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魔科学錬金術師Rio ~詳細把握・再配置スキルと現代科学で無双する~  作者: 宇寄ともな


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第16話:鉱滓の山と、黒鋼の投射器

クラロが裏ルートを使って手配したのは、上等な鉄インゴットでも希少な鉱石でもなかった。

廃小屋の前に運び込まれたのは、古い製錬所の跡地に野積みされていた黒くゴツゴツとした塊――精錬の過程で出る産業廃棄物、『鉄鉱滓(スラグ)』を満載した荷車だった。


「街外れの廃棄場からただ同然で引き取ってきたよ。ギルドの役人も『ゴミを運ぶ奇特な奴がいる』と笑って見逃してくれたさ」


クラロが汗を拭いながら言う。


「十分すぎるわ。……リオ、このスラグの中には、当時の未熟な製錬技術では取り出しきれなかった鉄分や微量元素がぎっしり眠っているはずよ」


イクミが作業台にスラグの塊を置き、金槌で軽く叩いて割れ目を作った。

リオはその断面に指先を直接触れさせ、【詳細把握】を発動する。


指先から流れ込む構造情報。

雑多なケイ酸塩や硫黄、酸化皮膜の奥底に、無数の細かい鉄の粒子が不均一に散らばっていた。


「……本当だ。酸化鉄のままで取り残された純粋な鉄が、全体の三割以上残ってる!」


「でしょ? まずは木炭の粉末と一緒に魔導炉で還元して、純鉄を取り出すの。そのあと、この前やった『ナノカーボン結晶』を均一に混ぜ込んで、靱性と硬度を極限まで高めた炭素鋼……『黒鋼』のインゴットを作りましょ」


イクミの理論に基づき、小型魔導炉での還元・精製が進められた。

リオが【再配置】で不純物を弾き出し、微細な純鉄の原子と炭素結晶を均一に結合させると、坩堝の底には吸い込まれそうな漆黒の光沢を放つ『黒鋼のインゴット』が仕上がった。


「よし、このインゴットと設計図を持って、ハディードさんの鍛冶場へ行こう!」


街外れにあるハディードの鍛冶場。

持ち込まれた漆黒のインゴットを金床の上に置き、愛用の大槌で力任せに叩きつけたハディードは、キィィンと甲高く澄んだ打撃音に目を丸くした。


「……おいおい、小僧。なんだこの鋼は!? 表面に傷一つ付かねえ上に、叩いた衝撃が手首に跳ね返ってきやがらねえ……! まるで衝撃を鋼全体で分散して吸い込んでやがるぞ!」


「街外れの捨て場にあった鉄鉱滓(スラグ)から精製したんです」


「スラグだと!? あんなゴミ山からこんな業物向きの鋼を引っこ抜いたってのか……!?」


ハディードは興奮で髭を震わせ、イクミが差し出した羊皮紙の図面に視線を落とした。

そこに描かれていたのは、黒鋼の弾性を利用した『連発式軽量投射器(ハンドクロスボウ)』だった。


「なるほどな……! スライムや森の獣相手に、近寄らせず距離を取って射つための仕掛けか。この黒鋼のしなりを板バネに使えば、普通の弓じゃ考えられねえ初速の矢が放てる。……よし、腕が鳴るぜ! 機構の鍛造と組み立ては俺に任せな!」


灼熱の炉の前で、ハディードの大槌が火花を散らして唸りを上げる。

ドワーフの長年の経験による絶妙な焼き入れと鍛造、そこにリオが接触して【再配置】で微小な歯車の噛み合わせや内部応力を極限まで整えていく。


職人の技と魔科学の融合によって、一振りの漆黒の投射器が組み上がった。

矢の先端には、リオが削り出した『マナ・シリカの微小徹甲錐』が装着されている。


鍛冶場の裏庭で、厚さ五センチの硬木板を標的に据え、イクミが投射器を構えた。

トリガーを引いた瞬間――


バシュッ――!!


鋭い風切り音とともに放たれた黒鋼の短矢が空気を裂き、木板の中心へ吸い込まれる。

次の瞬間、ドゴォン! と鈍い衝撃音が響き、木板は中心から真っ二つにへし折れて吹き飛んだ。


「……すごい威力。反動も手首に全然来ないわ!」


イクミが驚嘆の声を上げると、腕を組んで見守っていたハディードがガハハと豪快に笑った。


「見たか! 俺の鍛えたバネと小僧の鋼、それに小娘の知恵の結晶だ! これなら分厚い魔獣の毛皮や並の甲殻なんざ、腐った薄皮同然にぶち抜けるぜ!」


矢の先端のマナ・シリカが魔力を帯びて貫通力を底上げしているのを確認し、リオも確かな手応えに笑みを浮かべた。


ギルドの資材封鎖を嘲笑うかのように、職人たちの手によって新たな防衛の牙が完成していた。


第16話をお読みいただきありがとうございました!

次回、第17話は、明日18:00に更新予定です!


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