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高校時代、幼馴染と付き合っていた男と再会した話  作者: 金平糖2式


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3/3

蛇足・シンママになった幼馴染の憂鬱

 久しぶりに入った、地元の喫茶店。

 

 そこで、十数年ぶりに再会し——あっさりと私を見限り去っていく幼馴染、成田なりた 悟朗ごろうの背中を見て、はあ、とため息をついてしまう。


 落胆はある。

 けれど心のどこかで納得もしていた。


(……まあ、当たり前か。

 何をどう考えても今更だし)

 

 それでも、(すが)ってしまったのは、懐かしさもあった。

 お金の事がまったく頭になかったか……と聞かれれば、嘘になる。


 でもそれ以上に、これからずっと一緒に人生を過ごせる伴侶(パートナー)が欲しかった。


 今まで……関わってきた男の中で、一番誠実(まとも)な相手が、彼だったとつくづく思い知った、というのも本音ではある。


 ……そう。この十数年で思い知らされた。


 昔は鼻で笑っていたが、今では痛いほど理解できてしまう言葉。


 ()()()()()()


 ……私が、いや私たちが、特に若いときに魅力を感じていた男というのは、基本的にろくでもない。


 それを認めたくない、少なくない数の同類(おんな)が、主語をやたら大きくして、男全体に、自分で選んだ相手のそれをおっかぶせようとするのは良く見るが……あれは良くないと思う。


 耳障りのいい言葉で、自分を誤魔化し続けても、何一つとして状況は変わらないどころか、性根が腐れて、とんでもない化け物になっていくだけだ。


(まあ、私だって若い頃は似たようなものだったし……

 中年(おばさん)になってからこんなこと言っても、虫が良すぎるけどね)


 ずず、と、テーブルの上のカップに残っていた……未だ湯気の立つコーヒーを啜ってから、再びため息をつく。


 多分、高校生(あのとき)なら、まだ受け入れてくれる余地はあったのだろう。 

 あの時の私にはまだ若さが、未来があった。

 一緒に過ごした時間がまだ意味を持っていた時期(とき)で、そこからさらに同じ時間を積み重ねていける余地があった。


 ——では、今は?


 何もかもが劣化した上に、子連れ(こぶつき)と来たものだ。


 三十路なんてまだ若い、とか何とか宣っているおめでたい人達のように、開き直ることが出来れば、ある意味で幸せかもしれない。

 けれど……若さ(時間)というのは、失ってしまえばそれだけ取り返しがつかないものなのだ。


 実際、昔のように……誰も私をちやほやなどしてくれない。

 それも当然だ。だって今の私はもう中年おばさんなんだから。

 

 もう私のような人間は、誰か()見定めて選ぶ側ではなく、誰か()見定められて選ばれる側なのだ。


 だから、悟朗(ゴロー)は今の私を選ばなかった。

 ……選ぶ理由が何一つとしてないのだから、当然なのだ。

 それに傷ついたと文句を言う資格など、ありはしない。

 

(にしても、茂樹しげき……いや、苅茂かりもとも会ってたって……

 あいつが今更、悟朗(ゴロー)に関わる理由って、何?

 いや……多分私には、関わりのない事なんだろうけど)


 苅茂 茂樹。


 私が最初に付き合った男で……最終的には、()()()()()()()()()

 浮気(それ)が発覚したのは発覚したのは大学に入ってからで、当時はかなり傷ついたものだけど……今振り返って見れば、驚くような事でもない。


 魅力的に()()()異性(おんな)慣れした男が、誰か一人()()に愛情を注ぐ?

 ……あり得ない。


 異性に慣れているという事は、遊んできたという事だ。

 他の誰かの席を奪ってきたという事だ。

 誠実さとは真逆のそれを繰り返してきたという事だ。


 甘やかされきった私たちの本能(それ)利用(ハック)する事に……長けているという事だ。


 そんな相手に裏切られたと嘆くのは……目に見えていた事だろうと、他人だれかに嗤われても仕方がない。


 本当の意味で誠実な振る舞いが出来るのは、私()()が、つまらないと斬って捨てた男……つまりは、()()悟朗ゴローのような人。

 私は、そういった幼馴染おとこを……若い頃(ピーク)に選ばなかったし、選べなかった。


 だから、()()()()()


 はあ、と三度ため息が漏れる。

 つくづく、見る目の無い女だ。私は。


 結局のところ、()もハズレを選んだ挙句が、シンママ(この様)なのだから。


 カップに残った、冷めかけたコーヒーを一気に飲み干してその苦みに顔をしかめる。

 もう少し砂糖を入れておけばよかっただろうか。

 ……嫌になるくらいに、苦い。

 

 そして、ここまで思考を整理して……何となく、だけど受け入れる。


 悟朗(ゴロー)は、いろいろな物を見限り、青臭(誠実)さを捨て……とっくの昔に大人になっている事を。


 多分、その切っ掛けは、他でもない私のせいだろうけれど……この十数年の間にも、何かしらあったのは想像に難くない。

 

 もう今更、過去(わたし)の事など、欠片も興味がないのだ。


(だから……悟朗(ゴロー)と深く関わる事は、無いんだろうな。きっと)


 年月は人間は変える。良くも悪くも。


 私だって変わった——変わらざるを得なかったのだから。

 これは、それだけの……話なのだ。


 もう一度ため息をつきそうになり、止めた。 


 ほんの少しくらいは……自身の愚かさを自覚し、悔いる事くらいは出来るようになったのだ。

 だから、今も口の中に残る苦みを、明日への糧に変えられるように……私は深呼吸して、見苦しく自分勝手な未練(わがまま)に蓋をした。


 もう二度と、同じ間違いを犯さないように。

 今更でも、これからも、年相応の内面へと成長していけるように。


 ……今を生きる我が子の、きちんとした親になれるように。

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