スキルなしでも大丈夫!? ヒロト、初めてのクエストに挑む!
「というわけで、今日はヒロト君の初クエストだよ!」
ギルドの受付嬢アリスが、まるで遊園地の案内係みたいなノリで元気よく言った。
「え、もうですか? 心の準備とか……」
「大丈夫大丈夫。クエストっていっても、まずは初心者向けのお使いよ!」
そう言ってアリスがヒロトに手渡したのは、1枚の依頼書。
依頼内容:街外れの森に咲く『ラミア草』の採取
報酬:銀貨5枚+ギルドポイント20
危険度:Eランク(スライム注意)
「スライムって……あの、RPGで最初に出てくるアレ?」
「うん。でもこの世界のスライムは結構ぬるぬるしてるから気をつけてね!」
「いや、見た目より内容が不穏なんですが……」
そんな不安を抱えつつも、ヒロトは初の冒険へと向かうことになった。
街を出て、森に入るとすぐに空気が変わった。
虫の声、湿った土の匂い、時折吹き抜ける風。
「うーん……案外、気持ちいいかも」
現実の森よりも少しファンタジー寄り。木々は高く、光が漏れる様子はまるで絵本の中のようだった。
だが――
「ピギュルル……」
「え?」
ヌルンッ。
「わあああああああ!? 出たあああああ!!」
突然、足元に青いゼリー状の何かが現れた。
「ス、スライム!? え、攻撃どうするの!? 武器なんて……」
ポーチから取り出したのは、初心者セットとして支給された木の棒。
「え、マジでこれで戦うの? 棒て!?」
棒を構えて、恐る恐るスライムに突きを入れる。
「うわっ、めっちゃ弾力ある……」
「ピギュ……」
ビターン!
「うげっ、反撃されたあああ!!」
スライムの体当たりを受けて、ヒロトはその場に転がった。
「ちょ……これ初心者向けってレベルじゃねえぞ!? ぬるぬるだし、くっさ!」
なぜか魚の腐ったような匂いが鼻を突いた。
「落ち着け、落ち着け俺……こういうときはアニメの主人公がよく言ってた。冷静に状況を分析するんだ!」
体力はまだ残ってる。スライムの動きは遅い。そして、木の棒でも少しずつダメージは通っている。
「よし……いける!」
ヒロトは反撃をかわしつつ、何度も突きを繰り返した。
5分後――
「や、やった……倒した……」
スライムが溶けて消え、地面にぷるぷるしたコアを残した。
「ドロップアイテム? やった、初ゲット!」
ヒロトはコアを拾い、深呼吸した。
「これでラミア草を採って帰れば……」
少し奥に進むと、青く光る草が数本まとまって生えていた。
「これだな、ラミア草……見た目、ちょっとネギっぽいけど」
採取も順調に終え、ヒロトは無事にギルドへ戻った。
「おかえり! 初クエスト、どうだった?」
「いやあ……スライムって意外とえげつないね。こっちはぬるぬるでベタベタだよ……」
「ふふ、よく頑張ったわ。ほら、報酬ね!」
アリスが銀貨5枚と小さなバッジを手渡す。
「これがギルドポイントね。たまったらランクアップできるわよ!」
「なんか……ちょっと冒険者っぽくなってきたかも」
すると後ろから声がかかった。
「おい、新入り。初クエスト終えたか?」
見ると、例の筋肉武将・エドワードが仁王立ちしていた。
「は、はい。一応……」
「ほう。お前、スキルなしでスライム倒したのか」
「え、まあ……棒で何とか」
「悪くねえ」
「えっ、マジですか!?」
「戦場では、スキルより判断力だ。お前、なかなか見込みあるぞ」
「やった……筋肉に褒められた!」
ギルド内に少しずつ、ヒロトの存在が認知され始めていた。
その夜。
ヒロトは宿のベッドで天井を見つめていた。
「スキルなしでも、何とかなる……のか?」
まだまだ不安はある。
だが、今日の一歩が――確かに異世界での最初の足跡になった。
「よし。明日も頑張ろう……!」
そして彼は、まだ見ぬ強敵(たいてい変な転生者)たちとの戦いへ、少しずつ足を踏み入れていくのだった。




