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#11:ロゼリアに護身術を習わせる提案

「で、結局どうなんですかね?」


さっきの流れを引きずったまま、誰かがそんなことを言う。


休憩中の空気は、完全に緩んでいた。


剣の音も止んで、代わりに笑い声が広がっている。


「だから言ってるだろ、俺は結構モテるって」


例の本人が、腕を組みながら自信満々に言う。


(どこから来るのその自信)


思わず心の中で突っ込む。


「いやいや、見たことないって」


「むしろ避けられてるだろ」


周りがすぐに否定する。


容赦がない。


「ひどくない?!」


(まあ、そうなるわよね)


軽くため息をつきかけたところで。 


「ロゼリア様はどう思います?」 


(来た)


逃げられなかった。 


視線が、一斉に集まる。


さっきよりも、さらに。 


(なんでわたしなのよ)

 


こういうの、絶対関わりたくないのに。


でも。


ここで無視するのも不自然。


少しだけ考える。


ほんの一瞬。


それから。


「……そうね」


ゆっくり口を開く。


「自信があるのはいいことだと思うわ」 


一瞬。 


沈黙。


(あれ?)

 

なんか、変な間ができた。


「……え、それ褒めてます?」


本人が戸惑った声を出す。 


(そこ聞く?) 


「どうかしら」


少しだけ首を傾げる。


「少なくとも、自分でそう思えているなら問題ないでしょう」


また、微妙な沈黙。

 


それから。


「……なんかズレてない?」


「ズレてるな」 


小さな笑いが漏れる。 


(何よその反応) 


間違ったこと言ってないはずなのに。


「普通もうちょいこう……なんかあるでしょ」


「夢壊すとかさ」


(夢壊す前提なの?)


思わず眉が寄りそうになるのを抑える。


「事実を言っただけよ」


淡々と返す。 


その瞬間。


一拍置いて。



「ははっ」

 


誰かが笑った。


それにつられて、周りも笑い出す。


「確かにそれはそうだな」


「妙に納得したわ」 


(なんでよ)


さっきまでと違う笑い方。


からかう感じじゃない。 


少しだけ、拍子抜けする。


「ロゼリア様、結構辛辣ですね」


誰かがそう言う。


「そうかしら」


自覚はない。


横を見ると、セリアがこちらを見ていた。


ほんの少しだけ、目を細めて。


「……やっぱり」


小さく呟く。


(何が?) 


聞き返す前に、セリアは視線を前に戻した。


「面白いですね」


(またそれ)


その評価、どう受け取ればいいの。


でも。


さっきまで感じていた距離が。


ほんの少しだけ、縮まった気がした。


「面白い、で終わらせるのはもったいないですね」


セリアがぽつりと言う。


その声は、さっきまでと同じ落ち着いた調子。


でも。


(なんか、嫌な予感するんだけど)


「どういう意味?」


聞き返すと、セリアは少しだけこちらを見た。


「ロゼリア様」


名前を呼ばれる。


妙に改まった感じ。


「少しは身を守れるようになった方がいいと思いませんか?」


(……やっぱり来た) 


さっきの流れから、なんとなく予感はしていた。


でも、いざ言われると。


「急にね」


思わずそう返す。 


周りも少し静かになる。


完全に雑談モードだった空気が、ほんの少しだけ変わる。


「急でもありませんよ」


セリアは淡々と続ける。


「街にも出ていらっしゃいましたし」 


(見てたのね、やっぱり) 


「常に護衛がいるとは限りません」


その一言は、軽くない。


事実だから。 


「……それは」


反論しようとして、止まる。


できない。 


「最低限でいいんです」


セリアは続ける。


「逃げるためでも、防ぐためでも」


視線が、こちらに向く。


まっすぐに。 


「何もできないよりは、ずっといい」

 

(……それは)

 

正論すぎる。


 


でも。


 


「向いてないわよ」


小さく言う。


「さっき見たでしょ」


木剣すらまともに扱えない。


あれが現実。


「見ました」


即答。


容赦がない.

 

「だからこそです」


(だからこそ?) 


思わず、そちらを見る。


セリアは、少しだけ口元を緩めた。


ほんのわずかに。


「伸びしろしかありませんから」 


(それ、フォローになってる?)


微妙に失礼な気もする。


でも。


否定もできない。


少しだけ、考える。 


逃げるだけなら、今まで通りでもいい。


でも。 


(さっきの……) 


ノアの視線。


母の言葉。


全部、頭に浮かぶ.

 

「……どのくらい」


気づけば、そう聞いていた。


セリアの目が、ほんの少しだけ細くなる。


「それは」


一歩、近づく。 


「やる気次第です」


(つまり、逃げられないってことね)


小さく息を吐く。


完全に巻き込まれてる。


 


でも。


 


「……分かったわ」


観念したように言う。


「少しだけ、付き合う」 


その瞬間。


周りが少しざわつく。


「お、やるのか?」


「ロゼリア様が?」


(うるさい)


「ありがとうございます」


セリアは静かに頭を下げた。


そこだけ妙に真面目。 


それから、顔を上げて。 


「では」


ほんの少しだけ、笑う。 


「明日から、厳しくいきますよ」 


(やっぱりそうなるのね) 


軽く肩を落とす。


その横で。


「でさ!」 


あの声。 


「結局誰か俺に惚れてるのかって話、まだ終わってないんだけど?!」


(まだやってたの?)


思わず、ため息が出る。


さっきよりも、自然に。


(……恋愛より先に)


視線を、セリアの方へ向ける。


(生き残る方法でしょ)


そんな考えが、浮かんでいた。



さて、今日の章はここまで。これから「地獄楽」シーズン2の最終回を観ようと思います。

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