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罪の世界深層  作者: ブルートラベラー
2/6

罪の世界深層 第2話


「言葉というのは残酷なものだ。


同じ言葉なのに、人それぞれ伝わり方が違う。


心の底から愛を囁いても、それが相手を何よりも苦しめることがある様にな。」



ソナーが街で最初に声をかけた、旅人の衣を纏う男。


彼は、愛した人を探してここにたどり着いたと言う。


「あの世界にもう、彼女が居ないと感じてしまった。皮肉にも、彼女を想う心が、二度と会えぬかもしれぬ彼女を探す為に俺を生かしている。」


彼は空のあった世界を現世と呼んだ。


そして彼は今、この世界で海を探しているという。


もし彼女が此処に居るのなら、彼女もきっとそこへ行くだろうと。


ソナーは話の礼に、殺した大男が別の時代から来ていたことを伝えた。


「彼女が居ればそれでいい、だがありがとう。」と、男は言った。






世界とは。


いくつもあるものなのか。


ソナーは揺れたが、どんな世界だろうと妹を探し出す事に変わりはない。


例えそれが、罪人(つみびと)の行き着く、世界の果てになるとしても。






第2話 生きた証






ソナーに遅れて街についた足立義孝あだち よしたかと荷物持ち(たいが きょうすけ)。


ソナーの聞き込みに加え、彼らも及ばずながら食料や必需品やらがどう交換/売買されているのかを知り、それをソナーに伝えた。


「そう、わかった。」


「ああ、それとソナーちゃんの言ってた通りあの大男の装備は高く売れそうだ。」


と足立が言う。


「鍛冶屋にいたオヤジさん曰く、この世界に”生きた証”として持ち込めたものは、少なくともこの街で買ってくれる人はいないってさ。


死んだ奴の服や装備はギリギリOKらしいけど、それ以外は元々この世界にあるものしか買えないし売れないって。」


と、荷物持ち(装備重いから早く売りたい)が言う。


「生きた証、、、。」


ソナーは、自分が石碑に示したリボンを思い出す。


血を分け生涯を共にした妹からの、最後のプレゼント。紫に透く細いリボン。


このリボンが、、私の生きた証、、、、。


ソナーは大男から奪った曲剣が、大男のそれではないかと思った。


中世のヨーロッパの野武士、いわゆる海賊や山賊などの力や剣技のみでその時代を生き抜いた戦士たちは、


その命を己の剣に誓ったという。


あの大男の持っていた曲剣は、まさにその命を誓った剣なのだろう。


それがあの大男の生きた証。


ソナーは足立と荷物持ち(いつまでこの名前?)の生きた証について、「差支えなければ。」と聞いた。


「僕があの石碑に見せたのは、運転免許証だったよ。」


どこか恥ずかしそうに言う足立に続けて、


「俺が見せたのは、というか俺がその石碑に言ってやったのは、”この顔こそが俺の生きた証だっ!”って事かな。


それで石碑が消えて、ここに出てこられたから、きっとそれで通ったんだと、思います?」


何故か最後に”?”を付けて逆に聞き返すように、はっきりとしない答え。


ソナーは二人の話した鍛冶屋の所へ行き、何故生きた証が売り買いできないのかを聞くことにした。


鍛冶屋に着くまでには色々な店が道を挟むように並んでいる。


決して活気ある街並みではなく、灰色の石畳に同じ色のレンガや石づくりの建物ばかり。


空もなく太陽もないのに薄っすらと青く明るいこの世界は、悲しみや孤独を連想するほどに空気が青ざめていた。


生ぬるい感覚が頬を撫でるような、そんな空気。


途中で防具屋?のような店で荷物持ち(やっと解放されたー)の持っていた大男の装備を売り、この世界で流通しているとされる、赤い小さな結晶のような通貨と交換できた。


一応武具屋を名乗る店主は、どこか嬉しそうに


「それの呼び名はエリシルだ。使える時に使うことを勧めるよ。この街を出たら、まともな店はまず無いからね。」


そう言う店主に、礼を言うついでにソナーが聞いた。


「あの、生きた証を売買できないと聞いたのですが、理由をご存知ですか?」


「誰から聞いたか知らないけど、そいつ、”この街では”って言ってなかったか?」


足立と恭介(装備売ったから名前で呼んでもらえた)が顔を合わせてコクコクと頷く。


「ええ。何か理由が?」


ソナーが聞くと、少し陽気だった店主の顔が少し暗くなった。


