水のダンジョンの探索 二度目! (その2)
お久しぶりです。更新しました。
三流とまではいかないが超一流とか名門と名乗るような大学ではない。彼らは特に強くなりたい職業があるわけではない。ただ一応とはいえ、どういう分野に進みたいかという目標をもって自分たちの学力で通える大学へと進学をした。
そしてゲーム研究会にはいった。単なる娯楽のためのようなサークルであるが彼らはそれなりに楽しんでいた。ゲームをプレイしたり時にゲーム雑誌に応募してゲームのテストプレイなどをして会費を稼いだりしていた。
そのうち一人に至っては将来的にゲーム会社に入りたいと思っていたのだ。
そんな中であったテストプレイヤーの依頼が極秘に入ったのだ。
仕事内容は秘密裏にそこにプレイをしてプレイヤーの反応を直接的に見てみる。さらに職業に偏りがないようにだ。
終わった後にアンケートを応える必要があった。彼らの場合はその後に体験談などを語って話して説明をする。
その代わりにバイト代としてこのゲーム装置などをくれるというのだった。
このゲーム装置は今後にもいろんなゲームソフトが販売される。
そう判断していたこともあり彼らは嬉々としてその依頼を受けた。
「先輩の言った通りやめておいたおいた方が良かったよな」
「だな」
そうアキラさんが言えばシズクさんがうなずく。
「どういう意味だ?」
「いや研究会には先輩もいるんだけれどさ。
この会社は信用ができない。そもそも本来ならばこんな高性能なゲームをつくれるはずはない。そういっていたんだよ」
そういえばカエデもそんなことを言っていたな。
「そうなのか?」
「今まで作っていたのはそれなりに有名なゲームの劣化コピーみたいなゲームや。
それなりに面白いし楽しめるけれどオリジナリティがない。
性能も劣化しているしいまいちと評する人間が多いな。
まあ。パクリやけれどそれなりにおもろい。
それとどっかの会社を借金で倒産しかけているゲームの権利やデータを買う。
そんなのも多いんやけれどろくなチャックをせえへんからバグが多い。しかもバグの治すためのシステムもほとんどできへんそうや。
たとえ人気が出ても二作目は駄作。
何しろ作ったやつを雇うわけやないんやからな」
なるほど……。
「だとしたらこのゲームも基本はだれかから購入した可能性は高いというわけか」
そういってクレセントを見る。
クレセントの言っていただまし取られたという言葉。
それが真偽を帯びてきたという感じだ。
テストプレイヤーたちというのも彼らにとって未知の部分があるからそれを確認したい。そう思った可能性もある。
とはいえ、まだ真偽があるだけだ。真実を確かめるすべは俺たちにはないのだ。
「せめて外と連絡ぐらいとれないかな」
俺はぽつりとつぶやいた。
「外?」
「ダンジョンの外じゃなくてこの世界の外。
現実世界のことだよ」
きょとんとするハヤテに俺は説明をしてやる。
「時間タイムラグがあるから外でも見ることができる掲示板が理想だな」
忌々しい思いをしながら俺は言う。
「そうすれば外からの連絡もできる。
現状と外の状況がわかれば少しはプレイヤーの不安も楽になるだろうな」
現実ではどのくらいの時間がたったのかは重要ではない。
現実での俺たちの立ち位置に対する不安。それが事実だろう。
両親はどう思っているのか? 家族や友達はどうなっているのか? 学校はどうなっているのか? 意識がない自分たちは今、どうなっているのか? そんな疑問があるだろう。
「まあ。ネットでつないで掲示板などで現実やゲーム内部でも会話が可能というのはあるんだけれどな。現状などを書き込んでいく実況とか攻略方法を相談したりする。
そういうのがあるんだよな」
「あー」
俺は義姉さんの手伝いでしかしないのでそこまで見ない。
それでもネットで攻略情報などを書き出す人がいるのもわかる。
ある程度はゲームのネタバレになるということを理解はしているだろう。ネタバレ注意とかそういうのもあるけれど利用する人は利用する。
しかもこれはオンライン型のストーリーのない自由度の高いゲームだ。
内容によったらいろいろと会話などをしたりするかもしれない。
けれど、これはゲームが本格的に始まり始めてから生まれるものだ。
第一、これはプロトタイプだしな。
その後、大学生の人たちはアイテムを使いダンジョンを出るそうだ。
そのダンジョンが出るのを確認して俺たちはさらに進もうとしたら、
「あ、あのさ」
突如としてクレセントが口を開いた。
「その掲示板というので思い出したことがあるの」
「掲示板?」
「うまくいけば外と連絡がとれるかもしれない」
「なに?」
クレセントの言葉に俺は驚く。
いや、俺だけじゃない。全員が驚いている。
「兄さんが作っていた資料。ほとんど奪われていたんだけれどメモとかノートの切れ端とかそういうのだけは残っていたの。
その残っていたのからわたしは確信を持ったんだけれど」
そう前置きしてクレセントは説明を始めた。
なんでもダンジョンを最初にクリアした場合ゲームのシステムを開放させることができる。さらにそこで優先の権利などもあるそうだ。
「ゲーム会社への要望を送るということもできる。
けれど前もって用意しておいたのもあるはずなの。
ダンジョンの難易度にもよるけれどね。一定以上の難易度のダンジョンをクリアするとそのダンジョンポイントをもらえるの。
そのポイントで要求交換ができる。あるいはゲーム会社に要望を送れるの。それでダンジョンポイントでさらに更新ができるようにするシステムがあるかもしれないの」
「なるほどな」
ダンジョンは適当に進めていくつもりだった。だが、そうなると話は別かもしれない。
外への通信が可能かもしれないシステム。それを手に入れることができたら話は変わるかもしれない。
内部での変化や可能性の情報。
そして外にいる人たちが情報を得れば話が変わる可能性もある。
外でしかわからないことがどうなっているかだ。
たとえばこのゲームの販売店。
その会社がどうしているのかという疑問があるというわけだ。
間違いなくというか高確率で今回の事件の責任を問われているだろう。
その場合、どうしているのか?
