神殿にての贈り物 前編
「まあ。確かになぁ」
そう言ったのはハヤテだ。
「ゲームの中には作ったスキルがあまりにも強すぎる。
チートバグキャラみたいな……そういったスキルになったりすることがあるんだよ。
強力すぎるからゲームのバランスを崩しかねない。
そういった存在を作りかねないこともあるんだよ」
「作っている最中に気づかないの?」
ハヤテの言葉にクレセントが尋ねるが、
「それは無茶よ」
そういったのはカエデだ。
「確かにゲーム。元々、シナリオをなぞるだけならばそれはある程度は防ぐことが出来る。けれどもこういったシナリオがない。
自由が売りの分だと違う。
制作者が思ってもいない使い方をする。
そういったのもあるのよ。
ある意味、そういったプレイヤーの存在が制作者側からも嬉しいんだけれどね。
思いもよらないスキルの組み合わせとかね。
まあ。基本的に難易度が高いクエストをクリアしないと手に入らないのが強力なスキルとかだけれど……」
そう静かに言う。
「そういうものなんですね」
「そうよ。あるいは思わぬ形で強力なスキルを手に入れたとかもありえるわ。
例えば攻撃力二倍とか防御力二倍。
そう言ったのが常時発動するようなスキル」
そうカエデが言う。
「ただし当然、デメリットもあるけれど……。
使い方次第で大成功してしまったりするのもあるし……。
中には夢中になって作った結果、強すぎるとかもある。
そういったこともあるし……。まあ。これがあれば強力すぎるとか……。
こういったゲームはプレイヤーも遊んでいくことで成長していくのが普通なのよ」
「まあ。強力スキルっていうのは手に入れるのは難しいのが普通だけれどな。
こういうゲームでも基本的に強力無比なスキルやアイテム。
それを手に入れるのはそれに見合う難易度があるんだよ。
チェーンクエストで三つか四つ。下手をしたら五つや六つ。
場合によったら十以上のクエストをクリアしないといけないとかさ」
チェーンクエスト。
言ってしまえば一つのクエストをクリアしても続いてまた別のクエストが発声するというやつだ。
ゲームなどで目的のものを手に入れるのにある人にあう。その人に会うためにある事件を解決する。その人を助け出したが依頼をするために別の内容を頼まれる。そういった感じだ。これが面倒だったりすると良いアイテムが手に入るのだが……。
序盤は難易度が低いけれども後半になると難易度が高いというのもある。
「中にはそのクエストの達成の仕方で手に入るスキルとか報酬アイテムが変化するんだよね。まあ。それはチェーンクエストじゃなくてもあるけれど」
「そうなの?」
スプリングが驚いたようにハヤテの言葉に聞き返す。
「うん。例えば特定の土地を荒らす存在をどうにかしろというクエスト。
存在を倒したけれども土地が壊滅してしまったならクエスト失敗。
存在を倒して土地の損傷ぐらいで報酬が変化するというやつとかさ」
さすがのゲームオタクは本当に知識は豊富だ。
僕は基本的に姉の手伝い程度しかしないのでそういう細かいやりこみはしていない。
「しかも一度しか挑戦できないとかもあるんだよ。
あるいは誰かが完全クリアをしたらもうできないとかさ。
そういうスキルに限ってもうめちゃくちゃ有能。
そんでもってさ。そういうスキルは弱体化されにくい」
「まあ。それはそうね」
ハヤテの言葉にいうのはカエデだ。
「そういった難易度が激高のをクリアした。そして強いスキルを手に入れた相手というのはそのゲームの顔役みたいなものだからね。
話題の人物となるだろうしさ。何よりも難易度が死ぬほど高い。そんなスキルや装備アイテムを手に入れてそれを弱体化されました。
そんなことを繰り返していたら間違いなくゲームを引退するわ」
「引退?」
妙な言い方に首をかしげるスプリングに、
「あー。こういったバーチャル。ネットとかで参加するゲームをやめることを引退とも言うんのよ。特にこういったゲーム越しにだけれどリアルの人間と付き合いがあるゲームだとね。何かしらの都合で引退というかゲームをやめる人はいるわ。
たとえば今までは学生だったけれども社会人になってとか……。生活の変化とかあるいは純粋にこのゲームに飽きたとかね」
「なるほど」
カエデの言葉にスプリングは素直に納得する。
作れる時間というのは立場、職業。そしてその人の年齢によって大きく影響が出る。
学生のうちというのはどうやっても学校がある時間帯はこういったゲームをするのは不可能だ。まあ。スマホの簡単なソシャゲぐらいならば別だろうが……。
しっかりと打ち込んでというような操作に力を入れるのは難しい。
そもそも学校でゲームするのも基本的に問題だ。
ついでにいうとゲームというのは機体のスペックに左右される。
専用のゲーム機を使うならばさほどの問題が無い。ただ、ネット経由だとスマホとパソコンではやはり処理速度が違い性能に変化がでる。
それらはゲームの種類によってはそのまま強さの影響に出るのだ。
なのでこういうので妥協しない人間は必ずそれようのパソコン。しかもお金があるならば高性能なパソコンをわざわざ用意していたりする。
閑話休題。
とはいえ、そう言ってお金やら何やらにつぎ込めるのはいつまでか?