「生きた証ってのは、ここに生きる罪人つみびとにとっては自分で在る為の大切な思い出の結晶だ。それを失っちまうと、自分が誰だか分らなくなるんだとさ、、」


手首にはめられたガントレットを触りながらそう言うと、


「あんたらも気をつけな。それと、この街でそれらが売れないのは、この街にはまだまともなやつが多いってことだ。


一歩街の外に、いや、この街の先にある岩の森を抜けたらわかるだろう。岩の森にはせいぜい、いたとしてもその曲剣の持ち主くらいの奴等だ。


まともにエリシルを稼ぎたいんなら、その森で鉱石なんかを拾ってくることだな。装備一式なら、このエーゼット武具店が力になるぜ。」


武具店を名乗るがどう見ても防具しか売っていない店の店主は、気を取り直したのか商売口調に戻っていた。


「この街の鍛冶屋に行くくらいならうちに…」と言いかけて三人を見送る。


店を出たとたん恭介(もう荷物は持ちたくない)が慌てた様子で二人に話す。


「街を出たらあの大男みたいなやつらがいるって言ってたよ!?」


小声なのにどれだけビビってるかが伝わる話し方。


「ソナーちゃんはいいかもだけど、俺達には到底敵いっこないって!」


「おい、勝手に僕も怯えてることにしないでくれよ。」


「足立さんはいいの?死んじゃうよ???」


本気でそう言う恭介(絶対無理だって!)に、足立は謎の自信でこう言った。


「装備を揃えれば死ぬことはない。それに僕達には瞬殺のソナーちゃんがついてるだろ?」


「勝手に二つ名つけるな。それにちゃん付けもやめろ。次言ったら殺す。」


「そ、そっか、、、え? でも装備を揃える為にお金…そのエリシルってやつがいるんでしょ?店主も”まともに稼ぎたいなら”とか言ってたし、」


「あれ?それはいわゆる、、詰みってやつ?」


「いやいやいや!面白半分で言ってる場合じゃないよっ!?」


のんきに焦る二人に、「少し黙って。とにかく鍛冶屋。」と言って二人を置いて歩くソナー。


静まる辺りを見渡して怖くなった二人は、決して離れまいと急いでついて行った。


鍛冶屋につくと、数人が鍛冶屋のオヤジさんと店内で揉めている。


「俺は他人から奪ったものは買い取らない。鉱石や壊れた武器なら直してやる。」


渋い声で男三人組にそういうと、その一人が片手剣をオヤジさんに向けてこう言う。


「あんたの流儀なんかしったこっちゃねぇんだよオッサン。いいから俺達の持ってきたモンに値段付けて全部買いな。」


「オッサンも死にたくねぇだろ?この街に物を売れる店なんてそう多くないんだよ、お互い有益な取引をしようぜ?」


弓を肩にかけたもう一人がそう言うと、オヤジさんがうつむいたままこう言った。


「剣を下ろせガキ。ほかの客の邪魔だ。」


「は?今なんつったオッサン?ビビッて声すくんでて聞こえなかったわ。」


三人が苦笑しながらもう一度言ってみろと言った瞬間、突きつけていた片手剣が腕ごとカウンターに落ちた。


「そっちの弓二つも置いてくか?」


顔を上げてそう言うオヤジの手には、さっきまで革を裁断していた裁ち《たち》ばさみが血を滴らせる。


苦痛に耐えかねて殴りかかる男と、腰を抜かして弓を引く男の両腕が床に落ちた。


叫び声が店の外にまで響き、重そうな片足で軽々しくカウンター乗ったオヤジが、残る一人にこう聞いた。


「お前、腕のない二人と、腕の立つ鍛冶屋の素材集めをするの、どっちがいい?」


無表情だった顔に似合わぬ笑みを浮かべ、へたり込む男を見下すその姿は、ここに来てからいままで会った誰よりも活き活きとしていた。


弓と腰のナイフを床に置き、ひざまづく男に、「今すぐ鉱石10キロ持ってこい!」と怒鳴りつけるオヤジ。


第一印象との差に震えまくる足立と恭介がその場を離れようとしたとき、ソナーは店に入って言った。


「見事でした。少しお話を伺ってもよろしいですか。」


「片づけ手伝ってくれるか。」


「構いません。」


そう言って落ちた腕と汚れてしまった店内をある程度片付ける間、二人は店前のベンチで声がかかるのを待った。


「いいぞ、待たせたな。」


そう言うオヤジさんに案内され、奥の部屋に入っていく三人。


一言目は感謝と謝罪だった。


「醜いところを見せてすまなかった。客を待たせるどころか掃除も手伝わせちまって。」


「いえ、タダで話を聞こうとは思ってませんでしたし、この世界の通貨もそれほど持っていないので。」


驚くほど普通の会話をする二人を見て、足立と恭介は似たような表情で顔を見合わせた。


(このオッサンさっきハサミで腕切り落としてなかった???)


