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魔科学錬金術師Rio ~詳細把握・再配置スキルと現代科学で無双する~  作者: 宇寄ともな


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第24話:水車動力と、連続伸線の構築

作業台の上に広げられた『ヴェルダ地下魔導網刷新計画』の図面を、ハディードは太い指でなぞりながら唸り声を上げた。


「街の外壁沿いに敷設された六基の結界塔を結ぶ地中ラインの総延長……ざっと五千メテルか。小僧、これだけの長さの純銅線を揃えるとなると、手作業で一本ずつダイスから引っ張るやり方じゃ半年かかっても終わらんぞ」


「ええ。だからこそ、人の腕力じゃなく自然の力を使いましょう」


イクミが羊皮紙の端に、滑車と回転軸を組み合わせた機構図を素早く描き足した。


「ハディードさんの鍛冶場の裏を流れる用水路、かなりの水量と落差がありますよね。あの水車動力を減速ギアでトルク――回転する力に変えて、ドラム缶のような巻き取り機(キャプスタン)を回すのよ」

「水車の軸から力を引いて、連続して線を巻き取るってわけか……!」


ハディードの目が職人の輝きを帯びる。


「それだけじゃないわ。一本のダイスで一気に細くしようとすると銅線が千切れるから、径を段階的に小さくした『連続伸線ダイス』を四連で並べるの。粗引きの太い銅棒を通せば、水車の力で一度に極細の均一な導線まで引き落とせるわ」

「ガハッ! 面白い! ドワーフの伝統なんざ関係ねえ、動く仕組みならいくらでも組んでやる! 黒鋼のダイス板と歯車は俺が今すぐ削り出すぞ!」


ハディードはすぐさま立ち上がり、クラロとともに鍛冶場へ資材の手配へと駆け戻った。

境界林の工房では、リオによる母材インゴットの量産が始まった。

旧銅鉱山から運び込まれた酸化銅の鉱石を、還元剤の木炭粉とともに大型化した坩堝へ次々と投入する。 小型魔導炉の集光熱風が坩堝を包み込み、内部の鉱石が鮮やかな赤熱の液体へと変わる。

リオはハディードから借り受けていた耐熱獣皮の分厚い鍛冶手袋を両手にはめ、赤熱した坩堝の縁へと慎重に手をあてがった。 手袋の繊維越しに魔力を送り込み、【詳細把握】で溶融状態を見極める。


(……鉱石の量が前回の三倍以上ある。焦らず、段階的に分離を進めるんだ)


深く息を整え、【再配置】を注ぎ込む。 遊離した酸素が炭素と結びついて一酸化炭素となり、地中熱交換の排熱ラインへと速やかに抜けていく。残された純銅の重い原子が底へ沈降し、表面に浮いた珪素や鉄のスラグを火箸で手早く掻き出す。

型へ流し込むと、鈍い赤金色の純銅インゴットが次々と完成した。

さらに、掻き出したスラグとナノカーボン粉末を再結合させ、導線を保護するための『黒鋼の被覆用帯鋼』も同時に精錬していく。


「リオ、魔力の消耗は大丈夫?」


冷たい井戸水で濡らした手ぬぐいを差し出しながら、イクミが心配そうに覗き込む。


「うん、ありがとう。手袋越しでもしっかり構造は把握できるよ。以前みたいに全体を一から組み替えるんじゃなくて、熱の力で緩んだ原子の不純物を弾き出すだけに集中してるから、魔力の負担はかなり抑えられているよ」


手袋を脱いで手ぬぐいで汗を拭ったリオの表情には、確かな充実感が滲んでいた。

翌日、ハディードの鍛冶場の水車小屋に、木組みと黒鋼の歯車で構成された『水車式連続伸線機』が据え付けられた。

水門が開かれ、ゴオォッと水車が重い唸りを上げて回転を始める。

減速ギアが力強く噛み合い、四連のダイスを通された赤金の銅棒が、一定の速度で滑らかに引き抜かれていく。

巻き取りドラムの上には、髪の毛のように均一でしなやかな純銅の導線が、幾重にも美しく巻き取られていった。


「……木組みと普通の鉄ギアじゃ、水車の力に負けて軸がブレちまう。黒鋼で打ったから持ってるが、これ以上出力を上げたらギアの歯根から割れるぞ。しかし……おいおい、見ろよ。人間が丸一日かけて引く長さを、水車がほんの半刻で巻き取りやがったぞ」


ハディードがドラムに触れ、呆気に取られたように笑った。


「あとは、この銅線の表面にリオの【再配置】で内部応力の歪み取りを施し、黒鋼の帯板で外側を覆って絶縁・防護すれば、地中に何十年埋めても劣化しない『高伝導魔導ケーブル』の完成ね」


イクミが誇らしげに告げると、工房の外から早足の足音が近づいてきた。

現れたのは、険しい表情を浮かべた警備隊長フィエル・セルタセロだった。


「フィエル隊長、どうされました?」


リオの問いかけに、フィエルは懐から一通の親書を取り出した。


「王都のギルド本部より、ヴェルダ領主館へ向けて特使が派遣されたとの急報が入った。『アルトフエルテ派閥』の筆頭補佐官を名乗る人物だ。……マテオの身柄引き渡しと、この街の全魔導技術の強制監査を要求してきている」


王都の権力がいよいよ本格的な牙を剥き、境界の街へと迫りつつあった。



第24話をお読みいただきありがとうございました!

次回、第25話は、明日18:00に更新予定です!

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