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宙に名を刻め【完】  作者: 壱原 棗
SS置き場
14/14

“恋”だと言え

(Privatter公開済みのSS)

(※元カノ(未満)注意⚠️)

リアン 17歳頃

 夜の自由時間。消灯時間も近い黒曜館の談話室はすでに薄暗い。複数ある暖炉の前はぼんやりオレンジ色に照らされていてまばらに人が居る。

 自室に篭る寮生の方が圧倒的に多いので、寮の雰囲気的にこんなものだろう。そんな中、リアンは談話室を好んで使う少数派であった。

 自室のインテリアは質素なものがほとんどなので、座り心地の良いソファがある談話室を気に入っている。今日もこうして暖炉の前のソファで消灯まで読書に耽っていた。


「ねえリアン、私のマフラー知らない?さっきまで膝掛け代わりにしてたのよ」

「さぁ、知らない」


 おもむろに声をかけてきた高すぎない心地の良い声の主は、同寮生のオリヴィア・シュレンナー。黒曜館では比較的外交型でさっぱりした性格をしている。黒髪のショートヘアから除く小さな耳は沢山の住人で彩られていて文字通り刺々しい。

 話しかけられてもリアンは視線を文字に落としたままページを捲る手は止まらない。この辺りのソファには共有ファブリック類も多いから、適当に紛れているのだろう。しかも今の時間、この場は薄暗い。


「おかしいな、そこのソファに座ってたのに」

「……何色の?…………は?」

「んーっと、あ、見つけた……へ?」


 声の方に顔を向けた瞬間、なぜかすぐ横まで彼女が迫っていた。座るリアンに上半身を乗り上げるような姿勢で、二人の視線がぶつかった。暖炉の灯りを受けて、薄暗い中に浮かび上がるサマーグリーンに射抜かれてリアンは慌てて目を逸らす。逸らした先も風呂上がりの薄着のまま生白い首筋や薄い肩がむき出しで目のやり場に困る。


「…………なんて格好してるの?髪乾かしたら?あと退いてよ」

「あんた、私のママ?さっさとマフラー返して」


 眉間に寄ったしわをほぐすように指をあてて、やれやれと小言を口にするとどうやら自分の下に目的のものがあるらしい。少し腰を浮かすと、彼女が伸ばした腕がずるずるとマフラーを引き抜いた。


「俺だって寮に帰ってきてまで年上に小言言いたくないんだけど」

「ひとつしか変わんないでしょ、真面目過ぎると禿げるよ~」

「ちょ、なんで隣に座ってくるんだよ!」

「いいじゃん、今日肌寒いし。ひざ掛け貸してあげる」

「はぁーーーー」


 二人掛けのソファに当たり前に座ってきて、身体の片方が密着した。オリヴィアは鼻歌を歌いながら呪文を唱えると、下からぶわっと風が起こり水滴の残る髪を瞬時に乾かして身体の力を抜いた。

 (ほんと、猫みたいだな)


*****


 それからしばらく時間が経って本を閉じると、ずるっと寄りかかっていたオリヴィアの頭が落ちそうになった。


「オリヴィア、もう起きなよ重いって」

「んぅ~……?」

「はぁ、」


 肩をゆするとどんどん落ちてきて、不本意だが膝枕をしている状況になる。艶やかな黒髪が流れて、とげとげした耳がのぞいた。それが気になっておもわず指先で触れると、オリヴィアがむずかるようなしぐさをする。

 リアンは大きくため息をついてサイドテーブルに本を置くと、膝に乗っている頭の下に手を入れて肩ごと上半身を起して運ぶことを決める。膝の下を持ち上げで抱き上げると、ひざ掛けと本を浮遊させてから歩き出そうとすると、下から腕が首に巻き付いた。


「はぁ?起きたの?」

「……変なの」

「え?」


 起きたのだろうかと視線を下げると、猫のような大きいサマーグリーンの双眼とぶつかった。眠気なんて感じさせず“ぱちくり”と音が聞こえそうなほど瞬きをしたのが見えた。そして顎になにか柔らかいものが触れた。


「……ふつう、さ。私に浮遊の魔法かけるんだよ」

「俺はキミみたいに魔法が得意じゃない」

「んふふふ。アンタのそういうとこ好き」

「はいはい、猫の世話は嫌いじゃないからね」

「にゃあ、はやく部屋連れてって」

「重いからもうやめたい」


 首元でくふくふと笑う彼女にそう嫌味をぶつけるとオリヴィアは腕から器用に抜けて降りたった。そして猫のようにふらふらと近寄ってくる。肩に手を置かれると先ほど顎に触れた正体が自分の唇に移り、ちゅっと可愛らしい音を立てて離れていった。


「あんなに近くで目ェ合わせてもキスしなかったのは褒めてあげるね」

「……たった今、全部……っ、台無しだろうが……」

「怒らないでよママ♡おやすみ~♪」


 暗い廊下にひとり取り残されて、リアンは頭を押さえた。なんなんだあれは。今後どこに落ちてても無視をしようと決めた。胸の下がくすぐったいような、でも胃痛に似たような締め付けを感じたが、摩ることで遠くへやる。

 知りたくないと好奇心がぶつかる瞬間であったことはまだ彼自身気づいていない。それでもまた翌日から絡まれるようになり、何度もデートをする仲になるなど思ってもいない__リアン・アスター17歳の頃のお話。


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