(礼儀正しい少女に見えるけど、こいつの持ってる曲剣ってどんな奴がドロップしたんだっけ???)


何の変哲もなく話を進める二人が、本題に入る。


「それで、聞きたい話ってのはなんだい。」


「生きた証についてです。」


「ああ、それはうちでも買い取れん。その曲剣を売りたいなら向こうにあるエーゼットっていう胡散臭い店に”鍛冶屋で買った”って言って売ってきな。」


「いえ、あの武具店の人からその話は聞きました。この曲剣を売るつもりもないです。」


「なら何について聞きたいんだ?鍛冶屋の俺なんかより、この街の婦人会のやつらの方が物は知ってると思うが、」


「婦人会、ですか。あの、この街の外について、何かご存知ありませんか。」


「外? 岩の森を越えた先の話か?」


「はい、私の予想ですが、あの石碑の洞窟はここだけじゃないのではないかと思うので。」


その質問に少しこわばるオヤジの顔が、ビビりっぱなしの二人をさらにビビらせる。


「何故、俺がそれを知ってると思う。」


「さっきの動き、どう考えてもこの街で鍛冶屋をして生きる器ではありません。」


「なるほど。その曲剣を無傷で、それに返り血もなく手に入れられたわけだ。」


オヤジさんの顔が緩み、ソナーの少しばかりの緊張も解けたのがわかる。


ソナーの連れ二人は全然会話に入れないが、オヤジさんの案外優しそうな感じに二人は胸を撫で下ろした。


「あの、なんとお呼びすれば?私はソナーです。妹を探しています。」


「俺はボスだ。おさの意味じゃなく、名前だ。」


「ボスさん、率直に聞きますが、この世界は現世に生きた私達の世界とどこかで繋がっていると思いますか。」


「ソナー、だったか。お前さんがここにいる時点で”繋がってない”なんてことはあり得ない。俺も色々見てきたが、みんな実力不足で外の脅威に喰われちまっただけだ。」



「外の脅威、ですか。」


「ああ、ソナーの探す妹さんがまだ現世に居て、妹と会う事が目的なら、叶わないことはない。」


「ボスさんも、現世に?」


「信じるかどうかはお前さん次第だが、俺の記憶が間違ってなきゃ、俺はただ新しい世界を求めてこの世界深層に降りてきた。他の奴等が”現世”と呼ぶところからな。


空のある。そうだな、”地上”と言えばわかりやすいか。」


「なるほど。石碑がいくつもあるのではなく、ほかの手段で入ってきた。という事ですか。」


「石碑が一つかどうかは知らん、だが俺の通った道は間違いなく地上に続いている。恐らくは、”今も”な。」


「ボスさんは、ここがどこだかご存知で?」


「さっきも言ったろ。ここは世界深層だ。簡単に言えば地球の内部だ。空がないのはここが地上からは遥か深層にあるからで、


色んな時代の奴等が此処に行き着くのは、時間の流れに関係なく何らかの”未練”だけでここにたどり着いてるからだと、俺は考えてる。」


「それでは、ここは単なる死後の世界や、精神世界ではないということですか。」


「まぁお前さんの言う精神世界が地上の事を指さないなら、その例えは近いかもな。だがさっきも言ったように、現世を生きたお前がここにいる時点で、


地上とこの世界深層が繋がってないなんてことはあり得ない。妹さんがどこに居ようと、それがお前の生きる意味なら、それを遂げるまでは何をしたってその命が絶えることはないさ。」


