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虹色ライフ  作者: 紫焔
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●やってみようよ、ホトトギス●

●やってみようよ、ホトトギス●

「そういや、前に仮入部届け出しただろ?あれ今日からだから、部活ある奴は頑張れよ」

朝のホームルームで伝えると、谷教諭は生徒のこれからが楽しみだと言わんばかりに笑って出て行った。途端に煩くなる教室の中、上総(カズサ)は溜め息を溢した。それを聞き逃す訳は無く、右近(ウコン)が首を傾げた。

「上総ぁ、どうした?今日から楽しい部活動デスヨ?」

「楽しんで下さい」

「なんだそれー!!」

誘われるまま、弓道部に入ったは良いものの上総は右近の様に体力が人より高い訳じゃ無い。高いと言えば高いが、それでも小さい頃から少林寺憲法なんてやってる右近よりは全く無い。

「何や右近。上総と喧嘩したんか?」

近付いて来る雅景(マサカゲ)に首を振り、右近はしょんぼりと椅子の上で体育座りをした。

「俺が我が儘言ったから怒ってんの?」

「・・・・・・」

「右近、それ俺でもやらへんで」

膝の上に顔を置くと上総を見上げてくる阿呆を怒る気など出なかった。

「右近の事甘やかしてる上総もいけないんだよ。だから右近は気にしなくていい」

「アーサー!今日は三編み?」

「お婆ちゃんがしてくれた。似合う?」

「可愛い〜!!」

アーサーの姿を見て元気になる辺り、餓鬼過ぎると上総は思った。が、結局世話を焼いて来た人生を今更変えらるとも思えなかった。

昼に食堂に行こうと誘ったのは雅景で、四人で移動する最中も話が盛り上がった。

「右近と上総は弓道やろ?アーサーは?」

「僕は吹奏楽」

「えぇ!?アーサー楽器出来るの?」

頷くアーサーに関心したのは右近だけではなく、上総も驚いた。

「なぁなぁ!何やるん?」

「本当はギターなんだけど、サックスとバイオリンも出来るから」

「ギターなら軽音部が良いんじゃないか?」

「僕、クラシックの方が好きだから。あ、ほら着いた」

指差すアーサーに続いて前を見ると賑やかな食堂があった。白を基準にした綺麗な作りで清潔感が溢れる。

「何にしよる?俺Aランチとプリン!!」

「俺はオムライスカレー」

「僕は日替わりロコモコ。右近は?」

「うーん・・・月見うどんかな?そりゃ」

架け声と共にボタンを押す右近を見てから、各々のカウンターに立った。上総、雅景とアーサーは定食・ご飯もの。右近だけ麺類のコーナーになり一人寂しく出来るのを待っていた。

「あ!桜宮先輩!!」

見覚えのある後ろ姿に右近は躊躇わず近付いた。声を掛けられた桜宮の方は驚いた顔をした後に右近に振り返った。

「・・・山崎か。元気そうだな」

「右近で良いっすよ!先輩は彼女とですか?」

「いや。彼女居ないから」

「え!?以外・・・あ」

思った通りを口にして、右近はマズイと自分の口を隠した。いつも上総に怒られる考え無しの言葉に気付き、桜宮を見上げた。

「・・・っくく」

見ると桜宮は口許を隠し、更に声を殺して笑っている。顔を背けているのでどんな表情なのかは判らないが、笑いが収まらないのには流石に恥ずかしくなった。

「な、何すか!そんな笑わないでも良いでしょ・・・」

「いや、悪・・・っフフ・・・駄目だ、苦し・・・」

「もー知らないっすよ!つか恥ずいです!!」

「悪い悪い」と頭を撫でられ、右近は膨れた頬のまま桜宮を睨んだ。まだ笑いが途切れないのか、微笑んだ顔で右近に謝った。

「本当にごめん。・・・じゃあな」

「・・・っす」

自分の分が来ると桜宮は友達なのか男子グループの中に座っていた。箸や色々なものを用意しながら、右近は首を傾げた。

(俺から見てもカッコイイのに、彼女居ないんだ・・・世の女子は見る目が無いなぁ)

溜め息を溢したが、次にはハッとなって考えを改めた。

(いや、もしかしたら居るけど遠距離中とか?!もしくは身分の差とかで?!)

