表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/31

12:ウソかホントか

 こうもありえないことをさも事実っぽく話されてもなあ。

 七夕の物語は、両親が話してたのかもしれない。昔話とかを自分でアレンジして話す親は、多いだろうしね。

「笑わんかったことは、ほめてやる。しかしな、お前、しんじてはないだろう? これっぽっちも、な。これだから、その頭の中が、すっからかんと、おもわれるのだ!」

「あのね、夢を壊すようで悪いけど、そういうのは、ただの言い伝えよ? 昔からある有名なね」

「ちがう、ちがう。言い伝えとかいうのではなく、事実だ。いまの世まで話が残っているのは、そういうふうに話が残るよう、裏で意図的に伝えている者がおるからだ――当の本人たちが、いいように話を流せば、自分らにデメリットはなかろう」

「自分でいいように話をすればあたり前ね。けど、証明できないわよ。私からすれば、ただの童話とか昔話とか、そんなんでしかないわ。

 だから、ごめんなさいね。信じられないの」

 男の子は不満げに顔をくもらせた。愛らしい顔に似合わないシワがよる。

「ええい、まったく。こうも、話がうまく伝わらんとは。女――んん? そういえば、わしは……ぉお! 女、さっきわしが名をきいたのに、なぜ答えない!」

 あまりに理不尽なことをいいやがった男の子は、残りすくないゼリーを八つ当たりといわんばかりにスプーンでつき刺した。ダンッダンッと、意地汚くふり下ろされるスプーンは、いびつにゼリーをゆがめる。ただし、ごろごろはいっているフルーツは、うまい具合によけている。

「名前をしりたいときは、自分からよ。おわかりかしら、おぼっちゃん?」

「どうやら目上へ対する口のきき方をしらないらしいなあ」

「それよ、それ。まず、その話し方。よくないわ」

 男の子は、握っていたスプーンを置いた。

 年上には敬語。

 それは、あたり前のことじゃない。

 小学低学年でも、ある程度は守れるお約束。私は、男の子はわざとこういう話し方をしているとおもっている。子どもの中には、わざと大人を怒らせて、その反応を楽しむような子もいるかもだけど。男の子は、それにカテゴリーされるかもしれない。

「ふむ。ここはわしがひとつ、大人な対応をしてやろう――右手をかせ」

 ちいさい紅葉のような手が、しっかりと私の手をにぎった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