「命が絶えることはない、、、。私の殺した大男は確実に死んだように見えましたが。」


「何をもって死とするのかは人それぞれだ、だがお前さんは現世で死んだ覚えがあるんだろう?俺はそうやってここに来た訳じゃないから何とも言えんが、


人間ってのはしがらみで生きてるようなもんだからな。まぁ夢や理想と言ってもいいかも知れんが、」


そう言うとボスは一枚の写真を腰の革ポーチから取り出した。


「これが俺の渡った深層への入り口だ。」


青く輝く空と森の中にある大きな湖。太陽が反射して美しく透き通っている。


「これは、、、」


ソナーがそう言葉を漏らすと、ボスが何かを思い出そうと目をつぶった。


「ん~。定かではないが、、、確か、囚人の湖とか言ったな。どこにあったかは覚えとらん。」


すると突然、恭介(やっと話に混ざれる)が声を上げた。


「あ!囚人の湖!マンモスレイクだ!カルフォルニアにある!」


三人が恭介(役に立てそう!)の方を見ると、不意にボスがこう言った。


「あぁ、そうだ!その国にあったぞこれ!」


思い出せたことが嬉しそうにそう言うボス。


恭介やったあぁぁもやっと役に立てたことをガッツポーズで喜んだ。


「確か西部の山岳地帯にあってな、やたら森の気配がざわめいてたから何かあるのかと思って近づいたら、その池があったんだ。いや、湖だったか。」


思い出した筈なのにまだ少しあやふやな事を言うボスに、ソナーが聞いた。


「あの、それで、その湖からはどうやってここへ?」


「んー、よく覚えていないが、湖の中に裸で泳いでいって、デカい岩があって、それをどかしたら水圧でその穴に飲み込まれて、、、」


色々すごい事を言っているが、シーンの想像は控えておくべきだろう。


「それから気づいたら暗い洞窟に落ちてて、でも消えない松明が道を照らしてて、、、そーだ!そこから最高な道が続いててこの深層にたどり着いた!」


「最高な道?」


「ガイコツが剣もって襲ってきてさ!その時俺素っ裸で丸腰だったし、なかなかに強くて、それがうじゃうじゃいて、死んでたまるかって戦ってたら、気づいたらここまで来てたんだよ!」


今までになくハイテンションで語るボスに、足立と恭介は武具屋の店主の言った「この街にはまだまともなやつが多いから」という言葉の一切を疑った。


「まぁだから、俺も最初はお前らに此処を“世界深層” とか、他の奴らは “死後の世界” とか呼んでるけど、実際空のある“現世”、つまり地上から俺が此処にこれたんだから、この世界は何も別世界って訳じゃないと思うぜ。


俺にとっちゃ此処は、地球の内側にある強いやつウジャウジャのダンジョンってとこだ。そうゆうのが欲しかったから、俺は今此処にいる。」


戦闘狂か、或いは探究心の化身。


好奇心だけでこんな世界にまで旅をする奴がいるのかと、


そんな風に足立と恭介(とにかく装備が欲しい)が小声で話す中、ソナーはボスにこう聞いた。


「つまりこの世界は、この“世界深層”は、私の生きた世界と繋がっていて、戻る方法があると。」


ボスは頷いたが少し悩んでいた。


「戻る方法があるかどうかは正直分からん。さっきも言ったように俺は地上から此処に、いわば無理矢理来た様なもんだ。戻った事も無いし俺が通った道もどうなってるか分からん。


俺の知る限りではお前さん達や他の大勢は“死後の世界”として来てるんだろ?