それを知ることができる。
何しろカエデのような大会社のご令嬢がいるのだ。
それはほかにもいるだろう。
大手のゲーム会社だけじゃない。このゲームを出資をしようかと考えている財界のご子息。あるいは銀行の総責任者の孫などだ。
あるいは単なるゲーム好きだって一般庶民ばかりじゃない。
中には金持ちがいるかもしれない。
それに何よりも一般庶民だ。
一般庶民だって発言権があるし意見を言う。
けして少なくない人数の子供が意識不明の植物人間状態だ。
それを全てなかったことにできない。誰も悪くない。
そんな寝言が通じるほど世界は甘くない。
つか、そんな考えができるぐらいならば犯罪者もいなければ警察もいない。
イエスキリストだってその状況ならば罪を犯した人間のために泣くだろう。
いや、俺はクリスチャンじゃないんだけれどな。
「それじゃダンジョン攻略をしてみようか。
ただし限界を感じたら無理をしない。
実力を上げてみる。それを繰り返していこう」
ダンジョン攻略に一本に絞るのも正しくないだろう。それに俺たち以外にも現実に帰りたい。そう思っている人間もいるはずだ。俺の言葉に全員がうなずいたのだった。
そもそも、無理をしてこのダンジョンにこだわる必要はないのだ。
このダンジョンの難易度はわからないがかなりの難易度だ。
このダンジョンから出たらダンジョンについて調べよう。
「まあ。掲示板というのはそれほど要求は高くないと思うんだよな」
そういうのはハヤテだ。
「運営側が何もしなくても個人とかで情報などを公開するサイト。そういうのを作るやつはどうやっても現れるからな。
運営が何かしたところで止められるもんじゃない」
「あー。たしかにな」
その言葉には俺も同意する。
義姉は実際にそういうのを見たりしていた。
ゲームの人気などはそういう個人運営の方が逆にわかりやすいといっていた。
「たしかになー。
運営側があまりにも問題があるなら止めるんやけれど、それも完全やないわ」
ネットの社会はもしかしたら現実よりも広くそして混沌としている。
一気に急成長して発展して言った世界。それはいまだに完全な秩序はない。
ネット内部でのいじめや詐欺は多種多様に及ぶ。
何しろ匿名でいくらでも伝えることができる。
「だからどうしようもなくなったらほかのダンジョンへと挑戦する。
それにだ」
俺は肩をすくめる。
「他のやつが掲示板を作る可能性もあるだろ。
まあ。この話を噂として広めておくのも一つの手段だな」
「クレセントの情報として伝えないのか?」
俺の言葉にハヤテが言うが、
「それはやめておいたが法が良いと思う」
そういったのはスプリングだ。
「クレセントに責任を問いかける人が現れるかもしれない。
そうしたらクレセントがどうなるかわからない。
この世界に死はないんだから……もっとひどいことをしそう」
「同感だな」
俺もうなずく。
「死なないしショック死するとかはしないだろうがある程度の痛みは感じるんだ。
それにどんなアイテムがあるかは知らないが、ゲームの中。
そういう考えと外に出れないというストレス。
その二つがどういうことをしでかすかわからないぞ。
人間の悪意っていうのは醜いからな」
俺はそういう。
実際に俺はそういうのを見てきた。……この父親譲りの顔とか、そもそも俺のあの父親関係の因縁。それが原因のいじめはとてつもなく反吐が出るものだった。
「とにかくだ。
このことは秘密にしておこう。
クレセントもそれを警戒して誰にも言わないでいるんだろ」
「うん」
俺の言葉にうなずくクレセント。
「まあ、とにかくだ。
俺たちのやることはわかったが急ぐ必要はないだろう」
俺たちはそういう。
時間はたっぷりあるのだ。現実ではまだそれほど数日はたっていない。
いや、ひょっとしたらまだ一日もたっていないかもしれない。
とにかくだ。
「下手に複数のことを同時にやろうとしても危険だしな。
同時進行ができることならともかくな」
今の状態でその同時進行は難しいだろう。
そう思いながら俺たちはとにかくダンジョンの攻略を進めることにした。
どうせまたダンジョンから出ることになるだろう。
そう思いながらダンジョンを進む。
もしも難しいなら水中活動が可能な方法を会得するのが方法だ。
そんなことを考えながら進めばモンスターが現れる。
なかなかに友好的なモンスターというのは現れないな。
「なんか餌でもばらまいてみたらどうや」
「餌付けかよ」
カエデの言葉に俺はそう突っ込みを入れる。
「ツッコミとしては及第点はやれんな」
「お笑い芸人になるつもりはないんでね」
俺はそういいながらダメ元で餌をばらまく。
ばらまくといっても焼いて持ってきたパンを細かくちぎったものだ。
これを適当にばらまいていく。
「なんか、公園で鳩に餌をやっている老人みたいだな」
「どっちかというと公園の池にいる鯉じゃない?」
ハヤテの言葉にクレセントが言う。
「あのな」
俺が思わず説教しようとしたら、
「なんか来た」
そうスプリングが口を開いた。
その言葉に、
「お前らが鯉とか鳩とか言うから」
「いや、そういう問題?」
「つか、なんだよ? あれは」
ハヤテとクレセントに怒鳴れば二人は困惑したように言う。何しろ現れたのは鳩と鯉を足して二で割ったような異形だったからだ。