右近は昨日みた時代劇の話を思い出し、現実では有り得ない事まで想像していた。

「あ、来た来た。遅かったやんなぁ」

「なぁ雅景。身分の違う恋って叶わないもの?」

「は?何言うてるん?天皇様とでも結婚する気かいな」

「え!?いや俺じゃなくてさぁ!!」

しどろもどろに説明する右近に三人は首を傾げた。

「知らんがな先輩の事なんか。ちゅーか俺知らんしその先輩」

「酷い雅景!!・・・でもやっぱ不思議だよねぇ」

「何が?」

問いかけるアーサーに右近はうどんをすすった後に続けた。

「だってあんなカッコイイなら彼女の一人二人は・・・」

「二人はあかんやろ。でも右近が惚れる先輩ってどんなん?上総」

「?何が」

オムライスを黙々と味わっていた上総は不機嫌そうに雅景を見た。食には煩い上総は食堂をなめていたと軽く反省をしていた所だ。

「確かにカッコイイ人だったよ、ミステリアスで。でもカッコイイからって彼女が居るとは限らないだろ?」

「上総みたいに女嫌いとか?」

「別に嫌いじゃねぇよ」

勘違いしているアーサーにきっぱりと返し、続きとばかりに右近が続けた。

「上総は構われるのが苦手なだけで、好きになったら結構凄いんだよ?大胆でもうっ!!」

彼女居()ったん!?」

「んーん。中学の時に教育実習で来てた学生」

「わ、馬鹿!!」

流石に恥ずかしくなって右近の口を塞ごうとしたが言い切った後では全てが遅かった。育ち盛りの男が四人揃えば、色恋話に花が咲かない訳が無い。

「美人だったの?幾つ差?」

「美人美人!!中二の時に相手が21だから・・・七つ?」

「年上キラーかいな上総ァ?」

「ウルサイ」

「良く言うよ。頑張ってメアドも聞き出してたみたいだし?まぁ相手にされなくて駄目だギャ!!」

足を踏まれて叫ぶ右近に周りは慌てたが、上総は黙々と食事を続けた。

●○●○●

「足の骨死んだかと思ったよ・・・あー痛ェ」

「何時間前の話だよ」

放課後になり、右近にとっては楽しみな、上総にしては面白くない部活動の時間が来た。と言っても挨拶だけして帰るつもりだったし、新人が出来る事など度が知れている。

「弓道部」と書かれた看板があった場所に上総は初めて来た時も驚いた。異様に凝った作りで、部室も畳が敷いてあった。

「ちわーっす」

「ちわ」

横開きの扉を開くと直ぐに声が返って来た。下駄箱があってすぐに横に部屋の入り口があるので、中から誰か来ないと気まずい。

「はいはい」と降りてきた袴姿の男子に、上総と右近は頭を下げた。

「結城上総です。お世話になります」

「山崎右近です!宜しくお願いします!!」

「ははっ。礼儀正しいな。まぁ顔上げなよ、上総と右近だっけ?」

柔らかい物言いに顔を上げると、穏やかな面持ちの男子が腰に手を当てて二人を見ていた。

「俺は副部の小野大智。大チャンで良いからな・・・っと、サク?」

大智(ダイチ)と二人のやりとりに気付いたのか部室から顔を覗かせた。

「右近がどうって?・・・あ」

「あ、桜宮先輩!!」

「・・・ども。結城上総です」

自己紹介をしていないのに気付いた上総が頭を下げると、相手も頭を下げた。

「桜宮左京だ。一つ上だけど気にしなくて良いから」

「左京って言うんすね、何か似てるかも、なんて」

はにかむ右近に左京(サキョウ)は満更でも無い様に頷いた。もう部活に行くつもりなのか、手には道具が握られている。

「この後は?」

「え、暇ですけど・・・」

「・・・見てくか?」

愛想は良く無いが、後輩に好かれようとしているかの様な行動に上総は好感を持てた。右近は元々人を嫌う事が少ないので直ぐに頷いた。