死んだ記憶があって、服装とかもそのままで、ついでに生きた証として一番思い出の深い品を一つ持って来てる。


だったら無理やり入った俺の様に出ることも出来なくは無いと思うが、、、、」


少し間をおいて、ボスが慎重に表現を考える。


「どちらかと言うとお前さんは“石碑ルート”で出るのが、妥当なんじゃないか?」


「石碑ルート…?」


「いや、そんな道を知ってるって事じゃなくてだな…」


自分の言った言葉を聞き返され、上手く伝えようと頑張るボス。


長考の末、渋々片目を開けてソナーを見た。


「お前さん。妹を捜すんだろ?」


コクリと頷くソナー。まだ悩みながら話すボスの思考を邪魔しないように、返答だけを仕草で示す。


「死んだ記憶があって、石碑に証を示して此処へ出てきた。んだよな?」


コクリ。


「だったらそれは、石碑と誓約を交わしてこの世界に“生かして”もらってるって、考えられないか?」


ソナーは話の続きを待つ。


「だからその石碑にこの深層と現世を繋いでもらってるんだったら、その“石碑ルート”の繋がりで現世に戻る方法があるんじゃないのか?」


ソナーはうつむき必死に思考を巡らせる。


黙っているのにこんなにも人は何かに必死になれるのか、そう思うってしまうような集中と静寂。


恭介(装備の話から凄く飛躍してない?)が体制を改めようとした衣擦れ音が、ハッキリと部屋に聞こえた。


かなり経った後、ソナーが口を開いた。


「ボスさんは…石碑ルート以外で出る方法をご存知ですか。」


ボスが答える。


「シンプルに、俺が入ったところから出る。くらいじゃないか。」


「俺は出入り口があそこだけとは思ってないが、見つけようとして探し出せる物ではないと思うぜ?」


何故かすこし笑みを浮かべるボス。


「私は石碑ルートで帰るのは最終手段だと思います。ですから、もし良かったらボスさんの入った場所まで…」


「そいつは断る。と言うより無理だ。」


ソナーの話を切るボス。


「最初も言ったが俺は楽しそうだから此処に来て、楽しいから此処にいるんだ。


そんなつまらねぇ事に手を貸すなんて、それはこれまでの俺を全否定しちまう。断ると言うより“無理”と言った方が俺にもお前さんにも正しいだろうな。」


ソナーは表情を変えずに聞いた


「では、新しい所を探すのは。」


「言ったろ?探そうとして見つけられる様なもんじゃねぇ。」


「じゃあ一緒に行こう、ボス。」


ソナーはそう言うと、当然2人は


(?????)


(????) 。


だがボスは顔を押さえて机の下にうつむき、肩を揺らした。


「ッ、ッ、ッ、ッ。」


「あっはっはっっははははは!」


「やっぱり話を聞いて正解だったぜ!」


抑えきれない。といった大笑いをしてそう言ったボスは、


さながら、誰が見てもゲームで言う“ボス”にしか思えない。


「ソナー!そこの二人はどうすんだ!?」


キャラ崩壊したように謎の勢いで話すボス。


「2人は目的が一致している間だけ、という事で一緒にいる。」


「お前ら!お前らは何をしたい!?」


「ご飯を食べたいです。」と足立。


「死にたくないでスっっ!」と恭介(怖い!)


「なら決定だ!そろそろここでの仕事も飽きてた所だしな!探しに行くぞ、出口!」


もうただの気前のいい酔っ払いみたいになってるボスに肩を組まれ二階へと連れて行かれる2人。


ソナーもそれについて行く。



ドサッッッ。と二階の廊下に置かれた大量の装備。


「今すぐこれに着替えろ。あ、お前らの証って何?」


少し落ち着いたボスがそう言うと、


「僕はこの運転免許証を。」


「俺はそのっ、顔ですっ。この…僕の、顔……」


「そうか。ならよし。お前ら服に未練はないよな?」


「はい、特には。」


「あ、でも僕はこの服で大学に通ってたので、、、」


「無いな。服脱いでこっちに着替えろ。んでもってお前らの服はよこせ。俺が造り直す。」


そう言って一階へ降りて行くボスだったが、ソナーとのすれ違い様に、


「ソナー。お前自分の体のサイズ分かるか?」


「身長は160。他は73、56、76。」


「ぺったんだな。」


「死にたいの。」


「いつかはな。」


どこまで冗談かわからない会話の末、


「装備のリクエストはなんかあるか?」


「軽くて動きやすいやつ。ベルトなんかでナイフを留められると助かる。」


「タイツみたいなやつか?」


「ゴムは嫌。後はなんでも。」


「おーけーだ。数日かかるからお前1人でも森に行ってなんか集めて来てくれ。」


「分かった。2人は?」


「色々手伝わせる。タダで装備が貰えると思われちゃいけないからな。」


そう言って一階に降りていくボス。


角を曲がるところでソナーが、ちょっと。と付け足した。


「出来れば、水色が、いい。」


「了解だ。リボンを入れるポケットも付けとくよ。」


「ありがとう、ボス。」


「岩の森に行くには店を出て左だ。お前なら曲剣一本で十分だろう。出来れば獣の皮を頼む。」


「獣?どんなのがいるの。」


「フツーにイノシシとか馬とかいるぞ?でも体が腐ってる奴には気をつけろ、色々と厄介だし何より使い物にならん。」


「分かった。行ってくる。」


二階の廊下で着替えに苦戦する2人に事情を説明して、階段を降りるソナー。


3段ほど降りたが、ふと振り返って二人を見る。


「それと、次私の前で着替えをしたら殺す。」


そう言い残して、ソナーは街の外にある“岩の森”へと向かった。

一応毎週、月、水、金曜日の22時に。

夜に読んでほしいな。


感想あると嬉しいです。

まだまだ続きます。


(挿絵も練習してたり…?)

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