八寒地獄(3)
先頭の男がわしゃわしゃと雪を掻き分け大急ぎで近付いた。だがそれもすぐに止まったかと思うと、今度は雪の上に膝をついて頭を抱えて叫び声をあげた。
「あぁっ!なんて事だ!駄目だ!俺には無理だっ!」
「どうした!?」
えっちらおっちら雪の中を進み、ようやくその理由が分かった。
「風呂の蓋の上で!猫ちゃん達がぁー!丸くなっているぅぅ―!!」
「しかもいっぱいいるぞ!アンモニャイトだらけだ!」
「なんで俺はスマホを持ってないんだー!!」
「くっ…暖かい風呂の蓋の上で暖を取っているのか!これでは俺達が風呂に入る訳にはいかんっ!…」
「し…仕方ない…また歩こう…」
そうして俺達はアンモニャイトの群生地を十分に堪能し、その場を立ち去った。
俺達はひたすら真っ白な世界を歩き続けた。
「寒い…腹減った…俺…もう……」
「がんばれ…雪を食えば少しはマシになるだろ」
「いや、駄目だ。冷気で余計に体力を奪われる…」
「パトラッシュ……なんだかとっても眠いんだ……」
「マズい!死亡フラグだ!しっかりしろ!」
「しっかりっ!気をしっかり持つんだ!寝たら終わりだぞ!」
「あぁ…デカいモッフモフの猫ちゃんが…俺を迎えに来てくれた……」
「デカい猫っ
てそりゃ虎だぞ!ようやく会えた仲間なんだ!置いていけるか!」
「幻覚かな…林の中に炊飯器が見えるよパトラッシュ…」
「こんなところに炊飯器?そんな訳が…あったー!」
ガバッ!
「マジで!?」
「復活した!フラグへし折りやがったー!」
「あぁっ!しかし猫ちゃんが上に!香箱座りしている!」
「やっぱり駄目なのかー!」
「暖かいものは全て猫のものだという事か…!」
「いや、何処かに必ずある筈だ!猫ちゃんの居ない“暖かい場所”が!」
「車のエンジンルームにでさえ入り込めるんだぜ?俺達が入り込める場所なんて何処にもありゃしねぇよ…」
「しかしこのままでは俺達……」
みー
「待てっ!待ってくれ!」
「どうした?」
「――鳴き声が、しなかったか?」




