「どこがだよ」
「成長の機会」
「便利な言葉だな」
セリアが最後の一口を食べ終える。
静かにフォークを置く。
「……完了しました」
「どうだった?」
少しの間。
セリアは答えない。
でも。
「……記憶に残る味でした」
(めちゃくちゃ気に入ってる)
フラムは隣で考えている。
「先程の事象について」
「何?」
ロゼリアが聞く。
「感情的接近は、予測が困難です」
「で?」
「非効率ですが」
一瞬だけ、言葉を選ぶ。
「完全に否定する要素でもありません」
(ちょっと成長してる)
ロゼリアは小さく笑う。
「でしょ」
ノアは深くため息をつく。
「だから罰じゃないって言ってるだろ」
ロゼリアは軽く肩をすくめる。
「罰よ」
誰も納得していない。
でも。
空気は、少しだけ和らいでいた。
(罰とは、一体……)
そんな疑問だけが、静かに残った。
今年の牙狼シリーズはまあまあだった。可能性はあったが、それをうまく活かせていなかった。たった8話ではなく、12話から24話くらいあったかもしれないのに
ストリーミングで見ている番組は「ランニング・ワイルド with ベア・グリルス」すごく楽しいです