左京に続いて行きながら、右近は左京の姿を上から下まで見た。

「・・・何か付いてるか?」

「え?あ、違います!袴、カッコイイなぁって」

「半年経てば毎日袴だぞ」

「違いますよ、先輩が!」

「俺が?」

己を指差す左京に右近は頷いた。

「先輩気にしてる子、俺結構知ってますよ?なのに彼女居ないなんてなぁ」

「山崎も女子に人気あるんじゃ無いのか?」

「まっさかぁ!!んなの全部上総ン所っすよ」頭の後ろで手を組み、右近は後ろで大智と話をしている上総を見た。話が弾んでいるのか、珍しく会話を楽しんでいるらしい上総に少し驚く。

「似てるな、双子とかじゃ無いのか?」

「あー、良く言われるんスけどね。違いますよ。もしそうでも構わないし」

「・・・」

不意に目を伏せた右近に左京は悪い事をしたかと思ったが、声をかける前に笑って見せた。

「俺と上総だから絆は凄いっすよ!!二人三脚とか出たらダントツっス」

「・・・それは楽しみ」

口許にだけ笑みを乗せ、左京は道場の扉を開いた。広い室内に感嘆を漏らしつつ、二人は指定された場所に正座した。

「弓道がどんなのかは知ってる?」

「真ん中の的狙うんすよね?」

「そ。あ、ほら、我らがエース・那須与一(ナスノヨイチ)が・・・」

大智が説明する前にヒュンッと風を切る音が鳴り、次いでドス、と的に命中した矢が衝撃で揺れていた。驚きで声が出ない。

「因みにこっちは近的場って言って、もう一つ奥にあるのが遠的場。遠的場は一つしか的が無いから順番に使うように」

「え、でも今ここだけで広いって思うのにまだ長い所があるんすか!?」

「俺もやっと的の側まで行くようになった位。今はサクと顧問しか使って無いよ」

「顧問?」

「おー、やってるか与一と大智!」

噂をすれば、なのか顧問らしき人物が扉を開いてやって来た。与一と呼ばれた左京は頭を下げ、大智も軽く挨拶をした。

「扇ちゃん!!」

「よぉ右近。上総も来てたか」

担任の(オウギ)こと谷教諭が弓を持ったまま右近と上総の頭を撫で、目の前にヤンキー座りをした。

袴だからだろうが、あまり女性がしていい姿では無いと上総は思う。

「斎藤と片倉は来なかったか?」

「そっすねぇ。この二人だけで暇だしナンパしてました」

「大智ぃ、その調子で彼女とも仲良くな?」

「何でんな事知ってんの!?」

慌てる大智に笑いかけ、谷教諭は大智を払い除ける様に手を振った。大智も弓を持って来ていたので()てたいのだろう。

「よく来た。この三年間、しごいてやるから覚悟しな?」

「まだ仮入ですけど」

「あっはっは。まぁ顧問が私だったんだから仕方ないだろ!諦めな上総!」

肩を力強く叩かれ、上総は溜め息を溢した。元気な教師は人気があるが、上総は余り構って欲しくない。

「・・・あ。明日の課題忘れた」

谷教諭の顔を見たからか、立ち上がった上総は谷教諭に頭を下げた。

「右近。荷物頼んだ」

「はいはーい」

手を振る右近を見ずにさっさと道場を出た。

部室がある棟から更に奥に入った場所にある弓道場から学習棟・・・普段勉学に励む教室がある棟までは遠い。

小走りになりながら校庭の脇を通り過ぎようとして、足が止まった。

「ねぇ、君!!ちょっといい!?」

言うが早いか腕を引っ張られてしまい、その相手が怪しいので上総は半歩、身を退いた。

那須野与一・・・日本史に登場する弓の名手。・・・だったと覚えています。先輩の武勇伝は後程。そして右京、とっても女々しくなりがちで困ってる作者でした。また会える事を願って・・・。

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