そういうのもあるというわけだ。
お金が無ければ時間。時間がなければお金。
とはいえ、どちらも無いという人間もある。
あくまでもゲームは基本的には娯楽だ。
ゲームを職業としているプロゲーマーもいるがあれは本当にごく少数だ。
ついでに言うとプロゲーマーはそういうのはきちんとしているそうだ。
一日中、好きな遊びをしているというわけでは無い。きちんと勝率のための勉学。海外にいくための語学。運動などもしっかりとしているので引きこもりゲーマーと同じにしては失礼だ。
……閑話休題。
ゲームにどこまで時間をかけるのか?
時間をどう使うのかは個人の自由。
とはいえ、それでもゲームというのは時に長期的にログインするのも難しいことがある。前もって長期的にログインできなくなる事情を説明する。
そういったこともしても良いが……。
それが数ヶ月、数年とかの単位になれば話は別だ。
ゲームのアップデートはどんどんと進むので世界は変わる。
ゲームの世界の変化は時に停滞し、時に革新的に進む。
いや。むしろネットを使った基本無料(課金システムあり)のだと新しいイベントというのはどんどんと起きる。
「イベントとかってさ。期間限定なんだよね。
短いやつだと一週間から十日ぐらい。長いのでも一ヶ月半ぐらいだね。
メインストーリーならともかくさ。
イベント限定だとしたら大変だよ。イベント限定キャラクターのゲットに成長。そのためには限定アイテムとかも必要だしその限定アイテムとかをそろえるのは大変。
普通にお金を使うじゃ無くて時間もかかるのが通り。
そういうのが複数で同じくおきることだってある。
トップを走れないということだってめずらしくない」
ハヤテはそう静かに言う。
「まあ。トップランカーでちやほやされる快感にはまってリアルを捨ててネトゲ廃人になる人間もいるんだけれどね。
正直、そういった人間になるのは当人の問題もあると思うんだけれど」
きっぱりとそうハヤテは断言する。
なかなかに辛辣な言葉だが、
「それにゲームを作る会社だって仕事。
お金を稼ぐためにしているんだからさ。
いつまでも同じゲームでは飽きちゃうからね。
新しいゲームを作る。
そしてそのゲームの維持をしていく人材もお金もある。
だから古いゲームは捨てて行く。
それが基本だからね」
「まあ。確かに古いカセットゲームとかも同じだよなぁ」
ハヤテと違ってオレはゲーマーではない。
それでも義姉がゲーム雑誌の記者なのでそういったゲームをもらったりしている。そういったゲームが積み並んだりしている。
そこそこに趣味としてやったりすることもある。
そういったゲームだが古いゲームソフトは捨てたり売ったりしている。
ちなみに売られたゲームの中にはリサイクルされたりすることもある。
「中には歴史に残る神ゲーとしてマニアが好むゲームもあるけれど……。
そういうのは百本作ったゲームのうちの一本。
そりゃ人気があるゲームシリーズなら安定があるけれど……。
そういうのって新作もどんどんと出るからね」
あまり知られていないがゲームというのは年間でも大量に販売されている。ゲーム会社や傾向、年齢、タイプを問わなければ百近くが販売されている。
その中で人気を持ち誰もが知っているゲームというのは少ない。
人気シリーズだって逆にいえばファンが求めている基準を超えなければならない。
作り手というのはいつだって大変なのだ。
雑誌編集記者と言う姉ですら締め切り間際は地獄のような日々を送っている。
だからクリエイターもきっと大変なのだろう。
ゼロから作るというのはどんな仕事でも大変だ。
趣味や娯楽をきっかけにし始める仕事。
けれどもそういった仕事ほど実は大変なところがある。
閑話休題。
「あのさ。話がどんどんと違う方に進んでいる気がするからいうけれど……」
そうクレセントが口を開く。
「結論としては最初につくる世界というか基礎の状態であるゲーム。それにしては作り込みすぎているということよね」
そう身も蓋もないことを言うクレセント。
「まあ。確かに……。
基本からこだわりすぎているとわりと奇妙なのよね」
「まあ。確かに」
しかもこれは言ってしまえば試作版のベータ版だ。
言うならば試運転。試作品のようなものだ。
ゲームというのにも限らず何かにつけて実際に作ってみる前に確かめることは必要だ。
料理だって家で食べるのならばともかくお店で売ったりするならば作って試食をしてどんな感じかという感想を聞く。
そして足りない者。評価が高い者。そう言ったのを考えて改造して商品化していくのだ。
ゲームだけではなく音楽だってそうだし、家とかだって模型を立てて考えたりする。
そういったことを考えるとおかしいというか奇妙なところが多すぎるのだ。
そう思って居エバ、
「元々、ベータ版と銘打っていますが……。
新しいというか改造できるほどの技量があるとは思えないのよね」
そうクレセントが言う。
「だって
これ、ほとんど兄が作った状態よ。
兄が残していたというか残してしまっていた。
そういったバグだってそのままだったし」
正論だ。
だとしたらこれを改造できるわけがナイトいうことだ。
だとしても、
「それだとさらに疑問。
クレセントさんの兄は何でここまで細かく作り込んだんだ?」
そう僕は疑問を口にする。
正直、フリーのゲームライター。
ゲーム会社が購入してくれる保証も無い。
冷たいかもしれないがこういうのは現実というものだ。
それらを考えるとなんでそこまで……。
それこそ妹が心配してしまうほどに作り込んだのか?
それに、
「偶然にしては似ている世界がある。
それもまた奇妙なんだよな」
物語やドラマ。あるいはゲーム。
それでゲームや物語とよく似た世界がある。
そういった展開のも野語りというのは聞いたことがある。
きいたことがあるが、それはやはり架空の話だとも思う。
何かある気がするのだが……。
はっきり言ってゲームの世界だけでそれがわかるとも思えなかった。




