親友なのに……
温かい目で見てください!!
夕日も落ちかけた夕方の体育館、物音一つしないその場所に一つの影が現れた。
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男子更衣室の扉が勢いよく開けられる。開けた扉から小柄な男子がひょこっと更衣室の中に顔を覗かせる。
「ひーかーる。帰ろーぜー……ってまだ着替えてねーのかよ。相変わらず練習熱心で『バスケバカ』だなーバスケ部の部長サンは。」
そういっておどけながら更衣室へと入っていく。
『バスケバカ』と呼ばれた男は、少し息を荒くしたまま髪の先から滴り落ちる汗をタオルで拭いていた。
市村洸。身長178㎝体重68kgの長身の男は、栄山高校バスケ部の部長で一軍のスタメンとして一年の頃から大いに活躍し、バスケ部を全国へと導いている男だ。
誰よりも練習熱心で、いつも居残り練習をしているため、部員のみんなから尊敬と呆れの念から『バスケバカ』と呼ばれている。
「あぁ、優斗か。いつも待たせてわりーな、すぐ着替えるからまっててくれねぇか?」
小柄な男の頭に手を置き、ぽんぽんと撫でてニコリと笑いかける。
「んだよっ!! そうやっていっつもいっつも背が大きいの自慢しやがって!」
パシリと手を払い除け、頬を膨らませている男は三咲優斗。
身長163㎝体重50kgの小さな身体を気にしている本人だが、洸と同じく一軍のスタメンだ。目立つプレーはそれほど多くないが、スピードを生かした小回りなドリブルで相手を抜き去り、味方へとボールを繋げてサポートをする栄山高校バスケ部の活躍選手の一人。
「わりぃわりぃ、お前の頭って撫でやすいんだよ。位置とか丁度いいところにあるし、髪の毛フサフサで犬みたいだしな。」
少しも反省するそぶりを見せず、口先だけで謝る洸に優斗の顔は不満げなまま。洸はユニフォームに手をかけ、バスケで鍛えた体をさらす。優斗は尖らせた口先が引っ込み、顔に熱が集まり頬が赤くなるのを感じる。
「(いつからだろうか、洸の身体を見るとこんな風に顔が熱くなるのは。まるで洸に恋でもしているかのように………って何考えてるんだ俺は。こんな思いなんて持ってちゃだめだ、持っていた所で叶うはずなんかないのに。洸なら受け入れてくれるんじゃないか、またいつものように笑いかけてくれるんじゃないか、なんて………。)」
「俺の身体になんかついてるのか? あんまりじっと見つめられるとさすがに俺も恥ずかしいんだけどな………」
頬をかき、少し照れくさそうにする洸にハッと意識を戻す。優斗は戸惑いを誤魔化す様に目を逸らす。
「い…いやぁ、別に!? やっぱ筋肉ついてるなぁって思っ……!! って、そうじゃなくて! あの…えっと……。そうそう! もう暗くなるから早く着替えろって思ってたんだよ!」
あわあわと手を宙に彷徨わせ、動揺している優斗に近づいた洸は服の上から優斗の身体をぺたぺたと触り始める。
「なっ!? やめっ…ちょっと……洸っ!!」
「んー、お前もそれなりに筋肉ついてると思うけどなぁ……あんまり付けすぎても身体が重くなって動きづらくなるだけだし、優斗は今のままが丁度良いと思うぞ?」
自分が好きな相手が布越しにとはいえ、身体を触っている事。耳元でつぶやかれる洸の声、まだ汗を拭いていない体からは男らしい匂いと微かに爽やかな制汗剤の匂い。優斗は息をするだけでぼーっとしてくる。
身体の力が抜けてしまった優斗は、洸にもたれかかるように倒れた。
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